家の倉庫が転移装置になったので、女神と四大精霊に農業を仕込んで異世界に大農場を作ろうと思う ~史上最強の農家はメンタルも最強。魔王なんか知らん~
第182話 春日鉄人(ニート)、デートのあとでなんかデスゲームに巻き込まれる
第182話 春日鉄人(ニート)、デートのあとでなんかデスゲームに巻き込まれる
カラオケにやって来たニートとギャル。
もはや、人物名を出さずとも伝わってしまうところが恐ろしい。
「はぁー! 鉄人、歌うまっ! なんなん? 何でもできるし!」
「いやいや、そんなことないよ! 暇なときに部屋でひとりカラオケしてるからかな? ほら、うちの周りって家がないからさ! ちょっとくらいうるさくしても平気なの! 柚葉ちゃんにお玉で引っ叩かれることがあるけど!」
「次、次はね! 白日でしょー、115万キロのフィルムに、高嶺の花子さん! あと、打上花火デュエットしたいし!! 歌えるし?」
「ニートを舐めちゃダメだよ! 全部原曲キーでいけちゃう! よーし! ドリンクバーで白湯作って来よう! ぬるいくらいの水が喉に良いんだってさ!」
その後、イチャイチャカラオケを8時間コースで堪能した2人であった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
外に出ると、午後5時前。
「シンデレラが帰るにはまだ早いねー!」と言って、とりあえずお茶でもしようと歩き始めた鉄人とセルフィ。
そこに通りかかる黒塗りの高級車。
窓が開くと、サングラスと顔の傷が特徴でスーツの上に野菜をあしらったエプロンを装備した男が声をかけてきた。
「鉄の坊ちゃん! お疲れ様です!!」
「鬼窪さん! こんにちは!」
「おお、セルフィのお嬢も! さてはデートですかいのぉ? いやー、2人はお熱いようで! ワシゃうらやましゅうて仕方がないですけぇ!」
「鬼窪、そんな大きい声でデートとか言うなし! もー! しょうがないから、もう3回くらい言ってもいいし!!」
鬼窪玉堂は介護施設の野菜備蓄量の確認に、市内を巡回していたと言う。
「ちゃんと目ぇで見んと、どこで手抜かりがあるか分かりませんけぇのぉ!」と歯を見せる鬼窪は「よろしけりゃあ、目的地までお送りしますけぇ! 乗ってくださいや!」と2人に気を遣う。
鉄人は「せっかくだからお願いしようか?」とセルフィに尋ねた。
このギャルが鉄人の提案を断るシチュエーションを知りたい。
「いやー! 相変わらず、座り心地の良いシート! 軽トラも良いんですけどねー! やっぱり鬼窪さんの車は別格!!」
「へへっ! 恐縮でさぁ! おっと、すんません! 舎弟からの電話ですわ。ちぃとだけ、よろしいですか?」
鉄人は「もちろん! どうぞ!」と応じる。
スピーカーにして通話を始めた鬼窪。
『若頭ぁ!! カチコミです!! うちの組員が5人さらわれました!!』
「なんじゃと!? どこのボケじゃあ、相手は!!」
『それが、もっさり組とか言うところでして! 最近時岡市に事務所構えた新参者どもです!!』
「……なんか聞いたことがあるのぉ?」
春日鉄人は記憶力も常人を凌駕する。
「一度会った人の情報は忘れない。ニートの鉄則ですよ」とは、彼の言葉。
「それってアレじゃないですか? ほら、コルティオールで邪神とか言って兄貴にぶっ飛ばされた。太った人のいた新興宗教!」
「あーね。なんかいたし。そんなヤツ」
茂佐山安善が教祖を務めていた新興宗教団体『もっさり教』は教祖不在期間に姿を変え、反社会勢力『もっさり組』として新たな看板を掲げていた。
そのもっさり組が、時岡市を拠点にしている刃振組に抗争を仕掛けてきたと言う。
「ほいで? 場所は? うちの者が捕まっちょる! スマホに場所送ってくれぇ!! ワシが直々に話しつけて来るけぇ!!」
『へ、へい! お願いしやす!!』
「おう! おどれらはワシの代わりに、施設の巡回じゃあ! 明日はプリンの日じゃけぇ! じいちゃんとばあちゃんが楽しみにしちょるプリンをしっかり確認せぇよ!! ちぃと多めに保管しちょいて余ったら職員に食わせるんじゃあ!!」
電話を終えた鬼窪は申し訳なさそうにして、鉄人に言った。
「すんません。聞いての通りですけぇ。ワシ、ちぃと野暮用が」
「僕も行きましょうか!」
「ええ!? 鉄の坊ちゃんがですかい!?」
「鬼窪さんも兄貴の従業員ですから。兄貴だったら絶対に協力すると思うんですよね。だから、僕が代行ってことで!」
「坊ちゃん……! すんません! 恩に着ます!! お嬢も、彼氏さんお借りしてしもうて……!! デートのお邪魔、すんません!!」
「彼氏のやりたいことを見守るのが彼女の仕事だし! 全然よゆーなんだけど!!」
それから、鬼窪は指定された廃倉庫へと車を走らせた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
『これからお前たちには、ゲームをしてもらおう』
コピペミスだろうか。
違う。諸君、落ち着いて欲しい。
倉庫に入ったところ、刃振組の組員が拘束されており3人でそれを助ける。
すると、全ての出入り口が施錠され、覆面をした男がプロジェクターに投影された。
続けて、その男が言ったのが前述のセリフである。
世界観を考えろ。
「なんじゃあ! ボケェ!! そがいな事しに来たんとちゃうぞ、こっちは!! 頭は早う出てこんかい!!」
『ひぇっ。……え? 台本通りに? ああ、はい。おー。こわっ。……これからお前たちにやってもらうのは、追放ゲームだ。ルールは簡単。この中で1人だけ選べ。選ばれた者には、うちの組で働いてもらう。反社のノウハウが知りたい。残った者は帰って構わない。帰りに、よく冷えた飲み物とサランラップがお土産として用意されている。ちなみに、1時間以内に決められない場合は、表にある高そうな車のタイヤを全てパンクさせる。はっはっは。精々悩むが良い!!』
鉄人がまず「なるほど」と唸った後に、口に出した。
「相手の人、絶対にライアーゲーム読んでますね!」
確かに、もっさり組の幹部たちはライアーゲームを愛読していた。
さすがはニート界の禁書目録を名乗る春日鉄人。
漫画の造詣の深さならば誰にも負けない。
「でも、どうするし? このままだと、鬼窪の車がパンクするし」
「ふざけちょるのぉ! タイヤ、先月換えたばっかりやっちゅうのに!!」
鉄人は顎を引いてそこに手を添え、そっと呟く。
「安心しろ。このゲームには必勝法がある。ちなみに、今のは松田翔太くんのマネです」
「すごい! 似てるし!!」
ヤメなさいよ。どうして近頃は誰も彼もがギリギリを攻め始めるのか。
「ひ、必勝法!? どがいな事をするっちゅうんですかい!? 鉄の坊ちゃんの事じゃけぇ、ワシなんぞにゃ考えつかん妙案なんじゃろうなぁ!!」
「思い出してみてください。ゲームマスターは言った。タイヤをパンクさせると。つまり、彼らはこの倉庫の近くにいると言う事です。そこで、僕は魔法を使います。魔の邪神直伝!! 『
松田翔太くんはそんなこと言わない。
その後、もっさり組は鬼窪玉堂1人によって幹部がボコボコにされ、そのまま刃振組に吸収される事となった。
結果的にまっとうな組織に入れた事で、もっさり組に渋々参加した元信者たちも職場環境の改善に笑顔だったと言う。
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