第三回 道連れから始まる、その温かさ。
――先程、
それは長いマフラー。……ペアー用らしいの。マーブル模様をしている。
お家の、開けられない玄関のドアの前……
梨花と並んで座っている。そして梨花との距離は密着している。お互いの体温で温まっている感じ。でも、震えが伝わってくる。とくに梨花は今日、異状なしとはいえ、病院で診察してもらっている。……笑顔だけど、何か涙目になっているみたいで、
「梨花、もういいよ……僕、大丈夫だから」「よくない!
と、まあ、こんな感じなの。……どっちがやせ我慢なの? って思うくらい、梨花は頑固なの。もう二時間以上となる。梨花の顔を、こんなに近くで見たのは初めて。
見れば見るほど、僕を鏡で見ているみたいなの。
もし模型や絵で表現したとしたら、途轍もなく精度の高いものを要求されそうだ……
「梨花、どうして僕なんかのために、そこまでしてくれるの?」
「
……グッとくる言葉だった。
涙が出そうになったその時、――「あんたらバカ? そんなにガチガチに震えて。ったく何やってんのよ、さっさと行くよ」と、
座っている僕らの前に立って、仁王立ちでそう言ったの。「行くって何処へ?」と、僕ら二人はハモって、可奈はクスクス笑いながら、「ホントあんたたち息ピッタリね、もしかしたらソックリなのも伊達じゃないわね。……決まってるでしょ、私の家。見てらんないから、『赤い狐と緑の狸』をご馳走してあげようっての。どうせ空腹なんでしょ、二人揃って、これまた息ピッタシに、お腹まで鳴らしちゃってるし」
と、いうわけで、
いきなりのマシンガントークによって急展開を遂げることに……
向かうは可奈のお家、ということになった。冬の星座を見ながらの僅かな徒歩だった。
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