第14話 2-8 大臣の計画
「私の計画を聞いてくれるかい?」
「はい!」
剣也ははっきりと答える。
この国を救うためといわれてしまったら断ることはできない。
その返事を聞いて八雲は嬉しそうに笑う。
計画通りと思っているのかもしれない。しかし剣也は気づかない。
「では、計画を行うにあたって、今回の計画を手伝ってくれる人物を一人呼びたいのだが、
かまわないかね?」
誰だろう、またナンバーズかな?
「ええ、大丈夫ですよ。」
そう言うと、八雲は電話を取り誰かを呼び出した。
少ししてからドアが開き、とてもいい体をした軍人が現れる。
ナイスミドルのいい年の取り方をした30半ばの方だった。
いい体って変な意味じゃないぞ、ほんとにかっこいい体格だということだ。
結局同じようなニュアンスを含むが。
「陸軍三等陸佐の神宮寺 守くんだ。」
「神宮寺 守だ。
よろしくな、坊主。」
「彼は素行は粗いがとても優秀な軍人だ。
信頼してもいい。」
「八雲さん。彼が言ってた作戦の要ですか?
まったく、こんなガキ達に日本の未来を託さにゃならんとは。
坊主、すまねぇーな。
こんな大役いきなりやらせちまって。
だが、よろしく頼む。」
そう言って神宮寺さんは、いきなり頭を下げた。
言葉は粗いが、悪い人じゃなさそうだ。
自分より一回りも小さいガキにも悪いと思ったら頭を下げれる人なんだ。
「いえ、こちらこそよろしくお願いします。」
「素直ないいガキじゃないっすか八雲さん。」
「あぁ、とてもいい人材が見つかったよ。
それに続々とナンバーズ達も私の声かけに集まってくれている。
この作戦を成功させ、必ず国内の全てのナンバーズを集結させる。
そのために神宮寺頼むぞ。」
「わかってますよ。ところでお嬢は?
作戦の話をするにしても彼女もいないと。
ここに来てましたよね?」
「それがだね。」
八雲は困ったような顔でことの顛末を話した。
「はは! お嬢負けたのか!
そりゃあのプライドの塊みたいな存在だからな。
見下してた奴に負かされたら、その場にいられねぇーだろ
またトマトみたいに顔真っ赤にしたんだろうな。
ってか坊主お嬢に勝ったのか。こりゃ期待できるな。」
「あぁ、実質戦力としては
彼で事足りるだろう。なんせAランクギフト持ちだ。」
「A?最高でもCまでしか確認できてないってのに、Bを吹っ飛ばしてAですか。
そりゃすげーな。
期待してるぜ、坊主。」
そういって神宮寺さんは、剣也の肩に手を置いた。
大きく分厚い大人の手、軍人の手
「はい、任せてください!」
剣也は、いつの間にか計画を承諾してしまっていたのだが、その事実にすら気づかない。
何て自然な流れで、承諾させられたんだろう。
これが政治家。
迂闊な言葉を吐いたらすぐに言質を取られる。
そして作戦会議が始まった。
と言っても作戦はこうだ。
東北、今は長野県にいる魔獣を自衛隊が攻撃する。(ヘリなどからの銃撃)
その光景をテレビで映し、失敗したところで俺と静香の登場
少し苦戦してからの討伐
インタビューからの神の子の周知と自分たちの力不足を嘆く。
流れはシンプルであるが、それゆえに効果的だろう。
国内最高戦力の自衛隊が敗北した後にその相手を斃せるもの達が現れた。
そんな子達を放置することなど世間はできない。
一箇所に集めて管理する必要があることは自明だろう。
俺たちは、神の子にも、悪魔の子にもなるのだから。
「ところで魔獣はなんなんですか?
いままでの経験から大体見たことある敵ですよね。」
「あぁ、現れているのはボブゴブリン
よく聞くあのゴブリンの上位個体とみられる。
Cランクだよ。
クエストを受注したナンバーズは、討伐できずに、
昨日逃げてきて私のところに助けを求めてきた。
なのでクエストは継続中だ。」
ボブゴブリン
ゴブリンが大きくなっただけではあるが、肉弾では人間が勝てる相手ではないだろう。
だが俺なら攻撃を交わしながら簡単に刀で切れるはず。問題なさそうだ。
では作戦決行は1週間後8月22日の正午からだ。
君の避難所に昼には迎えを送るから待機しておいてくれ。
剣也は、ここで自分が作戦を承諾してしまったことに気づいた。
一瞬やられたとも思ったが、正直この国のためと言われれば断れなかったので、どちらにしても一緒だ。
あきらめたように、剣也は言う。
「わかりました。作戦に参加します。」
八雲はにっこりと笑い、わかってましたとでも言いそうな顔で答えた。
「やってくれるか。よかったよ。
それにね、剣也君。
これは君にとっていいことだらけでもあるんだ。」
「いいこと?」
いいこととは何だろう謝礼でもくれるのか?
お茶をすすりながら剣也は怪訝な顔で八雲に言葉を返す。
「まずインフルエンサーになればモテる。」
「ぶっ!」
すすったお茶はすべて空に消えた。
「そんな真面目な顔で冗談いわないでくださいよ。」
「いや、冗談なんかじゃないさ。
君はこの国の英雄になるんだよ。めちゃくちゃモテる。これは断言する。
しかし、君には大事な人がいるんだったか。モテるのは困るかね?」
「いやいや、モテたことないんでわからないですよ。
それに、俺は心に決めた人がいますんで。」
「君の命をこの世界につなぎとめてくれた子だね。同級生といっていたかな。
では、こうしよう!
その子も神の子学園の寮に入り給え。特別に許可しよう。
確か家が倒壊して、避難所生活なのだろう?
もし両家のご両親が許可するなら一緒の部屋に住んだってかまわないぞ?」
八雲は楽しそうに提案する。ちょっと楽しんでるな。こっちがこの人の素か。
「夏美も寮に入っていいんですか?」
「ああ、いいとも。そもそも日本全国から集めるんだ。
この災害で両親を亡くした子や、幼い兄弟などそういった子達も一緒に住めるように設計する予定だ。
だから君の恋人を家族枠で入れるぐらい私がかなえよう。どうだい?いい話だろう」
「そ、それは夏美の意見も聞いてみないとわかりませんから!」
剣也は、一瞬明るい未来を夢見たが、夏美の許可がなければ成り立たない。
だが、夏美を守るためにはそばにいてほしい。帰ったら夏美を説得しよう。そうしよう。
「夏美君というのか。
ふふ、少しやる気がでてきたようだね。
うらやましいよ。青春だね。」
いいように丸め込まれたように感じるが、正直この提案はありがたい。
夏美の家は、古い道場のため倒壊しているらしい。
しばらく話したことはないが、夏美の祖母はなにかの達人らしく、全国を巡っている。
今回の災害も関西へ出張していたためまだ帰ってきていない。
LINEが普通にきてるらしいから大丈夫らしいが相変わらず元気な婆さんだな。
「わかりました。夏美と相談してみます。」
「ああ、では当日は頼むよ。
細かい段取りはこちらで決めておくから、君は当日のゴブリン討伐に専念してくれ。
あぁそれと、静香くんの連絡先を教えておくから仲直りしておいてくれ。」
最後に爆弾ぶっ込んできた。
「いやいや、無理ですってあんな別れ方したのに。」
全部ぶん投げかよ。てっきり仲を取り持ってくれると思ってた。
「すまないね。おじさん達にはそういうのはわからないんだ。
二人とも年頃だし、あとは若いもんでね。」
見合いの席じゃねぇんだぞ。と剣也は心で悪態をつく。
「方法は君に一任する。好きにやりたまえ。」
やりたまえじゃねえ。それを丸投げって言うんだ。
いい感じの言葉使って誤魔化すな。
文句は色々でてくるが、押し付けるようにメールアドレスを教えられた。
気が重い。
とはいえ命を預ける仲間だ。
気は乗らないが、帰ったら連絡するか。
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