第54話 5-4 ドラゴン討伐と世界交流戦
剣也は、わけもわからず空港に向かっていた。
アメリカに飛ぶのは、剣也、静香、八雲の三人だ。
「八雲さん。そろそろ教えてくださいよ」
「飛行機の中で話そう。プライベートジェットだ。なかなか乗れるもんじゃないぞ?」
八雲は笑って回答をじらす。
「まだ夏美に挨拶もしていないのに」
剣也はむくれる。LINEでごめん一週間伸びたとだけ送っておくが、少し怒った様子のスタンプを送ってきた。もしかしたら何か用意していたのかもしれない。ごめん。
「なーに、ほんの一週間だよ。夏美君も待ってくれるさ。それに今日出ないと間に合わない」
そして一同は、空港につき、そのままプライベートジェットに乗り込む。
「うぉー、すごい、八雲さん。これほんとに飛行機の中ですか」
シャンパンまである。飲めないが。
「じゃあ座り給え剣也君。そろそろ話してあげようか」
八雲さんが着席をうながし、やっと教えようとする。
「はい」
剣也も座り耳を傾ける。
「まずは、今から行くのはNY、討伐対象は、あのドラゴンだよ」
「アメリカにいくというからには、そういうことだと思いましたよ」
剣也は予想通りの答えだと思った。
「あのドラゴン自体は、Aランク 正直今の君たちなら簡単だろう。目的はもう一つ。それが世界交流戦だよ。つまりは世界大会だ」
「世界大会?」
スポーツじゃないんだぞとツッコミをいれたい。
「まぁ、交流会とは名ばかりさ、各国は他の国の戦力を知りたいんだよ。Aランクギフトを持つ存在など、両手で数えるほどしか世界に存在しないからね。それをドラゴン討伐とかこつけて、世界中から強者を集結させたんだ」
なるほど、そういうことか。
戦力の把握、そしてあわよくば自国の魔獣討伐などを依頼できる人材を探すと。
「まぁ、どの国も、そんな名目でかの国から救助要請を求められたら断れないのでね。もちろん我が国も」
外交上の都合というやつか。剣也にはよくわからない。
「それより、剣也。あなたの能力説明してくれるかしら? 私が一方的に敗北した理由もね。開花したギフトの力なのかしら」
静香は待ちきれないという感情をあらわにする。
「あぁそれは…」
「シートベルトをご着用ください。まもなく離陸します」
アナウンスと共に飛行機が飛んだ。そして剣也は、説明を始めた。
──
「ほらほら、なんだいその剣の振り方は! 腕の力だけで振るんじゃないよ! 腰使え、腰! そんな腰じゃ孫娘は喜ばないよ!」
「やってるじゃないですか! こうでしょ? それに下ネタはやめてください!」
ブンブンブン
そこには、ダンジョン攻略の合間に、姫野から剣術指南を受ける剣也がいた。
「カーッ。お前才能ないねぇ。あるのは根性だけかい」
姫野はあきれたように、肩を下げる。
ぐぬぬ。剣也は、イラっときたが実際そうなので仕方ない。
特別な力を持ってはいるが、別に才能があったわけじゃない。
「まず、あんたイメージができてない。どう振ればいいのか頭がイメージできてないんだよ。それさえできればすぐなんだけどねぇ。まずはイメージトレーニングからやんな。頭で理解する。体なんかあとからついてくるんだ」
「はい…」
そして、剣也はイメージトレーニングを始める。
これが案外難しい。確かに頭でイメージできない。
どうすれば姫野のような剣の振り方ができるのか。
そんな毎日が続き、10個目のダンジョンを攻略し、1億ポイントがたまる。
Aランクギフトを3つもつ剣也にとって、すでにBランクダンジョンは敵ではない。
4,5時間もあれば攻略できてしまう。
そしていよいよ、開花のとき
『どのギフトを開花しますか?』
もちろん、一番俺を守ってくれたこのギフト。
俺が世界に存在できている理由。
思考加速を開花する!
『了解しました。開花します。成功しました。思考加速+に変更されます』
+がついただけか。何ができるようになったんだろう。
『ギフト説明:思考加速発動時思考の疲労がなくなり、集中力が増します』
なんか地味だな。と剣也は思った。
しかしこのギフトがもたらす恩恵を理解していなかっただけだった。
──────
「戻りました!」
「じゃあ、修行再開だね」
息つく暇もないと思ったが、たった三か月。
これでどこまで強くなれるかは、剣也次第なので泣き言はいわない。
「ほら、いつも通りイメージトレーニングからだよ。早く自分がどう動くか思考し続けな。頭使わなきゃ強くなんかなれないよ」
直後剣也に稲妻走る。悪魔的発想。姫野の言葉で気づく。
イメージトレーニングに思考加速を使えばいい。そして、開花した力これなら疲労もたまらない。脳が疲弊してしまうので、長時間は使ってこなかった1000倍の加速、しかしいまなら!
そして剣也は発動する。なんと表現したらいいのか、ずっと脳がクリアなままだった。
集中がずっと持続する。これならいつまでだってやれそうだ。
1000倍に引き伸ばされた世界で剣也は、イメージする。どう振ればいいのか。どう動けばいいのか。何度も何度も反復する。
「剣也! いつまでやってんだい! もう3時間だよ」
姫野の声で目を開く。
3時間。剣也の体感にして3000時間つまり125日近くぶっ通しで剣を振っていた。
「あんた、顔つき変わったね、たった3時間だよ?」
姫野は驚く。なにかが変わった。この少年のなにかが。
剣也は立ち上がり、深呼吸を置いて、さきほどまで繰り返していた素振りを現実でも行う。
「フンッ!」
その一刀は、美しく線を描きながら、一直線に振り下ろされた。
姫野からしたらまだまだだ。まだまだだが、明らかにいままでとレベルが違っていた。
「あんた一体何をしたんだい」
「ちょっと裏技を見つけて」
剣也は笑って答えた。確かな手ごたえをつかみとって。
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