―20― 勝てるはずがない……
冒険者たちの数は6名。
ティルミを含めて7名。
それだけの数で5体もいる
「「グガァアアアアアアアアアアアッッッ!!」」
「みんな、極力固まるようにして戦って」
「「おう!!」」
下手にバラバラになれば各個撃破されてしまう。それを避けるには、全員で固まることが大切だ。
「〈
炎系統、第四位階〈
〈
対して〈
圧縮された炎の固まりが
「グゴォオオオオッッ!!」
痛みに悶えた
とはいえ、これで倒せないことは承知している。
痛みに悶えながらも
「〈
結界をすぐさま張り、護衛する。
「助かったぜ、お嬢ちゃん」
冒険者の一人がそう言いながら、結界の外から剣を突き刺した。
ビュッ! と血飛沫が飛び散る。
それと同時に
とはいえ、まだ安心はできない。倒したのは一体のみ、
「ぐわぁあ!」
後ろから叫び声が聞こえた。
見ると剣士の一人が
「今、治しますね」
すぐさま、神官が駆け寄って治癒魔法を施す。
治癒魔法は治すのに時間がかかるため、復帰するまで待つ必要がある。
「〈
とはいえ、気にしている余裕はない。
襲いかかってきた
「よしっ、倒した……っ!」
また、一体
順調だ。
この調子が続けば勝てるかもしれない。
「ぐふっ」
呻き声が聞こえた。
見ると、
殴られた冒険者は後方へと吹き飛ばされ、木に激突する。
「今、治しに行きますね!」
神官が慌てて、倒れた冒険者のところに駆け寄ろうとする。
「駄目っ!!」
ティルミは慌てて制止させようとする。
神官が攻撃されないように戦列を組んでいた。けれど、今、神官は戦列から飛び出て、倒れた冒険者のところに駆け寄ろうとしている。
それを
まずいっ、神官が倒れてしまえば、回復職がいなくなる。そうなってしまえば、戦いを続けるのが困難になる。
「あぶねぇ!」
ティルミと同じことを考えていた冒険者がいたらしい。
一人の冒険者が神官をかばうように押し倒す。
「ち、血が……っ!!」
神官は無事だったが、神官をかばった冒険者はそうはいかなかったらしい。
背中から大量の血が溢れていた。
「今すぐ、その人を治してあげて!」
そう言いながら、ティルミは結界を張る。
「わかりました。〈
神官が治癒魔術を施したのを確認しつつ、周囲を見つつ、このままだとまずいな、とティルミは冷静に考えていた。
徐々に戦列が崩れてきている。
「お嬢ちゃん、一つ提案があるんだが?」
そう言って、一人の冒険者が話しかけてきた。
名は確か、ダダス。大剣を使って戦う冒険者だ。
冒険者のランクもBと、この中では最も実力がある持ち主。
そのダダスの提案ってことで、聞き入れる価値はあるだろうとティルミは瞬時に判断した。
「なにかしら?」
「俺が残り三体
「そんなことをしたら、あなたが無事で済まないわよ」
「いえ、違うんです。俺は一人のほうが実力が発揮できるんですよ。とはいえ、倒しきれるとは思わないので、回復が済み次第、助けてくれるとありがたんですが」
「わかったわ」
ティルミは即座に決断をくだす。
ダダスが勝算があってそう言ってあるであろうことは目をみればわかった。
「みんな、一旦引くわよ!」
ティルミはそう叫びつつ、ダダスを残して戦線を離脱するよう指示を出す。
「お前らの相手は俺だぁ!」
中には、離脱をしようとしている冒険者を狙う
そして、他の者たちが戦線を離脱したのを確認すると、ダダスは技を発動させた。
「〈バーサーカーモード〉」
強化魔術における、一つの技とされている。
思考能力を代償に魔力を増幅させて、全身の肉体を強化させるというもの。
そういうことか、とティルミは納得する。
〈バーサーカーモード〉は力を得る代わりに冷静さを失ってしまう。それは、敵味方関わらず攻撃してしまうほどに。
そうなった者のことをバーサーカーと呼ぶ。
だから、ダダスは他の味方を避難するよう指示を出したわけだ。
バーサーカーとなったダダスは三体の
むしろ、ダダスのほうが押しているように思えた。
「すげぇ……」
冒険者の一人がそう口にする。
確かに、すごかった。
縦横無尽に暴れるダダスに対して、
「私も治癒に参加するわ」
それからティルミと神官で手分けして、怪我を負っている冒険者たちの治癒にあたった。
そして、あらかた治癒が済むと、戦況に変化が訪れた。
「ここまでのようだ……」
ダダスがそう言葉を漏らす同時に、地面に倒れた。
死んだわけではなく、ただ気絶してしまったようだ。恐らく〈バーサーカーモード〉の代償だろう。
とはいえ、ダダスの活躍のおかげで、
その一体も瀕死に近い。
「みんな、行くわよ!!」
「「おう!!」」
ティルミは指示を飛ばす。
他の者たちもそれに応える。
これなら勝てる! そうティルミは確信した。
「〈
そして、とどめとばかりにティルミは最後の
「ウガァ!!」
途端、
「やったか!?」
誰かがそう口にする。
「うぉおおおおおおお!! やったぜぇえええええ!!」
冒険者の一人を両手をあげて喜ぶ。
他の冒険者たちもそれに倣う形で、皆喜び合っていた。
5体もいる
そのことにティルミは心の底から安堵する。
「遠くから見せていただきましたが、実にお見事でしたねぇ」
パチパチと拍手する音。
見ると、森の中から人影が現れた。
「てっきり、これだけの魔物を召喚すれば、倒せると思ったんですが」
それは、異形の姿をしていた。
「ま、魔族……が、どうしてここに?」
魔族。
魔神により生み出された異形。
唐突に現れては人類を無差別に侵略する、天災とでも称すべき存在。
それが現れた場所は焦土と化し、なにも残らないとされる。
そんな魔族がどうしてこんところに?
「さぁ、なぜでしょう?」
と言って、魔族はケタケタと笑う。
ここ数年、魔族の目撃情報はなかったはず。
だというのに、なぜこんな森の中で出会ってしまったのか。
「それじゃあ、出てきてください」
そう言って、魔族は幾重もの魔法陣を展開させた。
「ひとまず百体ほどいれば、足りますかねー」
魔法陣と共に現れたのはおびただしいほどの
「百体……?」
魔族の言葉が正しいというなら、ここに百体の
「そんなの勝てるはずがない……」
ティルミはそう言葉を漏らす。
絶滅的状況だった。
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