第290話 ニートとギャルのイチャイチャクリスマスデート ~妬みと憎しみで世界が変えられたなら~

 春日黒助が世界線を飛び越えながらヒロインたちと絆を構築し、それを丸々なかった事にしたのちベザルオール様たちと魔王城で宴を開いていた頃より少し前。

 彼の弟は一途に愛を貫いていた。


「どうもー! セルフィちゃん! お招きされに来たよー!!」

「鉄人来たしー!! 早いじゃんか! 約束は6時だったし?」


「予定が思ったよりもスムーズに済んでさー! 時間余ったら、セルフィちゃんの顔を見たくなるじゃない? ついつい早く来ちゃったー!!」

「もー! 独占欲強いオタク彼氏とかマジでうぜーし! もー! こんなヤツ、ウチが傍にしてやんねーと絶対ダメだしー!!」


 安定のニートとギャル回。

 クリスマスバージョンをお送りして参ります。


 残念ながら、何かが拗れたり、すれ違ったりする予定はございませんので、「おのれ」と呪い疲れた方はどうぞブラウザバックしてくださって結構です。

 もう皆様お気づきかと思いますが、敢えて申し上げておきます。


 ニートとギャル回が本編に関係のある話をした事はございません。

 1ミリすら関わり合いのない話しかしておりません。

 この期に及んでそのスタイルを崩す必要がどこにありましょうや。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 セルフィ宅に初めて侵入する鉄人。

 なお、この件は黒助とミアリス様のクリスマス回でほぼ同じ展開をやっているという痛恨の采配ミス。


「ようこそだしー!! ちょ、あんま見んなしー!! はずいしー!!」

「あらー! ピンク色が目に優しくない!! もうね、これぞギャルの部屋って感じ!! あー! なんかいい匂いするー!! ビニール袋持って来れば良かったー!!」


「うわー。ちょーキモいしー。てか、同じ入浴剤使ってんだから、ウチら同じ匂いだし?」

「それあるー!! 柚葉ちゃんもね、これセルフィちゃんがくれたの! って言ったら、使わせてくれるの! 入浴剤! あら! ってことは、うちの家族全員がセルフィちゃんと同じ匂いだ!! たはー!!」


 黒助からもギャルと同じ匂いがしている事になりました。

 なんだかとても複雑な気持ちになるのは何故でしょうか。


「お風呂とか見るし?」

「見る見るー!! あらー! ゼブラ柄のカーテン!! これこれぇ! ギャルの部屋って言えばこれだよねー!! シャンプーとかの容器は黒!! 分かってるぅー!!」


「もー! ガン見すんなしー!」

「あらー! 剃刀とかのケア用品が可愛い箱に纏められてるー! こういう細かいところはきちんとしてるの好感度上がるぅー!!」


「ヤメろしー。女子のデリケートなとこ見つけてくんなしー!」

「いやー! 大変結構なお風呂場でした!」


「あとで一緒に入るし!」

「これは要審議のヤツ! んー! けどなぁ! 兄貴も未美香ちゃんとお風呂入ってんだよなー!! よし! お風呂は解禁しちゃおう!!」


「やらしー! 水着で入ろうと思ってたのに、そんなこと言われたらもう無理だしー! 急に強引になる彼氏とかマジで好き過ぎんだしー!!」

「あっと! 忘れてた! セルフィちゃん! 冷蔵庫に空きスペースある?」


 風の精霊の動きは速い。

 瞬時に冷蔵庫に入っているものを左右に分け、中央に大きな空間を作り出す。


 これは「彼氏のものが入るのならば、それが目薬だろうと座薬だろうと冷蔵庫の中央を明け渡す」と言う、完全な「旦那を立てる良妻」の兆し。

 一朝一夕では身に付かない、女子の秘奥義とされている。


 なお、ギャルがこれをすることで、持ち点が35ポイントほど加算される。

 ギャップとはそれほどまでに強い。


「これ! セルフィちゃんが食べたいって言ってたケーキ! 買って来たよ!」

「え、マジだし? だってあそこ、予約販売してないからちょー並ばないとダメだって鉄人言ってたし。……えっ!?」


「いやー! 朝の8時から並んでてさー! 買えたの4時過ぎ! でも良かったよ、ちゃんと手に入って! 並び損だけは嫌だからねー、僕!!」

「マジ、そーゆうとこあんだけど!! 大好きだし!!」


 家に入ってわずか12分。

 何ならもう既に黒いシーツが存在感を放つベッドにダイブしておっぱじめそうな気配を漂わせているが、鉄人くんは「責任が取れるようになるまではそういうのはなし!」派に属しており、そういうのはなしのはずである。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「あっついしー! ちょー汗かいたしー!!」

「ねー! やっぱコルティオールは冬でも暑いから、エアコンつけててもこんなに動くと汗だくになるねー!」


「鉄人動き過ぎだしー!! マジで上下運動ガチり過ぎなんだけどー!!」

「セルフィちゃんこそ、ぎこちないけどいっぱい腰振っててよかったよ!!」


 お待ちいただきたい。

 確かに2人は薄着になっているし、セルフィちゃんに至ってはピンクのボクサーパンツにグレーのブラトップと言うギャルのバトルフォームになっているが、少しばかりお待ちいただきたい。


 テレビに繋がったswitch。

 なんかフラフープみたいな丸い輪っか。


 おわかりいただけただろうか。



「ウチ初めてやったけど、楽しいし! リングフィットアドベンチャー!!」

「でしょ! 結構これが運動になるんだよ! 夜中にやると柚葉ちゃんに引っ叩かれるんだけどね! やー! 2人でやると楽しいねー!!」


 女子に人気のリングフィットアドベンチャーでした。



 なお、男子にも人気である。

 プレイして楽しいのはもちろんだが、一時期動画配信でこちらをプレイするスタイルが流行したとかしなかったとか。


 女子が運動している姿と言うものは、何とも健全で爽やかなのにDAN DAN 心惹かれてくもので、気付けば2時間くらいボーっと見ているものらしい。

 「くっくっく。はい。確かに動画配信の女の子がやっているのを余は時々見ます。ガイルは毎日見ています。リュックたんも一時期やっていました。ガイルと2人でスパチャ投げてました。くっくっく」と、有識者の方もコメントしている。


「動いたらお腹空いたし! ご飯にするし? それともお風呂入るし? ……ウチにするし?」

「そんなのセルフィちゃん一択なんだよねー!!」


「エロ彼氏とか困るしー!!」

「たはー!!」


 諸君、落ち着いて欲しい。

 これだけは分かって頂きたい。



 私だって辛い。ここまでいつもの2倍の時間がかかっている。

 さっきからなんか泣きそう。



 その後、ニートとギャルはお風呂に入りました。

 多分ニートの背中にギャルの生乳くらい乗ったり押し付けられたりしたんでしょうけどね? 知りませんよ。


 こっちは明日も仕事なんですよ。

 ニートになれるものなら、なってるって話なんですよ。


 金さえあれば。ギャルさえいれば。もっと若ければ。

 ピッコロ大魔王の気持ちが分かる。仕事辞めてドラゴンボール集めよう。



 大変失礼しました。よく分からない思念が混線しておりました。

 復旧いたしましたので、続きをお楽しみください。



「セルフィちゃん、料理上手くなったよねー! 美味しい!!」

「まだまだだしー。柚葉姉さんに教えてもらってるけど、やっぱあのレベルには全然届かないし」


「17歳でこんなにできたら充分だよ! セルフィちゃんが頑張ってくれてるだけで、僕は嬉しいな!」

「もー! すぐ褒めてくるしー!! ウチ、厳しくされたいしー!!」


「あらー! じゃあ、ケーキは僕が独りで食べちゃおうかなー!!」

「あー! ひどいしー!! それ厳しいんじゃなくて意地悪なだけだしー!!」


「意地悪なニートは嫌いだったかな?」

「はー。うぜーし。そんなん決まってるしー。大好きだしー!!」


 この後、ケーキの食べさせあいっこをしたり、甘酸っぱい苺を食べて「イチゴ味のキスって興味あるしー」などとギャルがおもむろに発言したりしたようですが、彼らはなんやかんやあって1つのベッドでスヤスヤと眠り、特に一線を超える事なく翌朝を迎えましたとさ。



 世界は不条理に満ちている。

 幸せの量は公平に分配などされていない。


 愛の絶対数は決まっているのに、積載量が明確に決められていないため過積載で走り去って行くトラックを散見する。

 ちょっと置いていけ。全部持っていくな。

 早急な法整備と罰則者への厳罰を社会は定めるべきではないのか。


 次回。ベザルオール様とコルティ様による哀しみのリベンジクリスマス編です。


 こういうのでいいんだよ。

 こういうのがいいんだよ。

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