第256話 隕石破壊任務! 各地で光る一撃必殺!! ~ヒロイン枠は柚葉さんとリュックたん~

 隕石さん。

 現在、やる気を燃え盛らせながらコルティオールの地表を目指していた。


 こちらの惑星兵器。

 結構なサイズ感が売りであり、コルティオールの結界を通過する際に威力が弱まる事も織り込み済みで発射されている。


 既に三重になっている結界を突破済みでかなり魔力は弱くなったものの、それなりの勢いと威力を未だに維持。

 兵器と名が付くくらいなので、着弾すると魔力を放出する事で周囲に衝撃波を起こして爆散するというギミックも搭載している。


 初手で使われていたら、多分コルティオールは滅んでいただろう。

 これは、コルティ様の中の正の感情が頑張ってくれた事に感謝するしかない。


 情報を共有したコルティオール軍は役割分担を確認し、各々が担当する地域へと散っている最中であった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 こちらは春日鉄人&春日柚葉チーム。

 魔王城から近い地点を請け負っていた。


「柚葉ちゃん。危ないから魔王城にいなってば」

「うるさいですね。隕石の処理を失敗したら、どうせコルティオールごと消えるってベザルオールさんに聞きました。だったら、うちのごくつぶしが失敗しないか見張るのが私の役目です!!」


「あらー! これ、好きの裏返しのヤツじゃない!? 困るー!! セルフィちゃんに怒られちゃう!!」

「ぶっ飛ばしますよ!? 鉄人さんを好きになるくらいなら、私は薄い本の住人になりますから!! まったく、勘違いも甚だしいですよ! このニート!!」



◆◇◆◇◆◇◆◇



 こちらは最初に着弾する予定地のペコペコ大陸迎撃チーム。

 春日黒助とリュックたんが現場へ直行していた。


「いいんすか? 黒助さん。私を運んでくれるのは助かるっすけど」

「当然だ。お前は飛べんだろう。うちの末っ子に、飛べんだろうがペコペコ大陸まで行ってこいなどと言えるか。俺はリュックの仕事を見届けてから現場へ向かう」


「やべぇ。すっげぇ嬉しい。……けど!! 超汗かいてる状態でのお姫様抱っこはキツイ!! 難易度高すぎんだろ!! 鉱石生命体なのに発汗とか排尿の機能つけがった女将! 許さねぇ!!」

「リュック。そうは言うがな。やはり汗を流して働く女子は魅力的だぞ?」



「女将!! あんたやっぱ自慢の女将だわ!! そーゆとこよ!! なんか演歌のCD欲しがってるって聞いたから! あとで西川貴教のCD山ほど送るわ!! ありがとう女将!!」

「む。そろそろ見えて来たな。迎撃できるか? リュック」



 リュックたん。

 恥ずかしいのを我慢して、体にぴったりフィットする戦闘服に着替えて来ていた。


 この状態ならば、彼女は自分の力をフル解放できる。


「うす! やるっす!! しゃあっ!! 『翠玉遠距離射撃形態エメラルドロングレンジ』!!」

「ほう。二の腕から発射口が出るのか。なるほど。だからノースリーブなのか」


「や。あの。黒助さん。あんま見ねぇでもらえます? しゅ、集中できないんで!!」

「背中からは羽が出るのか。天使みたいだな。触っても構わんか?」


 背中の羽も人工物。

 衝撃吸収。体幹維持。エネルギー増幅などの機能を担っている。



「ぜってぇヤメてください!! 私、おかしくなって多分射撃ミスるんでぇ!!」

「そうか。分かった。残念だがまたの機会にしよう」



 リュックたん。精神を集中させて、いざ斉射。

 美しいエメラルドグリーンの光線が、直線の軌道を描いて隕石に直撃した。


「うりゃ!! おわっ!? すっげぇ近くで黒助さんに見られとる!! くっそ!! さっさと壊さねぇと! 私のメンタルがもたねぇぞ、これぇ!! りゃぁぁぁぁい!!」

「見事だな。欠片も残さずに粉砕するとは。よし。では俺は自分の現場に行く。帰り道にまた拾うから、しっかり汗を拭いておけよ。風邪を引くといかん」


 そう言うと、黒助は肉体解放30パーセントで空を駆けて行った。

 取り残されたリュックたんは安堵の息を漏らす。


「ヤバかったぁ!! これ使うと、羽が消えて背中ぱっくり開くんだわ!! 太もも見せんのは慣れてっけど! 背中は無理ぃ! 自分じゃ見えねぇもん!! ふぃー!! あぶねぇ!!」


 まず、コルティオール軍が初陣を飾る。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「えー? でもさぁ。やっぱり、行為に及ぶまでの過程も大事じゃない?」

「はぁ。これだからニートは。あのですね。そういうのを求めてる人もいますよ? けど、必要なのは実用性でしょう? イチャイチャは事後でいいんです! 読みたい人が読むので!! 冒頭に入れたら、読みたくない人にも強制することになるじゃないですか!!」


 こちら、春日兄妹。

 ギリギリで何の話をしているのかぼかす高度なテクニックを披露しているところ。


「あ。ごめんね、柚葉ちゃん。そろそろ」

「ちょっと! まだ話は終わってませんけど!!」


「いや。でもさ。隕石落とさないと!」

「それってお話の後じゃダメなんですか!?」



 ダメである。コルティオールが消えてなくなる。



「よいしょー!! 魔の邪神直伝!! 水の禁術!! 『螺旋状の隕石穴掘り水流ドリルアップアルマゲドン』!!」

「……早く済ませてください。本当に、仕事が遅いんですから」


 ニートには辛辣な柚葉さん。

 割とスムーズに仕事をキメた鉄人に対して、プラス査定はない様子。


「あっ! まずい!! 破片が!! これ、破片が落ちても大惨事のヤツ!! よいしょー!! 『粘着質の伸びる手ネバネババンジーハンド』!!」

「……ぐぬぬっ。ネバネバした手ですか。それは割とアリですね。ぐぬぬっ」


 順当に2つ目を破壊。

 では、安定のガチ強者をどうぞ。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 こちら、魔王城よりもさらに北。

 昔のRPGだと地図に表示されない、北端地点。


「くっくっく。余のコルティオールに無粋な真似をするとは、愚かなり。全知全能、この地を統べる大魔王。余がベザルオールである」


 隕石が静かに迫りくる。

 そんな中、ベザルオール様はおっしゃった。


「くっくっく。……なんで余はソロ活動なん? いや、柚葉たんやリュックたんは望まぬよ? けどさ、せめてアルゴムにはついて来てほしかった。寒いし。寂しいし。心細いし。何なん? しかもこれ、隕石撃墜しても誰もリアクションくれないヤツ。くっくっく。ぴえん過ぎてぱおん」


 ベザルオール様はクイックルワイパーに魔力を集約させ始める。

 巨大な槍のような形質に変化した魔力の切っ先をより鋭利なものへと研ぎ澄ませながら、ベザルオール様は照準を合わせられる。


「くっくっく。愚かなり。……これ、さっきも言った。でも誰も指摘してくれない。くっくっく。無粋なり。……あれ、これも言った? とにかく、そのような石の塊で余の愛する世界を砕けるなどと思うてくれるな。くっくっく。誰か、声援くらい送って欲しい。くっくっく。『大魔王の槍ベザル・ジャベリン』。……くっくっく。誰も見てないから、創作魔法の名前も適当ワロス」


 ベザルオール様の放たれたワロスは、隕石の中心にジャストミート。

 そのまま真っ二つにされると、槍自体を破裂させ、破片に取りつかせたのちに爆発させる。


 実に無駄のない魔法で、隕石を無事に処理された。


「くっくっく。卿ら。さては読み飛ばしておるな。リュックたんから柚葉たんの流れ。それに満足して、斜め読みした挙句読み飛ばしておるな。確かに、余はそもそも含み笑いがセリフの一部であるため、1度の発言が長くなりがちである。が、待って欲しい。もしかすると、重要な伏線を口にしておるかもしれぬ。のちにそれが出て来た時に、なんやこれ。とならぬよう、余の発言にも注意するのが正しいこの世界の楽しみ方ではないのか。くっくっく。まあ、全然重要な事を喋ってはおらのだがな。くっくっく。ときに卿ら。夏アニメ見てる? 余は見てる。特におすすめは何と言っ」


 ベザルオール様。お疲れさまでした。


 残る隕石は2つ。

 迎撃担当者は1人。


 数が足りないが、どうするのかコルティオール軍。

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