第37話 俺の一番大切な宝物


 横浜からの帰りの電車で妹は俺に寄りかかりずっと寝ていた。

 肩から伝わる妹の体温、やはりとても熱く俺はなぜもっと早くに気が付かなかったんだと後悔する。

 

 座れて帰れたのがせめてもの救いだった。

 

 座ったままで地元の駅に着くち妹を起こし電車から降りる。

 家までもうすぐ、俺は栞に向かって「もうちょっとだ頑張れ」と言うと


「お兄ちゃん抱っこ」と俺に向かって両手を伸ばす。


「……歩きなさい」

 

「はーーい」

 妹がすっかり幼児化しているのを何とかしつつ、改札を抜け家に向かい歩いていく。


 夕方になり、うっすら暗くなってきた家迄の道のりは若干人目がある。

 知り合いがいるかも知れないが、妹はやはり具合がかなり悪いのか足取りは重くフラフラしているので、俺はそんな事を気にしている場合じゃないと腕に捕まらせた。


「具合はどう?」


「うーーーん、電車でちょっと寝たら良くなってきたよ? だからデートの続きはこれからこの辺で」


「だーーーめ」


「ううう」


「しかしなんで風邪引くかなーここの所暖かったのに」


「あーー多分昨日お風呂から上がって、裸で下着選んでたから湯冷めしたのかな」

裸で下着選び、やべ想像、おい!書くな!妹が穢れる!


「湯冷めするほど下着選びって、どんだけやってるんだよ」

 裸で何時間もいたらそりゃ今の季節でも風邪引くわ


「えーーーでも勝負下着だしー」


「だから勝負しないって」

想像だけでも負けます。


「だからこの間、選んでって言ったのにー、そうか私が風邪引いたのはお兄ちゃんのせいだ、責任取ってね」


「責任?」


「うん、責任取ってね」


「うーんでもなー栞、立夏も夏至もとっくに過ぎてるからもう夏だろ?」


「うん?」


「夏風邪は何とかが引くって言うしなー、そんな奴に責任って言われても」


「ううーーひどいよーーー」


そんな話しをしている間に家に着く


 

 玄関を入り、2階の妹の部屋に連れていく、母親は今日は夜勤、父は、うーーんいるのかな、寝室でいつもぼーーっとしてるから分からん。


「とりあえず、着替えて寝なさい、今氷枕と薬持ってくるから、あと何か食べる?」


「着替えさせてーー」

妹が万歳する

まじで脱がしてやろうかと思ったが、妹に引き続き俺が倒れるので、やめておいた。


「いいから早く着替えて寝てなさい、今持ってくるから」


「はあーーい、今もうちょっとだと思ったのにー」

 ……はい、もうちょっとでした。


扉を締める前から、後ろで脱ぎ始めてる気配を感じて、あわてて部屋をでた。


氷枕と、風邪薬、水と冷蔵庫に入っていたゼリーを持って妹の部屋に戻る


「はいるぞー」

そう言って扉を開けると妹は素直にベットに入っていた。


「えっと、とりあえず薬、あ、いきなり飲むのは良くないよな、ゼリー食べるか?」


「食欲ないーー」

 

朝食べてからお昼も食べてないし、薬に食後って書いてあるし、うーーん


「ちょっとでも食べた方がいいよ」


そう言ってゼリーの蓋を剥き、スプーンと一緒に妹に渡す。


「えーーっとね、じゃあ、あーーーん」

妹は起き上がって俺の方を向き、口を大きく開き目を瞑る、パジャマ姿、その口と舌、目を瞑った顔にドキドキしてしまう。


「じ、自分で食べなさい」


「えーーじゃあ、いらなーーい」

ああ、もうわがまま過ぎるなーー


「じゃあ、ホレ」

そう言ってスプーンで一口すくうと、妹の口へ

なんか鳥の餌付けみたいだな、と想像していると妹がスプーンをくわえる。


「美味しいー、お兄ちゃんが食べさせてくれたら、もうなんでもご馳走だね」


「へいへい、じゃあもっと食べなさい」


「うん、あーーーん」


何とか全部食べさせて、薬を飲ませる、氷枕を首の下におき、妹を寝かせ布団を肩までかける。


「じゃあ、ちゃんと寝ろよ」

そう言って妹のベットの横から立ち上がろうとすると、妹が俺の服を掴む。


「お兄ちゃん、もうちょっといて」


「栞、俺がいたら寝れないだろ」


「じゃあ、寝るから、寝るまでいて」

うーーんいたら寝れないのに、寝るまでいてって、ずっといるのか?


「とりあえず、あとちょっとな」

そう言って妹の横に座る。



「ねえ、お兄ちゃん、今日夜までいたら、綺麗だったよね」


「あー、うんそうかもな」


「残念だなー、お兄ちゃんと見たかったのに」


「また行こうな」



「うん、……ねえ、お兄ちゃん、手を握って」

もう今日はとことんわがままだけど、しょうがない


「ほれ、今日は、わがままだなー栞」



「だって……、今日は恋人なんでしょー」


「あーー、うん、まあそうだな」

言った、確かに言った。



「えへへへへーお兄ちゃんが……寝てる横で手を握ってくれてるー」

妹は俺が握っている手と、自分の手、それと今日買った指輪を見つめている。



「……今日ね凄く楽しかったの……凄く嬉しかったの、お兄ちゃんがデートに連れていってくれて、……指輪も買ってくれて」


「うん」



「また夢が叶っちゃた、……小さい頃からの私の夢、最近ね、……どんどん叶っちゃうの、私幸せ過ぎて……良いのかなって、昔の私に……ごめんねって謝ってるの」


「でも、……あなたも……もうすぐ幸せに……なれるからねって言ってるんだ……」



「だから……お兄ちゃん、……お兄ちゃんも、ありが…………」


 やはり具合が悪かったのか、そう言って妹はすうすうと寝息をたて始めた。


 俺は起こさない様に繋いでいる妹の手をそっと持ち上げ、薬指の指輪ごと指にそっとキスをした。


「う、ううん、えへえ、お兄ちゃん……」

 一瞬起きているのか? と思ったがどうやら寝言の様だ。


 俺は慎重に栞の手をそっと布団の中にしまう。


 そして、妹の寝顔をチラッと見て電気を消しそっと部屋を出た。



「おやすみ、栞、……ありがとうな」

 そう呟き静かに扉を閉めた。


 楽しかった……心から楽しかった。


 大好きな妹……俺の大事な……一番大切な人。



 俺の大事な大事な宝物。









【あとがき】


 以上で一旦終了します。

 この続きは「妹に突然告白されたんだが妹と付き合ってどうするんだ」の20-1から読めます。

 また時間が出来ましたら、書き直しを開始するかもしれませんが、新規更新は一度これで締めさせていただきます。(-ω-)/ 

 とりあえずこの後少々改稿はします。



 お読みいただきありがとうございました。

 面白かったら★レビューをよろしくお願い致します。

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超絶コミュ力の妹と陰キャの俺、そんな妹に突然告白され、俺の高校生活がとんでもない事になった。  新名天生 @Niinaamesyou

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