第20話 2-12(3) 怒りの英雄
「一定時間が経過しました。
ゴブリンジェネラルは、ゴブリンキングに進化します。
クエスト難易度はAランクへ上昇しました。」
黒い繭は溶け、なかから現れたのは、身の丈ほどの巨大な斧をもつゴブリンだった。
大きさは先ほどとさして変わらない。
しかし感じるプレッシャーはさきほどのゴブリンを大きく上回る。
この敵は、ケルべロスをも凌駕しているかもしれない。
ゴブリンキングは、無言で剣也へ斧を振り上げ振り下ろす。
速い、でも見えないわけではない。
100倍に加速した世界でなら、簡単に受けられる。
そして今までと同じように剣を構えて受け流そうとした時だった。
刀に感じる圧倒的衝撃。
「な!?」
剣也はあまりの衝撃に驚き声が漏れる。
受け流せる。
なんとか受け流せそうだが、これでは、刀が。
直後 校長の刀はへし折れた。
所詮は観賞用 本物の戦いについてこれなかった、
刀が折れたせいで、受け流すことに失敗した剣也は、吹き飛ばされる。
まるでダンプカーにぶつかったような衝撃で、剣也は吹き飛ぶ。
幸いにもコンクリートではなく、茂みに飛ばされてたおかげで命までは刈り取られなかった。
しかし衝撃で。一瞬気を失ってしまう。
まずい!
それをみて、何かあったら援護しようと近くにいた静香が動いた。
ゴブリンキングの気を引こうとゴブリンキングの元へ走る。
その企みは成功した。
静香がゴブリンキングと相対することができないという点を除けば。
目があった静香は、ゴブリンキングからの殺意を一身に受ける。
横で見ているだけでも常人なら心が折れるプレッシャーを受けても平気だったのは、
武道をたしなむ静香だからだろう。
しかし、一身に受けたときその殺意は、横で見ている比ではない。
勝てない。どうやっても、私ではこの怪物に勝てない。
圧倒的に感じる死の恐怖。初めて感じたその恐怖に静香は動けない。
これがAランク 剣也が、倒したというケルベロスと同じランク。
こんなもの何回やったって人間が倒せる相手じゃない。
自分ならいつか弱点を見つけて勝てるだろう。剣也の話を聞いたときそう思った。
自惚れていた。こんなの何回やっても勝てない。
何度も殺されるのだろう、手足を切られ、頭から潰されて。
時にはゆっくりと食べられる。
あらゆう方法で私を絶望させながら殺すのだろう。
きっと私はリトライできない。
わたしはそんなに強くない。
動けない静香へゴブリンキングが近づく。
静香は、その場で尻餅をついて、腰を抜かす。
腰を抜かすなんて言葉、小物の専用言葉だと思っていた。
しかし、これが本当に腰を抜かすということなのか、立てない
ジタバタと足を動かすことしかできない。
ゴブリンキングが斧を振り上げた瞬間
空から破壊の雨が降り注ぐ。
ヘリからの援護射撃だ。
ただの生物なら一瞬で粉微塵にする人類の兵器
これなら、と一瞬思った静香をあざ笑うように現れたのは、
砂煙が腫れて現れたのは、幾何学模様の半透明のバリア
アメリカでミサイルを無効化したドラゴンと同じあのバリアだった。
ゴブリンキングは、無傷だが攻撃されたことに対して怒りを覚えた。
巨大な咆哮をあげて、ヘリを威嚇する。
流石に声だけでヘリを落とすことはできないが、明らかに意識は静香からヘリへと向かった。
まわりの木や岩を抜いてはヘリへ向けて投げる。
しかしヘリの高さまでは距離があり、簡単には当たらない。
そのゴブリンキングの咆哮で、剣也は目を覚まし、あたりを見回す。
意識を失っていたのか。
危なかった、静香と神宮司さんが気を引いてくれてたのか。
じゃなかったら追撃されて、死んでいたな。
しかし刀が折れた。
流石に校長のただのコレクションだけあって、
安物だったのだろう。ごめん校長、いつか返す。
武器がなくなった。生半可な武器ではあいつの攻撃を受けきれない。
どうすればと、考えていたときだった。
「武器があれば、あいつに勝てるか?」
横には八雲大臣が立っていた。
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