第21話 2-12(4) 怒りの英雄
「武器があれば、あいつに勝てるか?」
横には八雲大臣が立っていた。
「八雲さん!ここは危険です!逃げてください!」
「なに、子供達だけには命を張らせんよ。
それに今は神宮寺が気を引いてる、
それで話を戻すが、武器があればあいつを倒せるか?」
「わかりません。正直さっきの刀程度では、あいつの攻撃を受けきれない。
もっと硬く、強い武器が必要です。」
剣也は正直に答えた。
八雲は笑う。
強い武器が有れば戦えると暗に言ってる少年を見て。
あの存在と切り結んでなお、立ち向かえる少年を見て。
「ならば、これを君に託す。
私が以前から研究していたものを、特別に君のために作らせたものだ。
今回の作戦は使い慣れた刀の方がいいと思い渡さなかったがそうも言ってられないんでな。」
出雲首相からこの未来の話を聞いていたときから動いていた研究の成果
その一本の刀を剣也に手渡す。
「抜いてみてくれ」
剣也は言われるがまま、刀を抜く。
その刀は、刀というには、あまりに黒く
剣というには、あまりに武骨で
観賞用というには、あまりにも殺意に満ちていた。
持ち手には、日本刀のような装飾はなく、
かわりの近代的なグリップはとても握りやすく握力を直接刀に伝える。
「これは?」
「これは今現在の人類の到達点だ。
最新の冶金技術から分子工学そして、昔の製法すらも取り入れ、作られた刀。
正真正銘 今人類が作れる最高の刀だ。
今後神の子学園の生徒たちは刀を主に使う場合も多いからね。
私が作らせていた。
これならばあの怪物と戦えるか。」
すごい、なんて綺麗な刀身なんだ。
その真っ黒な刀身は男子の心をくすぐる。
「これならいけます! 戦えます!」
八雲はにっこりと笑い、そして謝罪した。
「すまない、私たちはこんなことでしか君たちと一緒に戦えない。
あとは頼むぞ、剣也君。
私は静香くんを助けてここから離れよう。」
そう言って八雲さんは、静香のもとへいこうとしたが、
思い出したかのようにこちらを見る。
「あぁ、その刀の名前だけど、まだ決めていない。
好きにつけてくれ。
その刀に似たものは量産する予定だが、君のは実験段階でお金をかけすぎてね。
相当にスペシャルだ。いい名前を付けてやってくれ。」
そう言って静香のもとへ走っていった。
刀の名前 たしかに村正や、三日月宗近など有名な刀には名がある。
ならば俺がこの刀に付ける名前は、なんだろう。
この刀に付ける想い。
親が子供に名をつけるように、こうなってほしいという思いを込めるように。
この国を、護るという思い
あの魔獣を倒したいという思い
国を護る刀、ならば、つける名は
これがこの刀の種類の名前。
日本の名前を冠する日本刀のように。
この国を護る刀になってほしいという思いを込めて。
そして、この刀には、あの魔獣を裁く力を。
あの悪魔たちを地獄へ落とす力をこの刀に。
それは、地獄の審判者の名前
名前を考えた瞬間脳に浮かんだ名前。
この刀の名前は
護国刀 閻魔だ。
国を護り、悪を裁く刀。
ありがとうございます。八雲さん
これで戦える。
さっきは不覚を負ったが、これならばあいつの命まで届く。
十分な距離を八雲が静香を連れて逃げてから、ヘリはゴブリンキングから離れた。
空への攻撃手段のないゴブリンキングは、苛立ちながらも背後に立つ存在を感じた。
先程は飛ばした存在だ。小さな存在だ。
なのにこいつから目が離せない。
強い、こいつはきっと強い。
進化する前の精神など消えているはず。
なのに心の奥底から感じるこの小さなものへの恐怖は、
今ここでこいつは殺さなければならないと警報を鳴らす。
ゴブリンキングは、斧を構えた。
小さな剣士も、剣を構える。
「またせたな。キング!
リベンジ戦だ。死ぬ覚悟はできてるか!!」
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