第61話 5-11 Aランクダンジョン
「想像してはいたければ、これは壮観ね」
あたりには、ゴブリンキング、オークキング、そしてオーガ? 鬼のような存在が所せましと闊歩していた。
「本当に、Aランク魔獣のオンパレードだよ。こんなもの初期に挑戦したら死ぬしかなかったな」
剣也はあの時好奇心で挑戦しなくてよかったと、心から思った。
「でもよ、剣也、あれぐらいなら」
王が笑う。
「あぁ、そうだな」
剣也も笑う。
「「敵じゃないな!」」
直後王と剣也が魔獣たちへ走り出す。
10体はいた魔獣たちは、半分は一瞬で首が飛び、もう半分は、ひしゃげてつぶれた。
「本当の化物はこっちみたいね」
静香はその光景をみて、魔獣たちに同情する。
昔腰を抜かして、死を感じた存在達も今となっては相手にならない。
これがインフレかと思いながら二人のナイトに導かれ次の扉を開く。
「なぁ、王、理性を失わずに攻撃できるようになったのか?」
剣也は疑問に思う。なら最初からやればいいのにと。
「いや、失ってるぞ。俺の能力は、目的を達成するまで理性を失うという力だからな。
発動するたびに目的を設定しているだけだ。右手で殴るまで、10メートル飛ぶまで。とかな」
「なるほど」
少し戦いずらそうだと思ったが、ギフトの抜け道だなとも思った。
そして破竹の勢いで、突き進む王と剣也。
もはやAランク魔獣もBランク魔獣も同じもの、圧倒的暴力の前ではなすすべもない。
そしてボス部屋の前まで到着した。
ここまでわずか2時間ほど。
そして最後の扉が開く。
そこに立つのは、一体のオーガ
体躯は、剣也たちと大差ない。
まるで人間かと思うその風貌そして、手には一本の刀を持つ。
どこかサムライのような、そんな雰囲気をその魔獣は醸し出していた。
『Aランクダンジョン 夢幻の剣戟 ダンジョンマスター Sランク魔獣 サムライオーガとの戦闘を開始します』
扉は締まり、青白い松明が一斉につく。
円状の部屋の真ん中に立つオーガは、こちらを見据えて刀を構えた。
「さっきまでと同じとはいかなそうだな」
「あぁ、気を抜かないでいこう、王」
最強の二人 対 サムライオーガの戦闘が始まる。
切り結ぶのは、剣也。
そして実感する。この魔獣の強さに。
達人、まるで確固たる意志をもって長年の修行の末に行きついた剣技
この技術は姫野にすら迫るかもしれない。
そして、その膂力は、剣也を優に超えていた。
「剣也! そのまま時間を稼げ!」
王がオーガの背後に飛び、右ストレートをかます。
オーガは、それをかわそうと、剣也と切り結ぶのをやめようとする。
しかしそれは剣也が許さない。
達人が、指に乗せた鳥を上下に動かし、飛び立たせないように。
思考加速で、限界の集中と反射を用いて、オーガの初動をすべて殺す。
そして王の拳がオーガの腹を突き破る。
血を吐きながら、オーガはよろめく。
その隙を剣也は逃さない。
魔神のごとき、一刀でオーガの首をはねて息の根を止める。
『ダンジョンマスター サムライオーガが討伐されました。
Aランクダンジョン 夢幻の剣戟の攻略を確認しました。報酬処理に入ります。』
「私の出番はなかったわね。正直ついていけないけれど」
静香は特に何もできなかった自分を嘆きながら、この二人の頼もしさを感じていた。
剣也と王は拳でイエーイと喜び合ってる。まるで高校生の昼休み。
いつの間にあんなに仲良くなったの? ほとんど話してないわよね?
静香は疑問に思うが、男の子ってそういうものなのかしらと納得する。
『貢献度3位までと報酬を発表します。報酬は3位までしか与えられません。
1位:御剣剣也 10億ポイント + 初回クリアボーナス:始まりのタネ
2位:王偉 10億ポイント + 初回クリアボーナス:始まりのタネ
3位:二菱静香 10億ポイント + 初回クリアボーナス:始まりのタネ』
「「はぁ?」」
10億? いくら何でもインフレしすぎだろう。
それに全員に10億ポイントなのか。
一回クリアするだけでAランク開花3つまでいけてしまうぞと剣也は思った。
いや、しかしそうか、そもそもSランクギフトを持つものでしかクリアできない難易度設定なので、それはすでに終わっている前提なのか。
正直タイマンだったら、相当苦しめられたぞ、あの魔獣は。
ならば狙うは、Sランクギフトの開花200億ポイントか。
全然足らないじゃないか。
『心の鉢を除く所持可能ギフト数は最大三つです。ギフトを破棄するか、始まりのタネを破棄してください』
え? ギフトは3つまでなのか?
俺のギフトは、心の鉢の思考加速、通常ギフトの護りの剣豪、剣聖の3つだ。
そして、あと一つはSランクギフト用に所持しておいた始まりのタネ
今追加で始まりのタネが増えそうになったが、これ以上は持てないのだろう。なら破棄だな。
「なんだ? ポイントって?」
王が疑問に思う。あ、そうか王は知らないのか。
「あぁ、そのままシステムに任せて発芽するといい。好きな力を選ぶんだ」
「ふーん」
そういって王もギフトを取得していた。
しかし、そうなると、心の鉢でAランクギフトを発芽しておかなければSランクにはいくらポイントを集めても届かないということか。
3つしかギフトは持てないならば、開花に3つ使ってしまうため取得できない。
そう簡単にSランクは獲得できないというわけか。
「パラライズを捨てることになるわね、結構気に入っていたのだけれど」
静香はCランクギフトパラライズを捨てて、Aランクギフトを取得するようだ。
「あ、似たようなAランクギフトがあるわ、これにしましょう」
決まったようだな。
あとは、俺のSランクギフトだ。どんなのが出るんだろう。
一刀のもとすべてを切断するとか、斬撃が飛ぶとかそんなのかな。わくわくすっぞ。
『Sランクギフトを取得しますか?』
「あぁ頼む」
『了解しました。Sランクギフト 終わりの蕾を獲得しました。
スキル概要:開花を待つ蕾 一度取得すると破棄することはできません。』
「はぁ?」
能力は? え? なにもなし? 詐欺だろ。
『詐欺ではありません。狂戦士以外のSランクギフトはすべて終わりの蕾です』
はぁ、そうですか。なんかすごいがっかりだわ。
狂戦士も開花するのかな? ヘラクレスとかになるのか?
『開花できません、開花できるSランクギフトは終わりの蕾のみです』
そうですか。まぁそうだと思ったけど。
「終わったぞ、剣也」
「あぁ、じゃあ出ようか。外で八雲さんたちがまた待ってるかもしれないが、急いで逃げよう」
そうして3人は初めてのAランクダンジョンを後にする。
次は沖縄だな。
ダンジョンを出た三人は、身構えたが誰もそこにいなかった。
拍子抜けした3人は、そのまま沖縄へ向かうことにした。
『ワールドクエスト 夢幻の剣戟をクリアを達成しました。残りクエストは9個です』
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