―109― 圧倒的
「戦士ゴルガノと聖騎士カナリアはそれなりに強いが問題なく倒せるのか?」
「私がいるのよ。キスカはなにも心配する必要はないわ」
そう言ったアゲハは余裕の笑みを浮かべていた。
まぁ、アゲハの実力が折り紙付きなのはさっき思い知らされたばかりだし、俺が心配する必要はないのだろう。
「裏切り者のお二人さん、みーつけた」
戦士ゴルガノと聖騎士カナリアを見つけたアゲハがそう口にする。
「あん? 誰だ、お前……?」
アゲハを見た戦士ゴルガノがそう口にする。
「それじゃあ、ノクはあっちの聖騎士カナリアをお願い。私は戦士ゴルガノを相手にするから」
「承知した」
「アゲハ、俺はどうしたらいい?」
「キスカは見ているだけでいいわ」
「あぁ、わかったよ」
正直、見ているだけなのは申し訳ない気もするが、この中で一番弱いのは俺だし、大人しく従ったほうがいいのだろう。
「私たちを無視して相談事とは、不愉快だな」
「おい、ノク。なんで、お前らはそいつらとつるんでいるんだ?」
戦士ゴルガノの質問に暗殺者ノクはただ黙っていた。
そのことに戦士ゴルガノは「ちっ」と大きく舌打ちする。
「私から説明してあげる。初めまして、勇者アゲハです」
そう言いながら、アゲハは〈アイテムボックス〉から大剣を取り出す。
「あん? 勇者だと?」
戦士ゴルガノが眉をひそめる。
「そう、あなたがたが封印した勇者。ほら、その証拠にここにあなたがたが仕立て上げた勇者エリギオンがいるでしょ。ようするに、あなたがたの計画はすべて破綻したってわけ。残念だったわね」
「ふざけるんな! そんなはずがないだろうッ!!」
聖騎士カナリアが激高する。
「あら、信じられないんだ。まぁ、いいわ。信じようが信じまいが、あなたがたの運命はどうせ変わらないんだし」
「どういう意味だ……?」
「あなたがたはここで死ぬってことよ」
「ふざけるなぁああああッ!!」
聖騎士カナリアは叫びながら、剣を片手に突撃する。
その表情には激しい剣幕があった。
次の瞬間、ビュンッ! と風を切る音が聞こえた。そう思った矢先、聖騎士カナリアから大量の血が飛び散る。
「あ……あぁ」
聖騎士カナリアが吐息をもらした途端、彼女はその場で崩れ落ちた。
「ノク、随分と仕事が早いわね。助かるわ」
確かに、聖騎士カナリアの近くには短剣を握ったノクの姿があった。
全く、彼の動きを察知することができなかった。
一瞬で聖騎士カナリアに接敵して斬り伏せたんだ。あまりにも人間離れした動きに俺は感嘆する。
「それで、あとはあなただけだけど、どうする?」
アゲハが戦士ゴルガノに対し、そう言う。
「いや……これはまいったね。まさか、旦那が俺たちの秘密を把握していたなんて考えもしなかった」
対して、ノクは口を開かない。
やっぱ、この人なにを考えているのかわからないな。
「無駄話はもういいや」
アゲハがそう言うと同時、剣を手にして、戦士ゴルガノに斬りかかる。
戦士ゴルガノも寄生鎌狂言回しを手にして対抗しようとする。
それから激しい戦闘が繰り広げられた。
けど、アゲハのほうが圧倒しているのは俺でもなんとなくわかる。
とどめは、暗殺者ノクによる攻撃だった。
暗殺者ノクはアゲハと戦士ゴルガノの戦いをずっと鑑賞していたが、戦士ゴルガノが一瞬怯んだ隙を見逃さなかった。
その瞬間、暗殺者ノクが一瞬で移動して、背後から戦士ゴルガノの胸に剣を突き刺した。
戦士ゴルガノが死んだのは明らかだった。
「ノク、ありがとう」
アゲハが素っ気なくお礼を言う。
あまりにも順調に進んでいるな。
あれだけ苦戦させれらた戦士ゴルガノと聖騎士カナリアが、あまりにもあっけなく倒されてしまったわけだ。
あと、懸念する敵といえば魔王ゾーガだけだが、アゲハと暗殺者ノクの二人が協力すれば、恐らく問題なく勝てるような気がする。
このまま無事に、なにもなければいいんだがな。
ふと、そんなことを俺は考えていた。
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