家の倉庫が転移装置になったので、女神と四大精霊に農業を仕込んで異世界に大農場を作ろうと思う ~史上最強の農家はメンタルも最強。魔王なんか知らん~
第181話 黒助ハーレムに最後の加入者、現る? ~ロリっ子、動く~
第181話 黒助ハーレムに最後の加入者、現る? ~ロリっ子、動く~
その日はコルティオールに柚葉と未美香も遊びに来ており、母屋では女子が集まってお茶会が催されていた。
なお、風の精霊・セルフィは彼氏と一緒にカラオケに行ったため、欠席。
もはや彼女はただのギャルである。
「それでですね! 兄さんったら、違法駐輪してあった原付バイクを片手で掴んで! 点字ブロックの上を綺麗にして歩いたんです! とってもステキでした!!」
「あー。黒助ならやりそうね。こっちではね、イノシシ型のモンスターをやっぱり片手で捕まえて、今日はぼたん鍋だ! とか言ってサッと料理してくれたの! 黒助って何でもできるわよねー!!」
今日も今日とて、春日黒助のカッコいいところ談義に花が咲く。
もう黒助をバラバラにして、右足とか左腕とかのパーツに分けてみんなで分ければ良いのにと思わずにはいられないモテっぷりである。
だが、彼女たちは知らなかった。
黒助ハーレムを一撃で粉砕する破壊力を持った無邪気な最後のシ者がすぐ傍にいる事を。
「ねーねー! みんなさ、クロちゃんのこと好きだよねー!!」
ウリネさん、珍しく恋バナに混ざる。
彼女はだいたい買い置きされているお菓子を食べると、縁側でお昼寝をするかゲームに興じるかで、特に恋愛からみの催しには見向きもしなかった。
だが、それは昨日までのウリネさんである。
「セルフィがねー! 言ってたの! 大人の女は好きな男の1人くらいいるもんだしーって!! だからねー! ボクもクロちゃんの事、好きになろっかなー!!」
乙女たちに激震走る。
事の深刻さをまず理解したのは、ミアリスと柚葉だった。
ウリネは「農業に関する面での貢献度がずば抜けて高い」と言う最強のアピールポイントを持っている。
それだけではなく、彼女には羞恥心がない。
それは言い換えると、「どんなアプローチでも軽くこなしてしまう、恋愛モンスターの素質を秘めている」と言う事実。
「ウリネさんもお兄のお嫁さんになりたいんだ? あはっ! じゃあ、あたしたち仲間だねっ!」
「ミミっちとお揃い! それ、すっごく嬉しいなー!!」
ここでヴィネ姐さんも気づく。
これまでは無邪気にアプローチを仕掛ける者が未美香だけであったため、さほど警戒をしていなかった。
もちろん大いなる脅威ではあるのだが、彼女以外の乙女たちもそれぞれ別のベクトルの攻め手を持っていたため、そこまで深刻に考える必要がなかったのだ。
だが、ここで未美香とウリネのチーム無邪気が結成される。
これはもう、大変に凄まじい脅威である。
無邪気とは言い換えると「何をしても許される」免罪符であり、例えばいきなり唇に唇を重ねても「えへへー」とはにかむことで「まったく、仕方のないヤツだな」と黒助が許してしまうところまでのシミュレーションが、恋愛強者3人の脳中で爆ぜた。
その頃、イルノさんは。
「また面倒な事を話してるですぅー。イルノは近づかないですぅー」と、君子危うきに近寄らずを徹底していた
◆◇◆◇◆◇◆◇
黒助はメロン畑にいた。
そろそろ収穫時であり、それぞれの畝の生育状態を慎重に見極める作業に従事している。
今日の随行者は火の精霊・ゴンゴルゲルゲと鬼人将軍・ギリー。
ゴンゴルゲルゲが言った。
「やはりウリネの力は素晴らしいですな、黒助様! わずか2週間でこのように立派なメロンが!! 戦争が終わってしまえば、ウリネ以外の四大精霊は役目を終えておりますからなぁ」
「ゲルゲ。お前も他の四大精霊も、日々農業に精を出しているではないか。それが今のお前たちの生きる意味。違うか? その存在は稀有だと俺は思うが」
黒助さん、ゴンゴルゲルゲルートの攻略も完了させる。
続けて、雑草を抜いていたギリーも会話に参加する。
「しかし、旦那。ウリネ嬢ちゃんと結婚すれば、農業分野において苦労する事はなくなりますぜ! はははっ!」
「確かにな。そういう意味では、ウリネは農家の嫁として理想なのかもしれん」
この時、善人で大半の者から好かれているギリーが、一時的にとは言えコルティオールにいる乙女たちの大多数に嫌われたと言う。
原因は分からない。分かる人にだけ伝われば良い。
その後も汗を流しながら、メロンたちのコンディションチェックに余念のない黒助であった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
そうこうしていると日が暮れる時分になり、事業主たちも母屋に引き上げてくる。
未美香が大好きなご主人の姿を発見した柴犬のように駆け出す。
これはいつもの光景である。
「お兄! お疲れさまー!! はい、女子高生によるご苦労様のハグ! ギューッと!!」
「はっはっは。未美香は相変わらず、甘えん坊だな。まったく困ったものだ」
その時、ウリネの姿が母屋から消えていた。
ミアリスが、柚葉が、ヴィネが、彼女の姿を探す。
「クロちゃん、クロちゃん! ボクもお疲れ様ってしたいなー!!」
「そうか。どうした、ウリネ。出迎えてくれるとは珍しいじゃないか」
「ボクねー! クロちゃんのお嫁さんを目指すことにしたんだー!!」
「そうか。それは楽しみだな」
「そうでしょー? ミミっちと一緒にねー! クロちゃんのお嫁さんするのー!!」
「これは参ったな。一夫多妻制の国に引っ越さなければならなくなる」
と、ここでギリーが鋭い角度から切り込んだ。
「旦那! だったらコルティオールに住めばいいじゃないっすか! ここは別に、何人嫁さんがいても咎められることはないですから! うちの親戚は嫁さん3人ももらってますよ!」
「ほう。それはずいぶんと甲斐性のある御仁だな。ひとつ、俺も目指してみるとするか」
「わーい! クロちゃん頑張れー!!」
「あははっ! そだそだ、お兄、頑張れー!!」
「やれやれ。お前たちの顔を見ていたら疲れも吹き飛ぶな。そうだ、試食用にメロンを採って来たのだった。イルノに頼んで冷やしてもらってから、みんなで食べるか」
ウリネは目を輝かせながら「食べるー!!」と元気よく返事をした。
まだまだウリネさんは色気よりも食い気のようであり、訳の分からない問題に苦しんでいた乙女たちもこれで心が軽くなっただろう。
そう思ってしまうのは、まだまだ恋心を理解していない証拠である。
彼女たちは、既に未来的思考なシミュレーションを起動させていた。
「一夫多妻制。そういうのもあるのか」と、完全なシンクロを見せる。
昼過ぎからその残念な恋愛乙女たちを見守っていたイルノさんは、メロンを冷やしながらため息をついた。
「仮に黒助さんがコルティオールに住んで、一夫多妻制を採用したら……。イルノはストレスで多分死んでしまうですぅー」と。
その後、メロンを食べる一同は全員すべからく笑顔だったと言う。
今日もコルティオールは平和であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます