家の倉庫が転移装置になったので、女神と四大精霊に農業を仕込んで異世界に大農場を作ろうと思う ~史上最強の農家はメンタルも最強。魔王なんか知らん~
第220話 「戦争中? 聞くが、それとイチゴの苗の定植は関係あるのか?」 ~コルティオールは農業の歩みを止めない!!~
第220話 「戦争中? 聞くが、それとイチゴの苗の定植は関係あるのか?」 ~コルティオールは農業の歩みを止めない!!~
宇宙要塞・ラブラブベザルがペコペコ大陸の沿岸部に着岸してから1週間。
念のため警戒は続けている、春日大農場と魔王城。
だが、動きは見られない。
これは輝石三神の最強格であるエメラルドのリュックさんの心が未だにへし折れている事が原因なのだが、それを知る由もないコルティオール側は「何か大規模作戦の準備だろうか」とやや疑心暗鬼になり、不気味な沈黙を守るバーラトリンデに対する警戒は日増しに高まっていた。
ただ、それはそれ。
春日黒助は農家である。
農家は農業をしなければお金が稼げない。
コルティオールを守るために戦争をするのもやぶさかではないが、黒助には柚葉の大学の授業料や、未美香のテニス用品を常に最高の状態に整えておくための維持費。
さらには鉄人の有益なニート活動のためのお小遣いなどが必要であり、お金はいくら稼いでも稼ぎ過ぎと言うものはないのが現状。
コルティオールで農業を始めてからは以前よりも格段に収入が安定したものの、従業員たちの衣食住の世話や、幹部職員たちの給料などをそこから支払うと、月収換算すれば意外に額が少ない。
農業は大規模展開して、薄利多売で収益を出すのが最適解の1つとされている。
つまり、歩みを止める余裕などないのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
軽トラでコルティオールにやって来た黒助と鉄人。
本日は、岡本さんから「お友達価格」で融通してもらったイチゴの苗の定植が行われる。
「黒助! おはよ! もう朝礼の準備できてるわよ!!」
「ああ。おはよう、ミアリス。さすが、手回しが良いな。頼りになる」
「ちょ、シンプルなヤツ来ちゃってるぅぅぅぅぅ!! もうそのさり気ない一言がね! 一周回ってハートにドキュンよ!! ああああー!! もうバカになりそう!!」
現世でリフレッシュして少しだけ活力を取り戻したイルノさんが仕事をする。
「ミアリス様ぁー。まさか、まだ自分がバカになってないと思ってたですぅー? いくらなんでも厚かましいですぅー。黒助さん、トマト班とサツマイモ班が今日はイチゴの作業に加わることになってるですぅー。イチゴ班の班長は誰にするですぅー?」
ミアリス様は定期的にダメになるので、最近はイルノが農場の運営に携わっている。
仕事がデキる女子なイルノさん。
黒助はその働きを大いに評価して、先月から彼女の給料を2割ほどアップさせており、実はミアリスの給料を超えている事実。
それにミアリスも薄々感づいているが、「まあ、イルノは黒助ハーレムのメンバーじゃないから!!」と言う謎の理屈で全てを受け止めている。
「ああ。既にみんなが班長をしているからな。無役なのはセルフィくらいしかいない。鉄人。お前から言ってやってくれるか」
「オッケー! セルフィちゃーん!!」
彼氏が呼ぶと風の速さで駆け付けるのが風の精霊・ニートにハマったギャル。
失礼、風の精霊・セルフィ。
「なんだしー?」
「兄貴がさ、セルフィちゃんにイチゴ班のリーダーを任せたいんだって!」
「うぇぇ? ウチにできるかな……。みんなに比べてウチ、農業に詳しくないし」
「大丈夫! 僕も手伝うから!! それにね、兄貴がさ! いずれ農家に嫁ぐのならば、やはり農作業のいろはを学んでいてくれると助かる……って!!」
弟の嫁として既にセルフィを認めている黒助。
この無頼漢も日々成長しており、乙女心に何が響くかを少しずつ学んでいた。
「に、義兄さん……!! ウチの将来について、そんなに真剣に考えてくれてたし!?」
「ああ。鉄人は無限の可能性を秘めているから、農業に携わらないかもしれんがな。農家は繁忙期になると、どうしても家族間で助け合う必要が出て来る。セルフィも、鉄人の嫁になるのならば、そこは堪えてくれると助かるのだが」
「よゆーだし!! ウチ、農業は嫌いじゃないし!! と言うか、義兄さんのお手伝いできないで何が嫁って感じだし!! 任せて欲しいし!!」
なお、セルフィが黒助の事を「義兄さん」と呼び出して既に数ヶ月が経っている。
まったく訂正を求めない義兄(仮)の事が、鉄人の次に好きなセルフィさん。
「良し。話は決まったな。朝礼の後からすぐに作業だ。鉄人に監督は任せるから、セルフィ。しっかりと頑張ってくれ」
「義兄さんはどこ行くし? あーね。敵をぶち殺しに行くし?」
「いや。今は忙しいからそんな事をしている余裕はない。魔王農場の方にも苗を持っていかねばならん。それに加えて、あっちはイチゴを育てるいろはが分からん。俺が監督する必要があるだろう。ゲルゲとヴィネを連れて行く」
久しぶりに仕事を与えられた火の精霊・ゴンゴルゲルゲさん。
だが、セリフは諸事情によりカットさせて頂く。
一度喋り始めると長くなるタイプは前半で出番をゲットしていないとこうなる事が多い。
「お前たち。おはよう。体調の悪い者はいないか。仕事も重要だが、一番大切にするべきなのは自分の体だ。家族や恋人、友人に心配をかけさせる事ほど愚かな事はない。無理はしてくれるな。お前たちが1人でも欠けると俺も心配になる。少しでも具合が悪くなれば、申し出るように。……では、今日の伝達事項を伝える。まずは——」
朝礼を終えた黒助は、軽トラの荷台から飛竜の背中にイチゴの苗を乗せ換えて、すぐに魔王城へと向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
魔王農場には日陰が多いため、事前にビニールハウスの建築が指示されていた。
大魔王ベザルオール様が先頭に立ち、主にガーゴイルとオークの手を借りて7棟ほど造り終えており、準備は万端。
「じいさん。おはよう。体調は悪くないか」
「くっくっく。黒助よ。おはよう。卿の心遣いにはいつも痛み入る。今朝はご飯をおかわりした余である。隙はない。佃煮が美味しかった」
「そうか。では、じいさんをリーダーにしてイチゴの定植を始めるぞ。アルゴムは頭の悪い名前の要塞の監視で忙しいらしいからな。ガイルはジャガイモとトマトを兼務させている。じいさん、頑張りどころだぞ」
「くっくっく。今日も1日がんばるぞい。……あと、要塞の名前をディスられるとなんだか心がモヤッとするゆえ、そっとしておいてほしい。余の名前が付いてるの、あれ」
「そうか。よし。お前たち、まずは畝の横に苗を並べろ! 慎重にな!!」
「くっくっく。まったく興味がなくて草。だが、それで良い。今はイチゴの生育に余の全知全能を注ぐ時。敵星の侵略など知らぬ」
「ふふっ。じいさん。いい面構えになって来たな。あんたはもう立派な農家だ。胸を張れ」
「くっくっく。卿にそう言われるとモチベーションアップ確定である。余の衰えを知らぬフィジカルもご覧に入れよう。くっくっく」
それから作業は滞りなく進み、コルティオールでまた新しい作物が育てられる事になるのであった。
本土に上陸されているのに敵をガチのマジで無視する男たち。
だが、思えば昔からこうだった気がするので、問題ないのである。
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