第2話 女の子が起きた

と、とりあえず警察を……。


俺が枕元のテーブルに置いてある携帯を取ろうとしたその時。


「んっ……うぅ……ふぁぁ」


女の人が、そんな声とともに体を起こして部屋をキョロキョロと見回し始めたではないか。


こ、これはまずいのでは…………。


お、落ち着け俺。まだ焦るような時間じゃない。

ここからの展開で考えられるのは主に三つ。


一つ、この女の子が叫んで俺をぶん殴るパターン。ラブコメなんかでよく見るやつだな。主人公が可愛そうだからやめてあげてほしい。


二つ、この女の子が全部知っていて、事情を説明してくれるパターン。これもラブコメなんかでよく見る。俺としてはこうなることが理想だ。理不尽に殴られるのも通報されるのも御免ごめんだからな。


そして三つ目。この女の子が目を開けた瞬間。俺の内なるパワーが覚醒して、実はすごい一族の末裔だったことが分かり。ついでにこの少女とはライバル関係で、瞬間に殺し合いのバトルが始まるパターン。


厨ニ的には文句なしの展開だが、俺は残念ながらもう大学生。左手に包帯を巻いていたあの頃とは違うのだ。


よって最適解(俺にとっての)は二つ目なのだが、さぁどうなる。

俺の人生という名のラブコメは、どちらのルートをご所望か。


「んぅ……ふぁっ?」


一旦俺の部屋の全貌を見渡した女の子は、理解ができないと言ったような声を上げる。


あちゃぁ、マジか。一番のほうか。俺殴られちゃうやつか。

俺は覚悟を決めて歯を食いしばるが……。


「あぁっ!!」


女の子は拳を振り上げることはなく、なにか腑に落ちたような声を上げて立ち上がると。


「我の信奉者だなっ!!! この我直々に来てやったぞ!!!!」


腰に手を当てて下手くそなウィンクをしながら、元気いっぱいに言い放った。


…………はい?

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