好きな人には最愛の人がいた 1
三毛さんには、最愛の人がいた。
私なんか入り込む事なんて出来ない、そんな隙間なんて
その人は三毛さんの後ろで今も微笑んでいる。しかしそれは、キラキラと光るビーズや色とりどりのガラスが散りばめられている写真立ての中で。
写真立ての前には、三毛さんとお揃いの指輪とコップに入った可愛いお花が飾られていた。
『
交通事故だった、と、以前三毛さんが話してくれた。
切れた茶葉を買いに行っている途中での、痛ましい事故。信号無視の車が歩道に突っ込んで来て、それに巻き込まれてしまった。病院に運ばれた時すでに息は無く、即死だったらしい。
8年の月日が流れても、三毛さんは「昨日の事のようだ」と力無く笑っていた。
そんな三毛さんを見て、泣いた。
『もう、恋はしないんですか?』
と、尋ねた事がある。
すると三毛さんは、誇らし気にこう答えた。
『恋?してますよ、奥さんに。だから、もうしなくて良いんです』
――と。
その時に、『あぁ、私はまた失恋したのか……』と悟った。
でも、半年かけて膨れ上がった私の恋心はもう自分でもどうする事も出来なくて。
距離を置いて諦めようともしたんだけど、無理だった。(会いた過ぎて情けないけど体調不良になった)
だから、『別に今のままでもいい』と無理やり心に折り合いを付けた。
本当は三毛さんに新しい恋をしてもらいたいけど、それは私の我がままだから口にはしない。
それに、そんな事を言って困らせたりしたい訳じゃない。
(だから、今のままで良いんだ……)
新しく淹れてもらったチーズケーキによく合うミルクティーを、スプーンでかき混ぜながらクルクル回る水面をボーっと眺めていた。
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