第261話 ニートとギャルの水着回、定期!! ~今度はナイトプールだ!!~

 12月も第2週目に突入。

 個人事業主は今年の総決算をする時分。

 当然だが、農業もそこに含まれる。


 一般的に年度締めで決算が行われるため、12月の区切りは重視しないタイプの経営スタイルが増えているものの、春日黒助は昔気質。

 23歳にして、頑固一徹昭和の経営スタイルもその身に宿している。


「……忘年会はやるとして。クリスマスか。ふむ。どうしたものかな」


 仕事を終えた黒助は帰宅しており、現在は風呂上りでピチピチのタンクトップを身に纏い、大胸筋と乳首で薄い布地を圧迫していた。

 こちら、チョイスしたのは柚葉さん。ではなく、未美香たん。


 ちょっとずつ、春日家の末っ子にも汚染の気配が忍び寄っている。


「クリスマス!! お兄! クリスマスって言った!?」

「ああ。農場でクリスマスイベントをするべきか悩んでいてな。去年は特に何もしなかったのだが。あの頃は魔王軍と戦争していたからな」


 現在もバーラトリンデ軍と戦争中です。


「やった方がいいよ!! クリスマスだよ、クリスマスっ!! 年に一度の大イベント!!」

「やはりそういうものか。しかし、未美香」


「およ? なにー?」

「俺にとっては、毎日違う顔をお前たちが見せてくれるこの日常。1日ごとが大イベントなのだが。ゆえに、特にクリスマスだからと言って特別な感情になれんのだ」


「もぉ! お兄ってば、そーゆうこと言うんだもんっ!! これはみんなに報告だよっ!! お姉がお風呂で良かったよ!! 最近、お姉はなんだかそわそわしてるんだかんねっ!! 夜中にはぁはぁ言ってるんだからっ!!」

「そうか。何か、心臓や呼吸器系の疾患ではないだろうな? 一度医者に診せるか」


 ちなみに、お風呂から上がっていた柚葉さん。

 はぁはぁ言っておられます。


「に、兄さんが!! クリスマスを意識してますけど!? こ、これは……!! 確実に何かが起きます!! とりあえず、来週にでも未美香を連れてランジェリーショップに行かなくちゃですよ!! ふんすっ、ふんすですっ!!」


 ミアリス様の中から浄化された悪い気が、どうも次なるターゲットを定めつつある。

 どうにか撃退して頂きたい。


 あれに感染すると回復まで時間がかかるので、黒助ハーレムの最終決戦に参加できない恐れがある。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 そんなクリスマスの波動とはまったく関係なく、ラブコメの覇道を行くのがこちら。


「いやー!! いいホテルだねーっ! さすが鬼窪さん! 色々知ってるなー!!」

「ちょっと緊張するしー!! なんか、すれ違うお客さんがみんな大人だし!!」


「何言ってるの!! セルフィちゃんだって大人だよ! 年齢確認されなかったし!!」

「あ、そうだし? そーいえば、そうかもだし!!」


 今日はニートとギャルの定期イベント。水着回である。

 舞台はこちら。高級リゾートホテル。

 なんと今回は鬼窪玉堂による招待企画。


 「組のもんがですのぉ。ホテルのチケットなんぞ貰うて来たんですが、誰も行きたがらんのですわ」と春日家に持参した宿泊券。

 学校のある義妹コンビが脱落したため、必然的に黒助に所有権が委ねられたが、彼は「最近少し農場の仕事に集中できていないからな」とこれをスルー。


 後日話を聞いた、ミアリス様とヴィネ姐さんが崩れ落ちたと言う。

 リュックたんは「や。私はいいっす。んなとこ黒助さんと行ったら、絶対バカになるんで」と自己診断をしていたため、むしろ安堵した。


 そうなると、愛する弟に気を遣うのが春日黒助のジャスティス。


「鉄人。行ってくるか? セルフィと一緒に」

「えっ、いいの? じゃあ、誘ってみようかな!! 喜ぶよ!!」


 そこからはウォータースライダーを流れるカップルのようにスムーズだった。

 なお、黒助もホテルの年齢確認には思い至らずにいたが、そこは忠実なる舎弟。

 農の者。鬼窪さんの出番。


 「兄ぃ。ちぃと気になる事が。セルフィ嬢ちゃん、どう見ても未成年ですけぇ」と言って、彼は黒助に懸案事項を伝えた。

 すると黒助は当然のように言う。


「それはいかんな。鬼窪。どうにかならんか」

「へい! どうにかしやす!!」


 こうして、どうにかした結果が受付のフリーパス。

 なにせ、セルフィさんは17歳。女子高生組の一員でもある。


 普通に受付で捕まる。何なら鉄人が通報される。


 そこを強引に突破するのが鬼窪玉堂。

 全盛期の日向小次郎くらいの突破力で、強引にねじ伏せる。


「おおおー! すごいし!! なんか大人な感じだし!!」

「だねー。さて! 泳ぎに行こうか!!」


「鉄人、そーゆうとこあるしー!! もー。欲望に忠実だしー。困るしー。水着買ってもらったから、彼女としては着るしかないしー。やだしー。エロいしー」

「あらー! そんなこと言いながら、とっくに着替えてるセルフィちゃん!! 素直ギャルとかもうご褒美しかないんだよねー!!」


 今日は白いビキニのセルフィちゃん。

 くっくっく。金髪ギャルに白いビキニは非常に良く似合う。さすがは現世の賢者よ。くっくっく。との事である。


 今日は地の文にダイレクト参加。

 さすがでございます。ベザルオール様。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ホテルに併設されているナイトプールへ出陣するニートとギャル。

 高級リゾートホテルだけあって、その設備も豪華絢爛。


 怪しげなオレンジや緑の証明に照らされて、各種ドリンクは飲み放題。

 プールはもちろん、サウナにジャグジー、マッサージ施設やフィットネス施設まであり、水着着用であればどこも男女混合のスペースとなっている。


「おー! 見て、鉄人! なんかおっきいソファあるし!!」

「それはデイベッドってヤツだねー!」


「へぇー? それってなんだし?」

「んー。ベッドとソファのキメラみたいなヤツ!! どっちでも使えますよってのが売りらしいよ。まあ、カップルでイチャコラするのにもってこいなヤツだよ!!」


 デイベッドに関して正しい知識を身に付けられたい方はこの回が終わった瞬間に記憶を消して、ウィキペディアにジャンプなさるのが良いかと思われます。


「あー! やらしいヤツだしー!!」


 ウィキペディアで正しい情報を手に入れてください。


「やらしいヤツだね!!」

「じゃあ、ウチは特別に寝そべってあげるし!!」


「あらー!! 写真撮りたい!! スマホ持って来れば良かった!!」

「おりょ? 持って来てないし? 鉄人が珍しいし」


「だって、水着の女の子も多く利用してる場所だからさ。スマホ持ってウロウロしてたらちょっと迷惑でしょ? それに」

「それに? なんだし?」


「セルフィちゃんも嫌じゃない? 僕がスマホ持って、他の女の子が薄着で歩いてる場所にいるの。自分の彼女が嫌な思いする可能性があったらさ、主義主張なんて捨てられないと嘘だと思うんだよねー」


 セルフィちゃん、スイッチオン。


「ちょ、イケメン過ぎだし!! 鉄人、そーゆうとこあるしー!! なんなん!! マジで!! ウチをこれ以上落としても、もう落ちるとこねーし!! とりあえず、抱きついとくし!!」

「あらー!! これは大変素晴らしいヤツー!! あらー!!」



 デイベッドで絡み合うのも結構な迷惑行為なのだが、言うのは無粋だろうか。



 それから、2時間ほどナイトプールを堪能した2人。

 ちょっと疲れたと彼女が言えば、気を利かせてすぐに部屋へと戻るのが正しい彼氏の所作。


 何故ならば、ナイトプールは所詮前座。

 本番はお部屋に戻ってからなのである。


 それでは、皆様。息を合わせてお願いします。


 おのれ、ニートめ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 翌日。

 夕方に春日家へと戻って来た2人は、お茶を飲んでからセルフィさんがコルティオールへと帰還。


 再び鉄人はお茶を飲む。


「ねーねー。鉄人ー。ナイトプールってどんなとこだった?」

「んー。未美香ちゃんは割と合うかもだね! 今度兄貴に頼んで連れてってもらうと良いよ!!」


「ほえ? あたしにはまだ早い! とか言わないの?」

「言わない、言わない! そうやってさ、若い子に、お前はまだー!! とか言ってマウント取るのって良くないよね。時代の変化には柔軟にならないと! まあ、同世代で行くってなれば話は別だけどさ。兄貴と一緒なら、全然問題ないよー」


「そっかー! 鉄人のそーゆうとこ、あたしあんまり嫌いじゃないよ!!」

「あらー!! 未美香ちゃんもデレてくるー!! 最近、義妹がデレてくるぅー!!」


 キッチンに立っていた柚葉さんは、カレーを煮込んでいる。

 ちなみに「ニートはごはんですよだけで充分ですね」と判断されたため、夕飯が質素になる鉄人くんであった。


 未美香たんが「仕方ないからあたしの分けてあげよっか?」と優しい手を差し伸べたため、トータルで見れば余裕のプラスだったとか。

 おのれ。

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