―10― 検証
試行回数およそ340回目。
宝箱の前で俺は〈身体強化〉を選択する。
「「グォオオオオオオオオオオオオオッッッ!!」」
もう何度も聞いているせいか、脳裏にまでこびりついている。
まず、
最初は、決まってこの攻撃をする。
これはベストなタイミングで、しゃがめば攻撃をかわせる。
そのまま、前に転がって移動と同時に地面を強く蹴る。
スキル〈身体強化〉のおかげで、常人よりも少し高く飛ぶことができる。
すると、目の前に
そのまま、落下する勢いと共に、
「ガゥッ!」
と、蹴られた
一度、地面に着地して、左足を軸に右足を回転させる。
すると、
転倒した
すると、わずかにジャンプした
よしっ、20秒生き残れた。
と、心の中でガッツポーズ。
何回も戦っているおかげでだろう。ある程度、魔物の動きは読めるようになったので、それに合わせて動くことができるようになっていた。
次は
それに対し、俺は地面を蹴ってジャンプする。
よしっ、タイミングがばっちしだ。
そのまま、拳に力を入れてて、
ドガッ、と衝撃走る。
これは重い一撃を与えられたに違いない。
「あっ」
着地した瞬間、
そのまま、俺の体を壁へと放り投げる。
グシャ、と頭蓋骨が割れる音がした。
すでに俺は息絶えていた。
◆
何戦かしてわかったことがある。
〈体術〉と〈身体強化〉の違いについてだ。
まず、〈体術〉の説明はどうだったかというとこんな感じだ。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
スキル:体術Lv1
武器を持っていない場合、もしくはリーチの短い武器を持っている場合に、効果が発動。
体術の才能を得る。
身体能力の一部強化。
△△△△△△△△△△△△△△△
次に、〈身体強化〉の説明は並べてみる。
▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
スキル:身体強化Lv1
身体能力を全体的に強化する。
△△△△△△△△△△△△△△△
どちらにも身体能力を強化と書いてはあるが、こうして並べれば微妙に違いがあることがわかると思う。
その違いとは、〈体術〉の説明文には、身体能力の『一部』を強化と書いてあり、〈身体強化〉に関しては、そういった文言はない。
つまり、〈身体強化〉では、身体能力を満遍なく強化できるが、〈体術〉の身体能力の一部のみが強化されるってことなんだろう。
では、具体的に〈体術〉だと、なにが強化されるのか? ってことが気になるわけだが、何戦か戦うことである程度、把握することができた。
〈身体強化〉では、筋力、耐久力、敏捷、体力が強化されるのに対し、〈体術〉では、筋力と敏捷しか強化されない。
言い換えると、〈体術〉では耐久力と体力が強化されないってことだ。
おかげで、〈身体強化〉を選んで戦ってみると、〈体術〉のときは攻撃されたらすぐ意識が暗転するのに対し、〈身体強化〉だと攻撃されても数秒ほど意識があることが多かった。
まぁ、一撃で死ぬことには変わりはなかったんだけど。
さて、10体の
まず、耐久力は俺には必要ない。
少し耐久力があがったところで、どうせ一撃で死ぬことには変わらないだろうし。
体力と敏捷に関しては、悩みどころだ。
体力があればあるほど、戦うことのできる時間が伸びる。攻撃力の低い俺は倒すのに時間がかかるため、どうしたって長期戦を覚悟する必要がある。
敏捷もあったほうが、回避できる可能性が高くなるわけだから、あって損はないはずだ。
ただ、今の俺に一番必要なのが、筋力ってことに関しては一目瞭然だ。
〈加速〉を選択して戦ったとき、最も露呈した弱点は、攻撃力の低さだ。いくら攻撃しても、そもそもの攻撃力が低ければ
そう、考えたとき〈体術〉と〈身体強化〉、どっちのほうが筋力が増すのか?
筋力がより増えるほうを選択すべきなのは明瞭。
ただ、何戦か戦ってみた得た感触では、筋力に関して、この二つの間には大きな差はないように思えた。
だから、どっちを選んでも大きな違いはないように思える。
と、ここまで考察してきて、俺にはもう一つの選択があることに気づかされる。
「〈筋力強化〉ってのも、ありだよな」
宝箱の前にて、スキル一覧を見ながらそう呟く。
〈筋力強化〉はDランク。
正直、Dランクということで眼中になかったが、もし、このスキルが、〈体術〉や〈身体強化〉に比べて、筋力の強化の幅が大きいなら、選んでみる価値はあるのかもしれない。
そういうわけで、俺は〈筋力強化〉を選ぶことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます