第8話 それでいいの?

「やっぱり奈々だなー」


と。准は続けて心の中で、


「奈々はいつも俺がいつも予想しないような事言ってくる。でも、それだけじゃない。テストの結果が悪かったり、良くないことが起こると、『少し運が悪かっただけ』っていつも奈々言ってたな。やっぱり奈々は奈々か...」


そう准は思った。


准は心のどこかで自分の知っている柊奈々子が変わってしまっていたらどうしよう。と思っていた。

だが、相変わらずの奈々子を感じた准は安心して気が抜けて、笑ってしまったのだ。


准は思ったことを口に出そうと思ったがやめた。

これは、自分の心の中に留めておいた方がいいと准は思った。


准は咳払いをして、話し始めた。


「とりあえず、君は事故に遭って俺との記憶を失くしてしまった。それは変えることが出来ない事実だ。記憶がない君に、無理に幼馴染として振る舞ってくれとは言わないし、君が俺と関わりたくないと思うなら、関わらない。君と俺の関係は、君が好きな様にしていいよ」


「でも...」


「それに、君は僕の命の恩人でもある。君が俺を突き飛ばさなかったら、俺が事故に遭って最悪の事態が起きていたかも知れない。今、生きていなかったかも知れない。だからそのお礼をしたい。全然足りないけど、君の願い事をなんでも聞くよ」


「そんな...急に言われても」


奈々子は俯きとても焦った顔をした。奈々子は思った。


「どうしよう、急に言われても...

でも、なんで私はこの人のこと助けたんだろう。幼馴染だから?本当にそれだけ?他にもある気がする。だけど何かわからない。

なんだろう…知りたい。記憶を失う前の気持ちを知りたい。記憶があるときは私どんな感じだったんだろ。

知りたい...知りたい...記憶を取り戻したい‼︎」


奈々子はそう思うと、俯きながら話し始めた。


「お願い事、なんでも聞いてくれるんですよね」


「え...うん。なんでも聞くよ」


准がそう言うと、奈々子は顔を上げて准の顔を真っ直ぐに見て


「私、記憶を取り戻したいんです。なので記憶取り戻すの、手伝ってもらえませんか」


「え...いいの?本当にそれで」


「はい。なんでも叶えてくれるって言いましたよね、いいましたよね!」


奈々子はそう言って准に迫った。すると准が


「喜んで手伝わせていただきます。でも、手伝うってことは俺と関わることになるけどいいの?」


と言うと、奈々子はにこやかに言った。


「はい。記憶を取り戻すのには絶対にあなたが必要なので」


准は、これからも奈々子と一緒にいれるのがとても嬉しかった。

それと同時に准は、まさか記憶を取り戻したいと言われると思っておらず、

「奈々子は相変わらず予想外なことを考えるな」

と思った、准だった。


すると、ドアから『コンコン』とノックの音が聞こえたので二人は、ドアの方を見ると奈々子の母親が入ってきた。


「話、終わった?」


と奈々子の母親が二人に聞くと、准と奈々子は、お互いの顔を見ると微笑みながら、再び奈々子の母親の方を見て、


「はい!」


と答えた。


その後、二人は奈々子の母親に、奈々子が記憶を取り戻すことを決意したことを伝えた。

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