家の倉庫が転移装置になったので、女神と四大精霊に農業を仕込んで異世界に大農場を作ろうと思う ~史上最強の農家はメンタルも最強。魔王なんか知らん~
第258話 ルビーのヨシコ! 司るのは「おかん感」!! ~ノワールの「わたくし、やっぱり本調子じゃありませんわね。またリセマラいたしますわ」
第258話 ルビーのヨシコ! 司るのは「おかん感」!! ~ノワールの「わたくし、やっぱり本調子じゃありませんわね。またリセマラいたしますわ」
コルティオールとバーラトリンデの間にある宇宙空間では。
揺蕩うエネルギー生命体。ノワールが状況を見つめていた。
「さすがですね。コルティオール。隕石程度では滅びませんか。まあ、滅びてもらっては私の生息環境まで失われますので、そこは問題なのですけれど。それにしても、ヨシコはなかなかに使えますね。コルティから多くの負のエネルギーを回収できましたよ。あっはっは! この調子で、あの子には大いに戦局を乱してもらいましょう!!」
ご満悦な様子のノワールさん。
だが、この世界では悪意に対して正当なジャッジが下される。
彼女の身に暗躍しただけの不幸が襲い掛かるのはほんの少し先の未来の出来事。
◆◇◆◇◆◇◆◇
バーラトリンデ。
岩山にある館では。
「コルティ様! たった今、春日鉄人様から連絡が来たでゲス! 隕石、5つ全てを無事に迎撃、破壊できたとの由にございますでゲス!!」
「そ、そうですか! 良かった……!! か、勘違いしないでくださいね。コルティオールを亡ぼすのは私の仕事。惑星兵器などと言う無粋なものには横取りさせません!!」
コルティ様、どうにか悪役ムーブをキメるが、隠しきれない善人がこんにちは。
「ゲス! 件の『
「そうですか。あのような大量殺戮兵器を捨て置いた私にこそ全ての責任はあります。どうかしていました。ポンモニ。コルティオールの皆様に謝罪をしておいてください。勝手が過ぎますが、それでも頭を下げる必要があります」
ポンモニは「ゲス、ゲス!!」と返事をして、スマホを操作する。
彼の体はアルマジロだが、手は精密作業をするためにカスタマイズされている。
さすがは鉱石生命体。
「ところで、ヨシコはどこに行ったのですか? もしかして! 責任感を覚えて、自ら命を絶ちましたか!?」
「コルティ!! 準備できたよ!!」
夢ならばどれほどよかったでしょう。
「……ヨシコ? あなたは何を持っているのですか?」
「しゃもじだよ!!」
「なぜしゃもじを?」
「お母さんと言えば、しゃもじでしょうが!! あんたぁ! 何考えてるんだい!!」
「すみません。ちょっと意味が分からないのですが」
「あたしゃ! ルビーのヨシコ!! この身に冠するのは『おかん感』だよ!!」
「ポンモニ。私、しばらくお休みを頂いても良いですか? ちょっと何と言うか、自分の事が分からなくなりつつあります。カウンセリング受けて来ますので」
「お待ちくださいでゲス! アタシがお傍で支えますでゲス!! コルティ様!! まずはゆっくりと玉座に腰をおかけくださいでゲス!!」
コルティ様のメンタルがギリギリまで追いつめられているご様子。
ちなみに、ヨシコはその間に炊飯器を抱えて来た。
「コルティ! あんた、これ食べて元気出しな!!」
「こ、これは? ヨシコが作ったのですか?」
「お母さんって言いな! バカな子だね!!」
「いえ、私があなたの母なのですが? そこを逆転させようとします!? 無理ですよ! あなた、まだ生後3時間ですからね!? どんな気持ちで今、私の母を自称しているのですか!? ちょっと厚かましくありませんか!?」
「コルティ! 炊き込みご飯だよ!! 食べな!!」
「ヨシコ? あなたの中身、Twitterのbotではありませんよね? こんなに会話が噛み合わないってあります? それ、意図してやってたら匠の技ですよ?」
ヨシコが炊飯器を開けると、ホカホカの炊き込みご飯がそこにはあった。
具は野菜が中心であり、キノコをメインに鶏肉も入っているタイプ。
これならば、育ち盛りの高校生男子も部活終わりにニッコニコになるヤツである。
「コルティ様。ご飯に罪はないでゲス。ここは、まず炊き込みご飯を召し上がられるのが良いかと思うでゲス」
「そ、そうですか? ポンモニ。あなたが言うと無条件で正解! と思いたくなりますが、そこを逆手に取らないでくださいね? 急にサムライの格好して越後製菓! とか言い出したら、私はもうどうして良いのか分からなくなりますよ?」
精神が極めて不安定なコルティ様の前に、大盛りの炊き込みご飯が出された。
思えば、ヨシコを産み出してから隕石騒動終結までの間、食事も取らずに頑張ったコルティ様。
ちょっとだけお腹が空いていた。
「では、頂きます」
「アタシも頂くでゲス!!」
黙ってモグモグと咀嚼する2人。
「これは……。なかなかでゲス……」
「ポンモニ」
コルティ様は立ち上がった。
立ち上がらずにはいられなかった。
続けて叫んだ。
「まっずいんですけども!? おかしいでしょう!! ここは美味しいって言って! ちょっとだけ私とヨシコの溝が埋まるシーンじゃないですか!? どうして普通に不味いんですか!? 完全にメシマズのおかんじゃないですか!! そんなニッチな方のお母さん連れて来ますか!? 言動は肝っ玉母さんのそれなのに!! 具に芯が残ってますし! ご飯ベチャベチャですし!! もうコンビニで何か買ってきますよ!!」
ヨシコさん。外れおかんだった模様。
ポンモニは「うむむ」と唸りながら、完食した。
「コルティ様、ご報告でゲス」
「え。ああ、はい。なんですか」
「アタシが察するにでゲス。水分の多い具材がそこそこ入っているため、多分炊飯の際に水の量をミスったのだと考えられるでゲス。また、料理下手がやりがちなミスとして、ご飯を炊く前に具材をガッツリ混ぜたのではないかと思われるでゲス。炊き込みご飯でやっちゃダメな事の第一位がこれでゲス。しかし、気持ちは分かるでゲス。何となく、混ぜておいた方が均一に炊ける気がしてしまうのでゲス。ヨシコの美味しいご飯を作りたい気持ちが少しばかり空回りしてしまったでゲスよ。でも、アタシはこの炊き込みご飯、嫌いじゃないでゲスよ!!」
「ものっすごい長文で普通にアドバイスしてる!! しかも優しい!! ポンモニぃ! あなたぁ! どこまでも情け深いのはおヤメなさい!! ……ヨシコ?」
ヨシコは小刻みに震えていた。
それもそうである。
彼女にとって、これは生まれて初めて作ったご飯。
ゆえに失敗したのだが、初めてのご飯が不評だったことは彼女の心を傷つけたのかもしれない。
「よ、ヨシコ。私も言い過ぎました。その、気を落とさないでください。あなたの作るご飯はこれから美味しくなるだけなのですから。つ、次のご飯を楽しみにしていますよ!!」
「コルティ……!!」
「黙って食べな!! 誰があんたのために作ったと思ってんだい!! 仕方のない子だよ! 口ばっかり動かして! いつまで待っても孫の顔すら見せやしない!!」
「なんですか!? 私、心ばかりのフォローをしたのに!! お母さんって書いてクソババアのパターンじゃないですか!! いい加減にしてください! 分解しますよ!!」
こうして、バーラトリンデ軍に新しい戦力が加わったのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ノワールさんの哀しみパート。ご準備ができました。
「ふふふっ、あっはっは!! 順調ではありませんこと!? これならば、わたくしの肉体もすぐに顕現することでしょう!! ほら、また大きくなりまし……しゃもじ」
現在、ノワールさんの再生中の肉体には巨大な甲羅が付いている。
そこに生えて来た右腕にはしゃもじが生えていた。
「えっ、わたくしの肉体、ヨシコにも浸食されていますの!? ま、まあ! しゃもじなんて捨ててしまえば……!! 手に持ってるんじゃありませんわね? これ、よく見たら腕そのものがしゃもじですわね? ……はぁぁ!! 肩には炊飯器が!? そんな! 昔のヒップホップアーティストじゃありませんのよ!? だとしても、百歩譲ってラジカセでしょう! 炊飯器!? ……わたくし、リセマラいたします。しばらく命拾いしますわね、コルティオールとバーラトリンデよ。あーっははは!! ……そう言えば、リセットしたのに今回も甲羅付いてますわね?」
悪いことをすると、何かしらの因果応報が待っている。
ノワールと世界の真理の戦いはこれからも続く。
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