?×15=$せ

 君は目をつむらない。


 賢明だよ。そう、それでいい。正解だ。


 君は正しい道を進んでいる、これまでのところは。


 君はディスプレイを見つめ続ける。


 アルファベットの“n”が出現する。


 “n”には下線が引かれている。点線のものだ。


 “君n”の次はなにか。“な”、“に”、“ぬ”、“ね”、“の”の五文字のどれかだろう、と君は予想する。


 正解は“の”だった。


 次に出現したのは“k”だった。


 何者かがディスプレイに文字を打ち込んでいるようだ。ゆっくりと。じらすように。いや、君をいたぶるように。


 カタという音がして、小文字の“k”がひらがなの“き”に変わる。


 トンという音もせず、“き”の下の点線も消えない。“き”の隣に“m”が現れた。


 すぐに“m”は“も”に変わる。“も”の隣に“t”が加わる。“t”は“ち”になる。


 “きもち”は“気持ち”と変換され、点線だった下線が太い直線に変わる。トンという音とともに下線が消える。


 画面には「君の気持ち」の五文字。


 次に出現したのは“w”。すぐさま“w”は“を”に変わる。


 次々と文字が表示されていく。こんな一文ができた。


 君の気持ちはこうじゃないか


 最後に“?”が出現し、下線が消えた。


 トンという音はENTERキーを叩くものを現しているのだと君は気付く。


 次の瞬間、「君の気持ちはこうじゃないか?」の“か”の箇所が“?”に置き換わった。文章の末尾から、疑問符が侵食を始める。“い”が食われ、“な”が食われる。


 最後に“君”までも“?”に飲み込まれて、画面には十四個の疑問符が並んだ。


 いや、違う。いつのまにか一番後ろの記号が変わっていた。一見、疑問符に見えるが違う。曲線部分を残し、下の点が消えていた。


 さぁ、どうする?


 君が決めるのだ。


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