第57話 5-7 共食い

静香も圧勝した。

これでベスト32となる。


3回戦の相手はインド代表だった。

カレーを食べたら身体能力100倍なのかな?

なんて失礼な想像をしながら、ステージに上がる。


「ほれの、にょうりょくは、ナンをちゃべているあいだだけ、しんたいにょうりょく10ばいだー! もぐもぐもぐ」


剣也は無言で閻魔を振り下ろし試合を終わらせる。

「食べながらしゃべるな。行儀がわるい」


これでベスト16だ。いいのか?これで。いいのか各国代表がこれで。

実際はふざけていない。身体能力10倍とは、初期の剣也の護りの剣豪と同程度。

実はすごい能力なのだが、ふざけてるようにしか思えないのは剣也が強くなり過ぎたからだろう。


続いて4回戦 相手は、アメリカ代表の二人目

トーマス君 ほとんどがビアンカが相手してくれていたが、常にそばにいた。

寡黙な男だ。


「御剣剣也殿 胸をお借りします」

トーマスが構える。武器は小型ナイフ ザ軍用という構えだ。

さすがは軍人。様になっている。


「よろしくお願いします」

剣也も礼には礼をもって返す。


「はじめ!」

仕掛けるのはトーマス

小型ナイフでの突進。しかし剣也は見切って交わす。

と思ったら急にナイフが進行方向を変えて剣也を追う。初めからわかっていたかのように。


常人ならここで決まりだった。

剣也が相手出なければここで決まりだった。


剣也は、閻魔の柄で、ナイフをはじく。思考加速を使い、限りなく0に近い反射神経を発揮する。

直後発動した護りの剣豪により、トーマスを一閃のもと切り伏せた。


「勝者! 御剣剣也!」


倒れたトーマスが

「さすがです。初見殺しなんですが、受けきりますか」


「いえ、びっくりしましたよ。なんだったんですか?」


「少しだけ未来が見えるんですよ。1秒先ですがね。ふふ、私の首が空を飛ぶ風景もみえていましたよ。完敗です」


「すごい能力だ。びっくりしましたよ」


これでベスト8 結構多いな。


次の相手は、イタリア代表か


「ほれの、にょうりょくは、ピザをちゃべているあいだだけ、しんたいにょうりょく10ばいだー! もぐもぐもぐ」


「もうそのネタはやった」

ネタギレを思わせるその一刀は、あまりに早く二言で勝負は終わった。

大丈夫か? 作者


これでベスト4が出揃った。


アメリカ代表 ビアンカ

日本代表   二菱静香

日本代表   御剣剣也

中国代表   李娜リーナー


俺の相手は中国代表か。

中国拳法とか使うんだろうか。


そして、ビアンカと静香の試合が始まった。


ビアンカの能力 ワンハンドレッド身体能力が100倍になるらしい。

いやいや、おかしいだろと思ったが、戦闘がはじまるごとに下がっていき、最終的には2倍まで落ち着くとのこと。

それでも破格の能力のような気はするが、長時間の戦闘には不向きではある。


「頑張れよ。静香」


「ええ」


そして静香とビアンカの戦闘が始まった。


「よろしくお願いします!」


「ええ、よろしく」


直後走り出したビアンカ、先手必勝 時間制限があるのだから様子を見る暇などない。


「ラッシュラッシュラッシュ! ビアンカ選手 殴る蹴るの暴行だ! 女の子通しの戦闘とは思えない激しいぶつかり合い!!」

紅一点同士の戦闘に実況も熱が入る。


「ビアンカ選手が最初のラッシュで決められないのは初めてですね」


「御剣選手以外にも日本には大和撫子がいたんですねー」


 静香はすべての攻撃を捌いている。

なぜなら静香も身体能力60倍 相対するぐらいなら可能なほどに化物だ。

ここで俺が離れたら静香は負けてしまうかな? とちょっと思った。

恋する乙女 詳細は聞いていないが、どれぐらい近くてどれぐらい離れていれば倍率は変わるのだろう。というかネーミングセンスを疑う。


「はぁはぁはぁ、やりますね、今のをすべて受けきるとは」


「はぁはぁ、あなたもね。能力だけじゃない。素の戦闘も得意なのかしら」


直後二人はまた切り結ぶ、しかし徐々に静香が押しているように見えた。

時間制限か?

ビアンカが押され始めた。と思ったらあっけないほどに試合の幕が閉じた。

静香の一刀のもとビアンカは沈む。


「勝者 二菱静香!!」


「時間制限ですね。おそらく敗北したときには30倍ほどになっていたでしょう。最初のラッシュで決められなかったのは痛かった」


「負けました。剣也さんだけじゃないんですね。日本は本当に強い」


「危なかったわよ。最初のラッシュは一歩間違えばもらっていたわ」


二人は手を取り合い立ち上がる。

「美しいですねー国を超えた友情 これこそが、今大会の目的でもあるわけですね?」


「そうですね。今後は二国間が力を合わせて魔獣討伐に当たってほしいですね」


決勝の相手は静香か。


そして俺の相手は、あの中国人 


「続いては、中国からたった一人の出場の李娜リーナー選手。もう一人の代表の方はエントリーされてたんですが、今日は来られなかったようですね」


「ええ、しかしこの選手 ここまで御剣選手と同程度の速度で倒してきております。注目のダークホースですよ!」


そして二人がステージに上がる。

「用意は良いね? はじめ!」



「御剣剣也さんでしたね?」

李が話しかける。細目におかっぱそして、チャイナ服。

まさに中国の武術家という風貌


「あぁ、そうです、李娜さんですね。よろしくお願いします」

挨拶かと思った剣也は、お辞儀を返す。


「ふふふ、礼儀正しいんですね、人殺しのくせに」


「は? 僕は人なんか殺していない」

突如人殺し呼ばわりされた剣也は怒りをにじませる。


「まさか平和ボケしたあなたの国が、我が国と同じことをやってのけるとは思いませんでしたよ」


こいつは何を言っているんだ?

李は首をかしげる。

「やってますよね? 共食い。いや神の子殺しといったほうがいいですか? 魔獣なんかよりもよっぽど簡単にポイントが稼げますからね」


神の子殺し? 神の子を殺すといっているのか?

ポイント? まさか入るのか? 人間同士でも。


「あなたもこの大会に品定めに来たのでしょうが、残念でしたね。ここは私のための餌場です。そして私が世界最強に、我が中華が世界最強の軍事力を持つのです」


李は大げさに体を広げて高らかに宣言した。


「今日出場しているメンバーの底はわかりました。これなら様子見する必要もありませんでしたね。あの女共も容易に殺せる。特別に犯しながら殺してあげよう。いい声で泣きそうだ」


静香たちのことを言っているのか?


直後李が剣也の周りを旋回する。決闘モードは選択されていない。

旋回しながら李が話しかける。

「あとはあなたを殺したら殺戮ショーの始まりです。楽しみですね。あぁやっと殺せる。昨日もね、我慢できずに殺してしまったんですよ。贄を。あれは良い声で鳴きました」


剣也は下を向いて、震えている。


「おや? 震えているのですか? 大丈夫ですよ。一思いに殺してあげます」


李が剣也の背後をとる。

光悦の表情を上げながら李が剣也へナイフを突き刺そうとする。

「では、さようなら!!」


「あぁ、わかったよ」


「ガハッ!!」

直後爆発したかと思うほどの破裂音とともに、地面が砕け、李が殴り叩きつけられる。


「お前がゲロ以下の糞やろうだということはな!!」


李は触れてしまった。剣也の逆鱗に。

命を弄ぶという剣也が最も怒る逆鱗に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る