―26― 主人
「君かい、俺様の主人になりたいという者は……」
誰だ……?
「あぁ、俺様は傀儡回の本体とでもいうべき存在だ」
そう喋った者は、化物としか形容できない存在だった。闇の集合体とでも称すべきだろうか、その闇に目や口のパーツがバラバラについている。
「そうか、傀儡回の本体か。ここはどこだ?」
周囲の光景もまた、奇妙だった。
暗闇の中に、ゆらめく炎が点在している。そんな光景だろうか。
「ここは君の深層世界ってところかな」
「深層世界……」
俺の心の中って解釈で問題ないだろうか?
まぁ、ここがどこかなんて些細な問題だ。
それよりも――
「お前に頼みがある。俺に力を貸して欲しい」
今の俺は無力だ。
力が手に入るためなら、どんなやつの力でも手に入れるつもりだ。
「いいよ」
あまりにも、それはあっけないものだった。
「そんな簡単にいいのか?」
「おかしな返事だね。君から言い出したことだろ?」
「まぁ、それはそうだが」
てっきり断られると思っていただけに、どうしても疑りだしてしまう。
「いやね、君の魂からなんだかなつかしい匂いがするんだ。だから、君なら従ってもいいと思ったんだ」
「なつかしい匂いか……」
死に戻りしているとはいえ、俺自身は何度も傀儡回に乗っ取られている。だから、なつかしい匂いでもしたのだろうか。
「ともかく、よろしく。ご主人様」
その言葉と同時に、意識が覚醒する。
目を開けると、そこには吸血鬼ユーディートが椅子に座っていた。
「あら、まさか成功するとは思いませんでしたわね」
吸血鬼ユーディートは目を丸くしていた。
どうやら、成功するとは思われていなかったらしい。この人の命令に従っただけなんだけどな。
「まぁ、いいですわ。着いてきてくださいまし」
そう彼女はどこかに行こうとする。
「えっと、なにをするんですか?」
「言ったでしょう。テストに合格すれば、弟子にします、と。今からあなたを鍛えて差し上げますわ」
◆
「あなた、スキルはいくつ所持していますの?」
「1つです」
正確には、〈挑発〉と〈セーブ&リセット〉の2つだが、〈セーブ&リセット〉のほうは隠しておくべきだ。
「そのスキルが、なにか伺っても?」
「〈挑発〉です」
「随分と、心許ないですね」
「自覚はしています」
「それじゃあ、今からスキルを1つ、手に入れましょうか」
「え? そんなことできるんですか?」
「あら、わたくしをどなたとご存じ?」
「偉大たる吸血鬼ユーディート様です」
「それはそうですけど、このダンジョンには1000年近く住んでいますのよ。だったら、このダンジョンのことは全て頭に入っていますわ」
そう言って、彼女は自分の頭を差した。
「当然、スキルが手に入る宝箱の位置も全て把握していますわ」
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