第15話 2-9 夏美陥落
避難所にかえって、夏美と合流した。
今日会ったこと、神の子学園のこと全て話した。
「そう」
夏美は一言そういって、うつむく。
少し寂しそうだった。
「じゃあその学園ができたら転校しちゃうんだね。
といっても私たちの学校は当分使えなさそうだけど。」
そういって壊れた校舎の方角をみる。
「そうなってもたまには連絡ぐらいよこしなさいよ!」
夏美は、無理して明るい顔で笑いかけ、俺の背中を叩く。
剣也は、意を決して夏美の肩をつかむ。
「夏美俺はお前にきて欲しい。」
「へぇ?」
面食らった夏美は変な声がでる。
「お前の家だって住める状態じゃないだろう。
夏美のおばあちゃんだって高校生になってからは、
夏美をほっぽっていつも家では夏美一人じゃないか。
だから、夏美!
俺と一緒に住もう。
全寮制だし、俺がくるなら特別に家族や親しい人は、住んでもいいと許可をもらってる。
だから俺と一緒にきてくれ」
必死に説得した。
夏美は面くらった顔で、驚いていたままだ。
しばらくして頭が何とか回転し、理解すると顔から火がでるように真っ赤になった。
え?これって告白ってこと?
同棲しようってこと?え?え?ほんとに?
「ちょ、まって、私たちまだ学生だよ。
そんなのいきなりすぎるよ、そういうのは段階が必要で。」
「父さんは、構わないぞ。」
「母さんもよ。」
バカップルいや、バカ夫婦が割り込んできた。
「何を隠そう父さん達も実は学生結婚だ。高校生ではないがな。
あれはクリスマスだった。父さんたち盛り上がっちゃってな。」
「剣也、お前の誕生日が10月なのは、そういうことだぞ。
サンタさんがお前をプレゼントしてくれたんだ。」
「もうパパったら、
プレゼントしてくれたのは、パパでしょ。
あの夜は、二人とも盛り上がっちゃって。」
やめてくれ。
全ての子供達が計算してしまって後悔する親の情事を暴露しないでくれ。
そして謎に多い10月生まれは、クリスマスベイビーの一人だと気づいて吐き気を催すんだ。
「そういうことだから、
いいわよ。剣也ちゃん
夏美ちゃんと同棲しても。」
思わぬ援護射撃をもらって
俺は夏美に追い討ちをかける。
「夏美、
俺はお前を守ると誓った。
そのためにはそばにいてくれないと難しい場面もある。
だから、俺と一緒に住んでくれないか?」
半ば強引に詰めようように、約束を盾に夏美を追い詰める。
正直譲る気はない。
「うー」
といううめき声をだしながら
真っ赤な顔は下を向き夏美は顔を合わせないが。
観念するように、声を絞る。
「よろしくお願いします」
小さな声で、返事した。
勝った。
そう思った俺は夏美を、抱きしめる。
「あらあら、まぁまぁ」
「ママ、俺たちは邪魔みたいだ向こうのキャンプへ戻ろう。」
バカ夫婦が退散したかと思うと、
「それはちょっと早いかもー!」
夏美は強く俺を押しのけて、キャンプを逃げるように去っていった。
ふむ、感極まって抱きしめてしまったが、
女心は難しいな。
心が強くなって積極性が上がった剣也であった。
結局帰るところは、ここしかないので
しぶしぶキャンプに戻ってくる夏美であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます