差し伸べられた温かさ 1
「あの……お風呂と服、ありがとうございました……」
「いえいえ。温まりましたか?」
「はい……」
お店に着いてすぐ、お風呂場に連れて行かれた。
変な事されたらどうしよう、とちょっと不安になったけど、なんかもうどうでも良くて、寒かったし言われるがままにお風呂に入らせてもらった。
それに、このおじさんはそんな事をしないだろう、と言う変な確信があった。
なんでかは分からないけど。
服も下着もびしょびしょだったから、乾燥にかけて貰っている間、シャツとズボンを借りて着た。
「こちらへどうぞ」
おじさんは4席ほどあるカウンターの一つの椅子を引いて手招きをしてくれた。
「あ、はい……」
カタン……と腰を下ろすと、フワッと甘い香りが鼻をついた。
「ミルクティーはお好きですか?」
「は、はい」
「それは良かった」
私の返事に満足した様で、丸眼鏡の奥で目を細めて笑った。
キッチンに戻って行くおじさんを目で追う。
さっきはよくよく見てなかったから分からなかったけど、おじさんは凄く整った顔立ちをしていた。
腰まである長い髪を後ろで一つに縛り、金縁の丸眼鏡をかけている。背がスラッと高く、白いシャツと細身のジーンズがよく似合っていた。
手際よく紅茶を淹れる所作をボーッと眺めていると、不意に目が合い、慌てて俯いた。
「……どうぞ」
目の前に、ミルクティーが淹ったカップが置かれる。
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