第4話 もう我悲しいよ

「君本気でさぁ、我のこと気にならないの?」


なんとか最低限の支度を済ませて乗り込んだ山手線。

走って来た俺の横をずっと浮遊してきた神様(自称)が呆れ顔で尋ねる。


気になりますよ。この満員の山手線の車両の上方を飛んでいてパンツ見えないのかなぁとか、お金払わなくてもいいのかなぁとか。


満員電車の中で他の人には見えていないであろう神様(自称)と声を出してお話する勇気はないので、心のなかで返答する。


「ぱ、パンツは大丈夫だぞ……? 多分君にしか我の姿見えてないし。お金は……神様だし大丈夫。」


神様。その一言でこの世の中のすべてを乗り切れるのではないかという汎用性の高さ。

俺も今度から、相手からは仲いいと思われてるけど自分はあんま好みじゃない先輩の誘いを断る時に、宗教上の理由でって言うことにしよう。そうしよう。


「あの、神を変な方向に使わないでもらえます? そんなことをしてたら友達居なくなりますよ……。じゃなくてっ!! 我のことだよ我のこと!! あと、自称っていうのやめて!! わりかし真面目に傷つくから!!」


途中までいい感じに俺の会話についてきてくれた神様だが、途中で芸人魂を思い出したらしく、ツッコミを開始する。

この神様と一緒なら、M1優勝できる気がする。


神様の気になるところ……か。


気にならないといえば嘘になる。現に、今もこの状況がミリも理解できていないから。


仮に、あの木の像に宿っていた神様が崇められたおかげで具現化したものとしよう。

まずなんで布団に入っていたのか。次に目的はなにか。あとは……あとは、別にいいかな。


あっ、そういえば皆様に神様の見た目をお伝えしていなかったな。


神様は身長150未満くらいのロリ体型。けど、お胸はまぁまぁ、というかかなりある。ロリ巨乳というやつだ。

顔は神なだけあって人間離れして整っていて、髪の毛は透き通るような銀髪。


正直、見た目はすんげぇタイプ。どストライク通り越して内角低め。


「君さ、褒めてくれるのはいいけど、見た目はって何よ見た目って! 限定詞つけなくていいの!! あと、気になること少なくない? 神だよ? 我、神様だよ! まぁいいけど。なんで布団に入ってたかは、単純に降臨しようと思って降り立った場所が布団の中だったから。目的は、信者の増加とへのお返し。三代に渡って100年間も崇めてくれた君の一族には感謝しているから。」


あ、神様ここで降りますね。


僕は神様が作りかけていた感動的雰囲気をぶち壊す。

とりあえず、大学の二時間目には間に合いそうで良かった。


「君ねぇ、我神なんだよ? ねぇ、神様と話してるんだよ? 大学の授業とどっちが大事なの?」


そりゃ大学に決まってんでしょ。こちとら単位落としたら人生終わるんですよ!

何いってんすか、これで単位落として卒業できなくて就職できなかったら、神様責任取ってくださいね!!


「ご、ごめん……。」


俺が攻め立てれば神様は真面目に落ち込んで謝罪する。

ちょろいな。


「…………もう我悲しいよ」


神様の泣きそうな声を聞きながら、俺は大学へ早足で向かった。

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