第24話 2-14 護れたもの

知らない天井だ。

一度は言ってみたいセリフを呟いたら横に女性が立っていた。


お願い聞かなかったことにして?


「ふふ、そのセリフちゃんと言う人初めて見ました。」


いやーー!言わないで!恥ずかしい恥ずかしい。

心の中で叫ぶ剣也だが、女性の顔を見て思い出す。

ん? あれ、この女性は、、

そうだ! あのときゴブリンに襲われていた母親だ。


「おはようございます。先日は本当にありがとうございました。

ぜひお礼を言いたくて、今日は娘と一緒にお見舞いにきました。

あ、これぜひ食べてください。」

そうすると、母はフルーツ盛り合わせをベットの横の棚の上に置く。


「ありがとうございます。

お母さんも、背中は大丈夫ですか?結構刺さってましたが。」


「はい、まだ激しくは動かせませんが。

思ったよりも傷は浅かったようです。

先日どちらかというと、恐怖で動けなかった方が大きかったですね。

お恥ずかしい限りです。」


「そうですか、大事じゃなくてよかったです。」

と話してると、ベットの下からひょっこり小さな女の子が現れた。


「お兄ちゃん! 助けてくれてありがとう!」

まだ小さな女の子が、精一杯体を伸ばしてベットの端に捕まっていた。


よかったこの子も怪我もなく無事だったんだ。

俺はその子の頭を撫でる。確かあのとき母親が芽衣と叫んでいたはずだ。


「君もお母さんを守ったじゃないか!芽衣ちゃんでよかったよね?

本当にすごいよ。ありがとう。

芽衣ちゃんのおかげで、みんなを救うことができた。

君が一番勇気があったよ。」


「えへへ!どういたしまして。」

小さな少女が、フニャッと笑う姿はとても可愛い。

癒される。よかったこの親子が犠牲にならなくて。

辛い戦いだったが、本当に助けられてよかったと思う。


「母子家庭でして、主人はいません。

わたしにはこの子が全てでした。

本当に、感謝してもしきれません。

もし私たちにできることがあれば、協力させてくださいね。


あっ! あと神の子学園でしたっけ。

そのための活動にも参加させてもらいますので。

成功させてくださいね。」


あぁ、すっかり忘れていた。

「それは、ありがとうございます。

きっとこの国のためになるはずですので。」


そう言って取り止めのない話を少しした後

背後の気配に気づいたお母さんが、くすっと笑いながら

疲労もあるだろうということで、話を切り上げ、退散した。


「お兄ちゃんバイバイ!」


「では失礼します。お体に気を付けてくださいね。」


そうして親子は部屋を後にしたが、

ドアの向こうからもずっと女の子のお兄ちゃんバイバーイという声が聞こえる。


名残惜しいが、自分が守れたものを再認識できてとてもうれしい。本当に守れて良かった。


名残惜しい目でドアを見ていると

ドアから、黒い髪が少しはみ出ている。


あの綺麗な長い黒髪は、


「静香?」

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