家の倉庫が転移装置になったので、女神と四大精霊に農業を仕込んで異世界に大農場を作ろうと思う ~史上最強の農家はメンタルも最強。魔王なんか知らん~
第179話 水の精霊・イルノさん、スイーツバイキングで愛するトマトと運命的な再会を果たす
第179話 水の精霊・イルノさん、スイーツバイキングで愛するトマトと運命的な再会を果たす
この日は春日大農場で休暇を取る幹部が多く出た。
ミアリスとイルノ、それからヴィネも事前に休みを申請しており、黒助によって承認されている。
「ミアリス様、そろそろお出かけするですぅー」
「待って! 下着が決まらないの!!」
「今日は黒助さん、農場に居残りですぅー。勝負する機会はないと思うですぅー」
「だ、ダメよ! 案内してくれるのが柚葉なのよ!? 未来の義妹になるかもしれないんだから、ちゃんと勝負下着で行かなくっちゃ!!」
「ちょっと何言ってるか分からないですぅー」
そこにやって来たのは本来ミアリスが勝負を仕掛けるべき対象であった。
彼は扉をノックして、イルノが「どうぞですぅー」と返事をした。
「イルノもいたのか。ミアリス、聞くが。肥料の発注書を知らんか? ブロッサムに聞いたところ、ミアリスが持っていると言う話だったのだが」
なお、ミアリス様は現在、下着姿です。
「ほ、ほぁ、ほぎゃぁぁぁぁぁっ!! ちょ、なんでいきなり開けてるのよぉ!? ちゃんとノックしてよぉ!!」
「いや、したが。何なら、イルノが返事もしてくれたが」
「ちょ、これはちが、違うの!!」
「なんだかやたらとヒラヒラした下着だな。いいんじゃないか? ミアリスによく似合っているし、可愛いと思うぞ。トマトみたいな色も良しだ」
「ほあぁぁぁぁぁぁぁっ!! ぐ、ぐぅぅぅ……。これ、発注書、です……げふっ」
「ああ。……完璧に記入されているな。さすがだ。では、バイキングを楽しんで来ると良い。イルノは久しぶりの現世だろう。柚葉にしっかり面倒見てやるように言っておいたからな。安心して行くと良い。ではな」
「はいぃ。ありがとうございますぅー」
立ち去って行った黒助の背中を見送ったミアリスは、とりあえずイルノに頭を下げた。
そののち、深い感謝の言葉を口にする。
「わたしの方こそ、本当にありがとうござました。イルノ……いえ、イルノさん」
「ミアリス様が幸せならそれでオッケーですぅ。お腹が空いたので、早く行きたいですぅー」
その後、ヴィネと合流した3人は転移装置をくぐりぬけた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
柚葉とは、時岡大学の前で合流する事になっている。
そこまでは鉄人の運転する車で移動。
軽トラでは座席が足りないため、鬼窪に黒塗りの高級車を借りているニート。
ハンドルが左についていようが臆する事のないメンタルについては、既に語り尽くされているので触れるまでもないだろう。
時岡大学前に到着し、黒塗りの車が学生たちの注目を浴びまくっていたところに柚葉がやって来た。
当然だが、注目度がさらに増す。
「わぁ! 皆さん、ようこそです! もうお店の予約、済んでますから! ここから歩いてすぐなんですよ! 行きましょう!」
「柚葉ちゃん、僕がこのまま送って行ってもいいけど?」
「鉄人さん。あなたはそんな事だから、いつまで経っても社会性が身に付かないんですよ。女子大生がそんな車に乗る訳ないじゃないですか。早く帰ってください」
「ひょー! 辛辣ぅー!! じゃあ、僕は高級車でその辺をドライブしとくから、ミアリスさんたちが帰る時には連絡くださいねー! アデュー!!」
鉄人は実に自然な流れで走り去っていった。
その様子を見ていた男子学生が「春日さんにまたとんでもない男の影が!!」と戦慄し、妙な噂が流れる事になるのだが、それはまた別の話。
結果的に鉄人のご飯がしばらくモッコリ草のみになるのだが、それもまた別の話。
◆◇◆◇◆◇◆◇
到着した洋菓子店では黒助が果物を出荷している事もあり、柚葉と未美香は常連客として店主および店員に顔を覚えられている。
「いらっしゃいませ! 春日さん! お待ちしていました!」
「こんにちはー。今日はお友達を連れて来ちゃいました! みんなお腹空かせているので、ケーキを食べ尽くしちゃうかもですよ? ふふっ」
この笑顔に店主がやられないのは、彼女が妙齢のご婦人であるからに他ならない。
テーブルに案内される4人は、早速思い思いのスイーツを注文する。
が、ここでイルノに電流走る。
「と、とと、トマトのスイーツがあるですぅー!!」
「ホントね。しかも、結構あるじゃない。ええと? トマトのシフォンケーキに、トマトのヨーグルトタルト。わっ、これ綺麗ねー。トマトと苺のジュレだって」
「ほわぁぁぁ! トマトちゃんがいっぱいですぅー!!」
「イルノさん、知っていますか? ここのトマト、兄さんが納品しているんですよ! つまり、コルティオールの大農場から直送されているわけで……!」
「ま、まさか……!! イルノの作ったトマトちゃんが使われているですぅー!?」
「そう言えば、最近フルーツトマトも作り始めてたね。あたいもコンポートとかに加工してるよ。良かったじゃないか、イルノ」
「ヴィ、ヴィネさん! 写真撮ってくださいですぅー! 今度鉄人さんに頼んで、イルノのトマト畑ブログに載せてもらうですぅー!! ヴィネさん、早く、早くですぅー!!」
「ちょ、落ち着きなよ! あだっ、い、イルノ! さっきからあんたの手が、あたいの胸に当たって……!! ちょ、ま、待って、揺れ、いたっ!!」
「ヴィネさんのおっぱいなんてどうでもいいですぅー」
「いや、イルノ。ヴィネのおっぱいが縦横無尽に暴れてるから、できればヤメたげて? もう多分、ブラのホック外れてるから。えらいことになってるわよ」
それから、興奮冷めやらぬイルノはトマトのスイーツを全て制覇して見せた。
最近は瞳から光が消えることの多かった水の精霊が、水を得た魚のようになった瞬間でもあった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
後日。
春日大農場では。
「ゲルゲ。今日はトマト畑のヘルプに入ってやってくれ。リザードマンたちが実家に帰省しているから、人手が足りんらしい」
「承知仕りましてございます! このゴンゴルゲルゲにお任せ下され!!」
既にオチが見えているようである。
トマト畑に行くと、そこには既に力の邪神と無色の亀の亡骸が転がっていた。
ゴンゴルゲルゲは全てを察した。
察した時点で手遅れであることもついでに察した。
「ゲルゲさん! 靴の清潔感、良しですぅー。ツナギの汚れ、良しですぅー。爪の長さ、良しですぅー。……さすがゲルゲさんですぅー。邪神や亀とは大違いですぅー」
「ぐ、ぐーっはは! ワシはトマト畑での作業に慣れておるからな! 手抜かりなどない!!」
「……あ。ゲルゲさん、帽子かぶってないですぅー。……よく見ると、頭に細かいフケが」
「えっ?」
「てめぇの罪を数えろですぅー!! 『ホーリースプラッシュ・ジャッジメント』!!」
「ぐわぁぁあぁぁぁぁっ!! もう予想はついておったが、ぐわぁぁあぁぁぁぁっ!!!」
今日もコルティオールは平和であった。
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