出逢い 5
「大丈夫ですか?」
「……………」
声を掛けられたけど、まったく面識のない人に私は警戒心MAXで固まった。
「ニャーン……」
しかし子猫は、おじさんの腕の中で嬉しそうに目を細めている。
「はいはい。キミも大丈夫ですか?」
子猫の言葉が分かるかの様に、「うん、うん」と頷くおじさん。
「こんなに濡れてしまっては、体が冷えてしまいますよ」
ニコッと笑って、私にハンカチを差し出してくれた。
「ニャーン……」
「あ…そうだね。ハンカチじゃどうしようもないね……猫さんもこう言ってますし、僕のお店で雨宿りして行きませんか?すぐそこで喫茶店をやっているんです」
指差された方向を見ると、木々の隙間からチラッとログハウスが見えた。
「見えますか?あそこのログハウスなんですけどね」
「……………」
私は無言で頷く。
「では、行きましょう」
「……ニャーン」
「はいはい。君も行きますよ。……どうぞ」
差し出された手を掴んで、立ち上がる。
雨で冷えているせいか、おじさんの手がとても温かい。
その体温が手から全身に広がって行く感覚。
(あたたかい……)
おじさんの傘に入れてもらい、並んで歩き出す。
パシャン……――
パシャン……――
サァァ……――
サァァ……――
雨が、小降りになっていた。
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