好きな人には最愛の人がいた 2

「ニャーン」


アールが手に擦り寄って来て、ハッと我に返る。


「……どうしたの?」


「ニャーン……」


頭を撫でてやると、ゴロゴロと喉を鳴らしながら目を細めた。


慰めてくれてるのかもしれない。


「あ、そうだ。アールにお土産があったんだ!」


不意に思い出し、沈んだ気持ちを切り替えるように無理やり笑顔を作る。鞄をゴソゴソと漁り、「あ、あったあった」と呟いて紙袋を取り出した。


「お土産、ですか?」


「はい!こないだ友達と猫カフェに行ったら、そこの猫ちゃんが首に可愛いリボンを付けていたんです。店員さんに聞いたら、そこのオリジナルのリボンで……」


紙袋から中身を取り出し、アールに見せた。


「ジャーン!どお?アール。可愛いでしょ?」


振って見せると、チリン――と赤いリボンの中央に付いている鈴が鳴った。


それを見たアールは目をらんらんと輝かせ、そのリボンにじゃれようとする。


「こらこら。おもちゃじゃないわよ。ここに……ホラ、可愛い♡」


カチッ……と首にそのリボンを着ける。


アールには少し違和感があるのか、最初は首を振ったりしていたけどそれも数分で、その内何事もなかったかの様に毛繕いをし始めた。


「うん、大丈夫そうだね!アール、よく似合ってるよ!」


「ありがとうございます」


三毛さんが頭を下げる。


「あ、いえいえ!私こそ勝手に……ご迷惑じゃありませんか?」


何も考えずにアールに似合うなって買って来ちゃったけど、よくよく考えたら出過ぎた真似だったかも……。


「とんでもない。アールも嬉しそうですよ」


三毛さんがアールを指差す。


アールは自分の姿を窓ガラスに映し、尻尾をパタパタと振っている。


「……それなら良かった」


私はアール本人が気にっているなら、とホッと胸を撫で下ろした。


太陽の光が、お店の中を照らす。


写真立てがキラキラ光って、目の端に映る。


痛む心に気付かない振りをして、残りのミルクティーを飲み干した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る