第102話 ティターン戦だが、どんどん城がぶっ壊れて来たので魔王がキレたぞ
『ぬぐわはははははは!! 行くぞ行くぞ行くぞ行くぞ行くぞ!!』
手にした武器をめちゃくちゃに振り回しながら、ティターンが迫ってくる。
全然隙間がない。
巻き込まれたら即死確定の刃の嵐だな。
隙間がないなら正面から押し込むしかあるまい。
「ふんっ!」
俺は真っ向からこの乱撃を受け止めた。
盾の表面を激しく叩く音がする。
『何っ!! 俺の攻撃を止めただと!?』
「お前さん攻撃が重いな! 黒騎士以上だ」
『がはははは! 人間の身で俺に匹敵するあやつがおかしいのだ! しかし俺の攻撃はこんなものではないぞ! そおれ!』
武器が中心に集まり、同時に打撃を放ってきた。
これには俺もちょっとだけふっ飛ばされる。
「うおっ! ふっ飛ばされたのは初めてだ」
着地して、盾を構える俺。
これを見てティターンが笑った。
『お前も凄いな! 俺のこいつを食らって粉々にならんやつは初めてだ! この地に降り立って相手をしてきた人間どもは、俺が武器を使うまでもない連中ばかりでなあ』
「そうかそうか。お前さん、戦いを楽しむタイプだな? だがそいつが自然体なので隙というものがない」
『ああ、俺と同じような事するアスラめの話か! あれは体格を生かして別の道を探せば浮かぶ瀬もあっただろうな!』
冷静だなこいつは。
『無駄口はいい。まだまだ行くぞ!』
「よし来い!」
俺が突撃し、ティターンも突進し、城の大広間でぶつかり合う。
何度も何度も激突し、火花が飛び散り、打撃音が響き渡る。
仲間たちは攻撃するタイミングを見計らっているようである。
黒騎士でいい学びを得たな。
どうやら魔王城に詰めている最後の魔将たちは、とんでもなく強いようだ。
ティターンも例外ではない。
『がはははははははは! 凄い! 凄いぞお前! 俺の攻撃をここまで長く受け止め続けた者はいない! いや、魔王様以外にはあの黒騎士くらいだ! 意外といるな……』
「途中で冷静になってる」
『お前もまだそんな口を叩く余裕があるのか!』
「ガードするのは体だからな。俺の頭はお前さんをどう倒したらいいかを考えているところだ」
『結論は出たのか!』
「俺だけじゃ無理だな」
『がはははは!』
「だから搦め手で行くぞ。ウインド!」
「ああ」
俺の後ろから、ヒョコッとウインドが顔を出した。
こっそり忍び寄ってきていたのだ。
『ふん!! 魔力も感じぬ、武器も使えぬであろう! そんな者に何ができる!』
「俺は戦場を支配することができる」
ウインドが粉末をばら撒き、これに袋から取り出した別の粉末を混ぜ込んだ。
舞い上がった混合粉末は、今まさに猛烈な風を起こすティターンの乱舞に巻き込まれていく。
すると……徐々にティターンの動きが遅くなっていく。
『ぬおおっ! な、なんだこれはっ!! 武器が触れるものにへばりついて……扱いづらい!!』
「強力な粘着力を持つニカワソウの粉末を、神の試練場で見つけてきた石に混ぜ込んだ。お前のような強力な魔力を持つ相手に反応し、粘着力を増していく」
俺が特に問題なく動けているのは、俺に魔力が無いからのようだ。
これは、俺とウインドでなければ巻き込まれてしまう攻撃だな。
『しゃらくさい! 正々堂々と戦え!』
「これが俺の正々堂々だ。マイティ、頼むぞ!」
「おう! ふんっ!!」
俺は腹に力を込めて、鈍ったティターンの打撃を弾き返した。
『ウグワーッ!?』
今度はティターンが吹っ飛ぶ。
巨体だけに、吹っ飛んだ先も無事では済まない。
城の柱がへし折れ、上にあったものがガラガラと崩れ落ちてきた。
「ティターンの態勢が崩れた。ニカワソウの効果もここまでだろう。みんな、行けるぞ」
ウインドの言葉に応じて、エクセレンとジュウザが駆け出した。
「シャイニングカノンナックルー!!」
「カトン!!」
光を帯びてぶっ放されるカノンナックルに、炎が絡みついて凄いことになった。
さながら、ファイヤーシャイニングカノンナックルといったところか。
長いな。
『ウグワーッ!?』
今度はこれに殴り飛ばされて、ティターンが上の階まで行ってしまった。
あちこちで建材が破壊される音がする。
城がガタガタと揺れ始めたな。
崩れそうだ。
『おのれ調子にのりやがって!』
「あっ! ジュウザとの合体攻撃食らっても立ってますよ!」
「とんでもないタフさであるな」
『この程度で倒れていられるか! 今度は俺の番だぞ! この柱を喰らえ!!』
ティターンが手近な柱を引っこ抜き、俺たちに投げつけてきた。
とんでもない速度だ。
俺は割り込み、こいつを盾で受け止める。
柱は粉々になったが、これって城の支えの一つなんじゃないのか。
それが無くなったということは……。
ティターンの上にある天井が崩れ始めた。
『ああ、もう! 邪魔だ邪魔だ!』
瓦礫を振り払うティターン。
うーむ。
こいつとの戦いで、魔王城がどんどん壊れていっているな。
瓦礫はガードすればいいが、城が崩れると向こうも困ったりしないのか?
あの魔王のことだから大丈夫なんだろうか?
『お前ーっ!!』
大丈夫じゃなかった。
瓦礫に混じって、白いシャツの男がこめかみに青筋を浮かべて降ってきた。
そして一瞬で青いマントに甲冑の魔王に戻ると、ティターンを殴った。
『ウグワーッ!?』
『お前、魔王城壊れていってるだろうが! お前が中で戦うと言ったから何か考えがあるのかと思ったら、お前楽しいからそうやってるだけで何も考えて無いだろ!』
魔王激おこである。
『ウオアーッ! 私が作った魔王城が無残な姿にーっ!! 土台から組み上げるの面倒なのだぞ!! だから既存の城を使ったというのに!』
『魔王様! 俺と魔王様が組めばあいつらは終わりだぜ!』
『私とお前が組むとかそういう話をしてるんじゃない! 自分の世界だけで話を完結させるなお前!』
『ウグワー!!』
またティターンが殴り飛ばされた。
こりゃあ、魔王が冷静じゃないぞ。
「よーしみんな、一旦撤退だ撤退」
「はーい! じゃあどさくさに紛れて、シャイニングざーん!!」
輝くトマホークが投擲された。
魔王はこれにハッと気づくと、『せいっ!』と両手で白刃取りにする。
そのまま投げ返してきた。
「うわーっ、シャイニング斬だともう魔王には通じないですね!」
「あの黒騎士とティターンの親玉だからな。それに今回はもう油断してない。こっちも頑張らないと倒せないな!」
「そうですね!」
かくして俺たちは、壊れかけの魔王城から飛び出すのである。
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