第60話 5-10 最強の二人

「プハッ!!」

静香は、唇を話し大きく息を吸い込む。


「息止めてたの?」


「え? そういうものじゃないの?」


「ふふ、静香は可愛いね」


「な、なにを! 次はもっとうまくやって見せるわ」


「舌ももっと動かさないとだめだよ?」


「そ、それはちょっとむずかしい…」

頭から湯気がでるように、静香は真っ赤にしながら下を向く。

素直にかわいいと思った。


「ありがとう、静香。元気がでたよ!」

おお、息子よ。お前も元気になったか。よしよし。これからも一緒に頑張ろうな。

剣也は、心身ともに文字通り元気になった。

たった一人味方がいる。それがどれほど心強いことなのかと。


「一体何が起きているのかしら」

静香が疑問に思う。正直よくわからない。


「あの声は聞こえた?」


「御剣剣也を討伐しろって声? それなら聞こえたけど」


その前の声は、俺だけに向けた声なのか。


「もしかしたらみんな洗脳状態にあるのかも。じゃないとおかしいわ。たとえ剣也を討伐すれば本当に終わるとしても、八雲さん含めみんながああも話が通じなくなるなんておかしい。私のギフトには、剣也のそばにいる間状態異常無効もついてるの。だから私だけ効果がなかったのかもしれない」


「そうだね。状態異常か。解除方法はないな。じゃあやはり鍵は、Aランクダンジョンか」


「Aランクダンジョン?」


「ああ、Aランクダンジョンすべてをクリアした先に元凶がいるはずなんだ。だから攻略するよ。Aランクダンジョンを」



剣也は静香の手を握り、洞穴をでる。

日の光が眩しい。こんなにもいい天気だったのか。


「静香は、Aランクダンジョンがどこにあるか知ってる?」


「ええ、すべて覚えてるわ、すべていいましょうか?」

さすが優等生だ。全部覚えているのか、これは助かる。


Aランクダンジョンは世界で10個

日本では、2つある。

俺の母校の希望が丘高校、そして沖縄に一つ


すべてを巡るのは大変だが、それでもこれしかヒントはない。

まずは希望が丘のダンジョンを攻略しよう。


二人は、希望が丘へと向かった。

まっすぐと上を向いて。その目にはもう迷いない。

二人ならばきっと乗り越えられる。




「やはり、ここに来たね。剣也君」

剣也たちは、希望が丘高校に来ていた。

Aランクダンジョン 夢幻の剣戟へ挑戦するために。


「八雲さん、そこを通してくれませんか。無理だとは思いますが」

そこには、八雲と学園の生徒、そして、世界中から集めたであろう神の子達が終結していた。

全戦力をぶつけてきたのだろう。ここで剣也を倒すために。


それでも剣也は進もうとする。

無理やりにでも。


「それは、無理な相談だね。君を倒すことが私の使命だ」

八雲は答える。その目には、虚無が宿っていた。



そして、世界対少年と少女の戦いが始まる。


Aランク以上の強者はすべて剣也が引き受ける。

Bランク以下は静香が引き受ける。それでもこの物量で押される。

正直殺していいのなら突破は可能だが、剣也の能力では、一人ひとり気絶させていくしかなかった。


「さすがだね。剣也君。Aランク程度ではもう相手にならないか」

八雲はその様子をみて、彼らでは剣也を捕らえられないことを悟った。


「では、切り札だ」



「よぉ! 剣也! あの日以来だな!」


まさか、あれは

「王!?」

希望が丘高校の瓦礫の山に破壊の化身が立っていた。


「そこのおっさんに頼まれてな。お前を殺せば罪は帳消しにしてやるってよ!」

直後王が剣也の前に飛び立った。

理性をコントロールできているのか?


「だからよぉ、剣也!!」


まずい、王も相手にするとなるとさすがに分が悪い。

王の拳が剣也に向かうと思ったが、この軌道はまさか。


直後剣也の後ろ、ダンジョンへと続く道が王の拳圧で吹き飛んだ。


「俺はお前の味方になってやるよ。友達だからな」


「王!」

そうか、君も洗脳を受けていないんだな。

狂戦士の能力か?


「行くぞ、あの塔に入るんだろ?」


「あぁ!」


 そうして3人は、吹き飛ばされた道を進みダンジョンへと進んでいった。

その様子をみて、八雲は、討伐は不可能と諦める。

世界最強の二人が手を組んでしまった。

もはや人類ではあれを倒すことはできないと。



『御剣剣也、二菱静香、王偉3名の認証を確認しました。Aランクダンジョン 夢幻の剣戟へ挑戦しますか?』


「「「はい!」」」

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