第173話 続(俗)・お風呂回! と、大魔王とニートの街歩き!

 願いが通じたのか、黒助の気まぐれか。

 「よく考えると、タオルを巻いているから背中は洗えんな」と言った黒助は、先に湯に浸かる事にした。


 柚葉と未美香は同時に「しまった!!」と思い、好機を逃した事実を悔やんだ。


 彼女たちは3年ぶりの兄との入浴に際し、「どこまでが兄のセーフティーゾーンなのか」と言うラインを見極められずにいたのだ。

 一般的な男性は「ある程度の恥じらいのある女子を好む」と、共同購入している女性誌にて学んでいる義妹たち。


 だが、果たして自分の愛する兄は一般的な男性なのかと言う疑問が湧いてきた。

 その考えは実に正しい。


 敢えて苦言を呈しておくことにしよう。

 3年前と言えば、柚葉は16歳。未美香は14歳。



 当時20歳の黒助は、既に色々とアウトのラインを超える大ジャンプを見せていた。



 女子高生と女子中学生と一緒に風呂に入る農家。

 しかも、彼らは兄妹だが血のつながりはない。


 ベザルオール様の呟きが聞こえてくるようである。

 「くっくっく。それ、なんてエロゲ?」と。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 とりあえず自分たちで体を洗った義妹コンビは、強行策に打って出た。

 バスタオルを取り払ったのである。


 一糸まとわぬ姿になった2人は、躊躇なく黒助の両サイドに着地した。


「ああ。来たか、2人とも。なかなか良い湯加減だぞ」


 全裸の妹たちをしっかりと確認してなお、お湯の品質について感想を述べる男。

 もしかすると、彼には欲望がないのかもしれない。


「兄さん、兄さん! 見てもいいんですよ!」

「そだよー! いっぱい綺麗にしてるから、むしろ見てくれた方が嬉しいかも!!」


「はっはっは。2人とも、昔とまったく変わっていないな。ふむ。すっかりと胸が大きくなって、体は立派になったものだ」



 そんな「ずいぶん背が伸びましたね」みたいなトーンで、義妹のおっぱいについて語るな。



「ちょっと! お兄ってば!! 女子高生のおっぱい見て感想はそれだけ!?」


 アキラちゃんによる「女子高生ブランド」を未だに妄信している未美香さん。

 なお、そのブランドを今押し出してこられると、既に色々とギリギリなので非常に困る。


「そうだな……。鉄人が言っていたが、高校生の平均サイズはBからCだそうだ。その点を踏まえると、未美香は自慢しても良い立派なものを持っているのではないか?」

「へへー! お兄に褒められたー!! テニス部でも2番目に大きいんだよ!! ちなみに1番はアキラちゃん!!」


 一方、柚葉さんはと言えば。


「あのニー……。鉄人さん、なんて事を兄さんに吹き込んでいるんですか。これは、当分の間ご飯のおかわり禁止ですね」


 柚葉は自分だって全裸で兄を誘惑している事を棚に上げて、愚兄が愛する義兄に必要のない知識を授けたことの怒りで、その豊かな胸を震わせていた。


「柚葉もしばらく見ないうちに女性らしい体つきになったな」

「へっ!? そ、そうですか!?」


「ああ。高校生の頃など、口には出さなかったがな。正直、少し痩せ過ぎているのではないかと心配していた。今は程よく健康的な肉付きになって、見ていて安心する」

「あ、あぅぅっ。その、兄さんってむっちり系が好みだったんですね……? 急に恥ずかしくなってきました……」


 柚葉さんは攻めている時はグイグイ行くが、逆に攻められると途端に防御力が薄くなる。

 絶対フリーキックするGKマン・チラベルトがPKを外した後だろうか。


「そうだな。好みと言うか、やはり健康的な方が良いと思うぞ。例えば、ミアリスは実にバランスの取れた体をしている。あれは農家向きだ」


「むーっ! ミアリスさんめー!! あたしはまだ成長期だから、平気だもん!!」

「そういえば、ミアリスさんってムチっとしてますね。今度、じっくり裸を見せてもらう事にします」


 こうして、ギリギリを攻め切ったお風呂パートは終了する。

 何も起こらなくて本当に良かった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その頃、コルティオールでは。


「へくちっ! あ、ごめん」

「ミアリス様、どしたん? 風邪だし?」


「んー。なんでかしら。確かに、急に背筋が冷えたのよね……」

「毎晩遅くまで下着のカタログを見てるからですぅー。もう何十枚買ったか分からないですぅー。母屋の衣装部屋の3割がミアリス様の勝負下着ですぅー」


「ミアリス様、どんだけ勝負する気だし。超肉食系だし」

「ち、ちがっ! あれは、ほら! 黒助の好みがまだ分からないから!! とりうえず全種類、全色取り揃えておかないとじゃない! いざって時に困るもの!!」


 イルノとセルフィは「はぁ」とため息をついた。

 そろそろコルティオールも日暮れ時である。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 大魔王とニートのコンビはどうなったのかと言えば。


「くっくっく。よもや、温泉街に射的屋があるとは。年甲斐もなくはしゃいでしまった。くっくっく」

「やー! 確かに、超レアですよ! 僕も初めてです!!」


 そう言いながら、2人は山ほど景品を抱えていた。

 コルティオールでは大魔王と大魔法使いであるこの2人に、射撃をガチでやらせるとこうなる。


「お客さん、もう勘弁してくださいよ……。何なんですか。あなた方はどこかの特殊部隊に所属しているスナイパーですか? うちを潰す気なんですね?」


「くっくっく。これは店主。不安にさせてすまない。余は充分に楽しませてもらったゆえ、景品の大半は返却しよう。だが、このポケモンのぬいぐるみは貰っておこう」


 そう言って、国民的電気ネズミの大きなぬいぐるみを手にしたベザルオール様は、近くで彼らのスナイピングを眺めていた小学生女児の前に向かった。

 続けて、彼女の背の高さに合わせてしゃがみ込み、ぬいぐるみを差し出す。


「くっくっく。お嬢ちゃん。良ければこれを受け取ってくれぬか。余は荷物を入れる袋を持っていないゆえ、こやつを連れ帰る事が叶わぬ」

「えっ……。いいの? おじいちゃん」


「くっくっく。構わぬ。余は全知全能の大魔王。ならば、小さき者の応援に対する礼をせねばならぬ。ぶっちゃけ、小さい女の子にはしゃいでもらえてマンモスうれぴー。これはおじいちゃんからのプレゼントである」


 少女は顔をほころばせて、「ありがと! おじいちゃん!!」とお礼を言うと、射的に悪戦苦闘している父親の元へ駆けて行った。

 それに気付いた少女の父は「これはすみません! よろしいのですか?」と丁寧に頭を下げた。

 ベザルオール様はニヤリと笑う。


「くっくっく。良い。余は多くの罪を犯してきた。ゆえに、のちの生涯を賭けて多くの者を笑顔にすることを命題として、己に課しておる。くっくっく。実に利発そうで可愛い娘さんですね」


 射的屋を後にした大魔王とニート。

 鉄人がスマホをベザルオールに見せた。


「ベザルオール様の雄姿、バッチリ撮っておきましたよ! 帰ったら、ガイルさんとかアルゴムさんに見せてあげましょうね!」

「くっくっく。思い出のアルバム捲れるとか熱盛。卿の心配りに感謝する」


 それから彼らはラブコメの波動を探ったところ、「くっくっく。これはお風呂回が終わったな」「そうですね! そろそろ戻っても良さそうですよ!」と判断した空気の読める2人。

 彼らはゆるりと旅館に向かって歩き出した。






◆◇◆◇◆◇◆◇



【唐突な作者からのお知らせコーナー!!】


拙作をお楽しみ頂いている読者様。

ごきげんよう。作者でございます。


こちら、拙作にはまったく関係のないただの宣伝ですので、「てめぇ勝手に出てきてんじゃねぇよ!!」とご不快に思われた方は速やかにブラウザバックをお願いいたします。

そののち、私の事は嫌いになっても良いので、拙作の事は嫌いにならないでください。


本日より、第4回ドラゴンノベルスコンテストが始まりまして、私も参戦しております。

拙作、既にアフターストーリーに入ってからもそれなりに時間が経ちまして、実はそろそろ完結の時が近づいているのです。

そこで「奥さん! 代わりにいいヤツがあるよ!!」とゲスな宣伝を企んだ次第でございます。


新連載は異世界転生ものでして、27歳の営業マンが女の子に囲まれてキャッキャウフフしながら成り上がってくと言う、ありがちなストーリーとなっております。

ただ、拙作にここまでお付き合いくださっている方ならばお察しかと思いますが、相変わらず珍味にパクチーのせたみたいに癖のあるものに仕上がりました。


私はパクチーが苦手なので自信を持ってお勧めするのは憚られるのですが、「とりあえず食ってみるぜ!!」と言うグルメハンターな読者様は是非ともご賞味ください。

毎日更新して参りますので、暇つぶしのお役にくらいは立てるかと思います。


拙作は前述の通り、そろそろ完結する予定でございますが、こちらも最後もまできっちりと毎日更新でゴールテープに向かい爆走して参ります。

残り短い間ですが、拙作をどうぞよろしくお願いいたします。


こちら、新作の第1話でございます。

『キノコ男、フルスロットル! ~敏腕営業マンが異世界転生したら、ポンコツ乙女たちと平和な世界征服を目指すことになった~』

1話 https://kakuyomu.jp/works/16817139554620072763/episodes/16817139554620228533


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