第255話 昼下がりの緊急事態! 隕石接近中! コルティオールは対応検討中!!

 コルティオール。

 とある山脈。魔王城では。


「ベザルオール様。どうですか? 今回のネーム。まだ詳しい内容決めてないですけど」

「くっくっく。悪くない。が、鉄人よ。キャラデザの時点で感じておった事を言っても良かろうか」


「もちろんですよ!」

「くっくっく。今回のヤツさ。黒助と柚葉たんに似せ過ぎじゃない? 黒太と柚希とか、名前も寄り過ぎじゃない?」


「それですかー。僕もね、言ったんですよ? 企画の発案者に。でも、聞いてもらえます? あの子ね、実名でいきましょう!! ってずっと言ってて。どうにか名前のパーツ1か所ゲットできたのがさっきなんです。湯婆婆でも多分諦めてますよ。……あたしにゃ手が負えないね。その名前、大事におし。とか言って、冒頭で善玉化します」


「あの! ベザルオールさん!! ここの展開どうにかなりませんか!? 出会って2秒でキスまで持って行きたいです!! ベザルオールさんならできますよね!?」


 春日柚葉さん。

 自分と兄をカップルにした薄い本を作らせるために、同人サークル『大魔王』に参加していた。



「くっくっく。柚葉たんが。余の知っている柚葉たんじゃなくなりつつあってぴえん。そんなのってないよ。余の作った書物は悪だったのか」

「とんでもありません!! ベザルオールさん、自信もってください!! 鉄人さんの脚本はクソですけど! ベザルオールさんの担当した脚本はすごく良いです!!」



 ベザルオール様は孫娘の中でお姉さんポジの柚葉さんに「おじいちゃんの作った薄い本、すっごく良いです!!」と食い気味に言われて、戸惑っておられます。

 「くっくっく。これなら小遣い寄越せ、じじい。とか言われた方が良い」と、ベザルオール様は目を伏せておられます。


 そんな謁見の間に、アルゴムが駆け込んできた。


「ベザルオール様!! 静謐なお時間を妨げる事、お許しくださいませ!!」

「くっくっく。良い。アルゴム。何なら助かったまである。ごめんけどさ、ドリンクバーでコーヒー淹れてくれる? 濃くて苦いヤツ」


「ベザルオール様! そのような場合ではございません!!」

「くっくっく。忠臣にコーヒーくれと言ったら怒られた件」


 鉄人もラインのメッセージを見て事態を把握。


「これ、本当なんですか? アルゴムさん。いえ、ポンモニさんが嘘をつくとも思えないんですが。いくらなんでも、急すぎません? これまでは宇宙要塞とかで攻め込んで来てたのに。いきなり隕石落とします? 癇癪起こしたジオン軍残党の発想じゃないですか」

「悲しいですが、鉄人様。真実です。現に、こちらに向かい隕石が5つ。速度は遅いですが、着実に近づいております」


「くっくっく。余を除け者にして若い子たちで盛り上がってるの哀しみ。柚葉たんがいなかったら泣いてる」

「あの。私詳しくないんですけど、隕石って降って来るものなんですか? でも、それってアルゴムさんたちの、なんでしたっけ?」


「多分だけど、結界かな?」

「くっ……。ニートは良いですよね! そうやって! 兄さんと世界観を共有する時間ありますもんね!! 私だって……。ぐぬぬっ。大学辞めますよ!?」


「くっくっく。柚葉たん? あれ? ライングループ入ってるん? 余が知らないヤツ」

「ベザルオール様! そのような悠長に構えておられる場合ではございませんぞ!! コルティオールの危機でございます!!」


「くっくっく。その危機について誰も教えてくれない件」


 3人が説明した。

 ポンモニの参加しているグループラインで先ほどメッセージが共有され、「コルティオールに向かって惑星兵器が放たれてしまったでゲス」と言う文章ののちに、土下座をするアルマジロのスタンプが押されたと。



「くっくっく。……マ?」

「マジでございます。スピードに差がございまして、さらに予測着弾地点が離れております。その点は、確実な被害をこちらに与えるための兵器として高評価かと!!」



 ベザルオール様はすぐに情報の精査に入られた。

 謁見の間に表示された地図に、予想着弾地点と着弾時間が表示される。


 時間はほぼ5分刻みであり、着弾地点同士はそれぞれ近くても70キロ。

 遠方であれば150キロほど離れており、1人が迎撃しても次弾の襲来に耐えられないように設計されていた。


「それにしても。ポンモニさんのスタンプって自作なんですよね? 可愛いです!!」

「あらー。待ってよ、柚葉ちゃん! 僕たちのサークルだってスタンプ作ってるよ?」


「どうせ大したものじゃないくせに。……ちょ、待ってください!! なんですか! これ!! 兄さんじゃないですか!!」

「気付いちゃった? そうなの! 兄貴のスタンプ作っちゃったの!! おすすめはね、こちら! 聞くが。って言ってるこれ! ちなみにボイスも付くよ!!」



「言い値で買います。くっ……。これがニートのやり方!! 汚い!! なんて狡猾!!」

「くっくっく。春日家のメンタル、改めてヤバ過ぎで草。隕石よりラインスタンプの話しとるで、この子ら。下手したらみんな死ぬんやで?」



 ひとまず、この凶事はすぐに春日大農場とも共有された。

 最初の着弾はこれより27分後。


 ペコペコ大陸の中央が爆心地となる予定である。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 こちらは春日大農場。


「マジで!? ヤバいじゃん!! アルゴム! それってさ、誰くらいの攻撃力があれば破壊できるの!? うちの従業員で教えてくれる!?」

「ミアリス様ぁー。イルノは黒助さんたちを呼んでくるですぅー」


 モルシモシの緊急通信を受けていたミアリス様。

 すっかり頼れるナンバー2の立ち位置を奪還した彼女は、端的な情報収集に当たっていた。


『推測でしか申し上げられないのですが。ハッキリ言って、四大精霊の皆様や、魔王軍の幹部クラスでは2人や3人束になっても怪しいかと存じます』

「ええ……。ってことは、うちだと黒助とリュックとゴンツくらいかしら? 対応できるの。あっ! メゾルバは!? あれ、一応神って付くわよ!!」


『ミアリス様……。あれは神の中でも、結構最初に出て来た神ですので……。輝石三神の方々のように、最新バージョンの神と並べるのはいささか……』

「あ。そうなんだ。じゃあもう、あいつただのリアクション要員じゃない。いらないわね。オッケー。分かったわ。とりあえず、うちからはさっきの3人を派遣すー?」


 そこで駆け込んでくるヴィネ姐さん。

 彼女はまだコルティオールを襲う凶事について知らないのだが、ずいぶんと慌てていた。


「ミアリス!! あ、すまないね。通信中かい!?」

「ううん。平気。どうしたの?」


「ゴンツがうっかり、煮えてるジャムの鍋に落ちたんだけど!! これ、労災きく!?」

「なにしんてのよぉぉぉぉ!! ゴンツぅ!! ダメじゃない! 今から仕事頼むとこなのに!! じゃ、ジャムの中にダイブしたの!?」


「本人は平気って言ってんだけどね。2週間くらいしたら動けるようになるって!」

「時間かかり過ぎィィィ!!! あ、アルゴム!! まずいんだけど!?」


『……………』

「ちょっとぉ! 黙らないでよ!! 不安が募るぅ!!」


『ミアリス様。こちら、魔王城には鉄人様が滞在しておられまして。ベザルオール様と鉄人様ならば、迎撃は可能かと思われますが。……ゴンツ様。ダメそうですか?』

「あ。その聞き方。まずいヤツね? だって、わたしの計算でも1人足りないもん。嘘でしょ? どうするの?」


 アルゴムは「着弾地点と各人の移動速度を加味して、これから計算いたします」と言って、一度通話を切った。

 そのタイミングで黒助とリュックが母屋に戻って来る。


「ミアリス。イルノから事情は聞いたが、意味が分からん。隕石とは、そんな簡単に降って来るものなのか?」

「うん。わたしもサッパリ分かんない。でも、とりあえず降って来るんだって」



「そうか」

「ねー。困るわよねー」



 空を見上げる2人。

 遠くを見ると、燃え盛る隕石がひこうき雲を携えて降下中であった。


 この距離だと、作品によっては既にアウトな場合がある。


 ガンダムシリーズだと恐らく手遅れ。コロニーぶっ壊れて山ほど人が死ぬ。

 ワンパンマンあたりならば、まだ間に合う。ただし破片で街が消し飛ぶ。


 どっちのパータンなのかは、誰にも分からない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る