第103話 ド派手大決戦だ

 ぶっ壊れた城が、二箇所ほど吹っ飛んだ。

 ティターンと魔王だろう。

 二人まとめてやって来るのか?


「まとめて相手にするのはなかなか厳しいぞマイティ」


「うむ、実際に強いからな。こちらの攻撃の手が足りない。あと一手あればいいんだが」


 俺は唸った。

 どちらか一体だけならやれる……いや、片方が魔王という時点で厳しいだろう。

 ではどうする? 相手を分断して戦うか?


「手が足りないようだなマイティ」


 そこに、俺のよく知る男の声がした。


「フェイク! 来ていたのか」


「ああ」


 俺の幼馴染であった戦士にして、Sランク冒険者のフェイクがそこにいた。


「あの多腕の巨人は俺がぶちのめされた相手だ。俺はあいつをぶっ倒すために剣の腕を磨いてきた。マイティ! 巨人と魔王、二つの攻撃をまとめて防げるか?」


「おう、任せろ!」


 ガードなら俺の専門だ。


『おああああああーっ!!』


 叫びながら飛び上がってくるティターン。

 足元の世界は一面、魔王が塗り替えた真っ青な空間になっていく。


『二人がかりは私の美学に反するが……ああいや、向こうの方が多い。セーフ。ノーカンノーカン』


 笑いながら魔王が近づいてくる。

 だがその笑い声、俺がティターンを真っ向から弾き返し『ぬぐおおーっ!?』地面に突き立てた盾で空間の書き換えを食い止めた瞬間、止まった。


『反則だろお前、それは~ッ!!』


 魔王が吠える。


『ティターン! やれ! やれやれやれ! 使い物にならん魔将連中の中で、最後に残ったのがお前だ! せっかく宇宙を渡り歩いて集めてきた魔将が、どいつもこいつも使い物にならなかったなんて思わせないでくれよ!』


『分かりましたぜーっ!! 死ねやおらあーっ!!』


 ティターンが俺に向かって襲いかかってくる。

 だが、俺の両脇を駆け抜けるのはジュウザとフェイク。


「フェイタルヒット!」


「ストレートスラッシュ!」


 打撃と斬撃が左右からティターンを撃つ。


『うおおーっ!? てめえっ、俺が蹴散らした戦士か! 腕を上げて来やがったな!? そして素手の男! なんだなんだなんだ! この星の人間はつええなあ!』


 押し込まれるティターン。


『だがっ!! 俺の方がつええ!!』


 その言葉と同時に、ティターンは力づくで二人を跳ね飛ばした。


「ぬおっ!? なんの、フウトン!」


 ジュウザが空中で風を纏い、姿勢を制御する。


「マイティ! 盾を出せ!」


「おう! 俺の盾を足場にしろ!」


 フェイクが盾に、並行に着地する。


「撃ち出せーっ!!」


「おうよ! 行け、フェイク!!」


 Sランク戦士が飛翔する。

 そのランクが伊達では無いことを見せてやろうじゃないか、フェイク。

 半笑いでそれを待ち受けるティターンだ。


 横合いから手出しして来ようとした魔王に、ディアボラが何か魔法をぶつけた。

 ウインドも爆発する何かを投げつけている。

 魔王が展開しかけた真っ青な世界は、カッサンドラが鞭で叩いて停止させたようだ。


『うわーっ! うざいなお前たち! 搦め手要員を増やして来たのか! 私はそういうの大嫌いだぞ!!』


『魔王様大丈夫ですかーっ!? おっと、俺はこいつらを……!』


「シャイニング……そうだ! シャイニングカノンナックル棍棒!!」


 俺の背中を駆け上がって、エクセレンがジャンプしていた。

 あの輝くトゲがついた棍棒をカノンナックルが握りしめ、ティターン目掛けて吹っ飛んでいく。


『うおわーっ!?』


 これはシャレにならないと判断したようで、ティターンが必死になってこれを回避した。

 当然、ジュウザとフェイクには対応できない。


「フェイタルヒット!!」


「ストームラッシュ!!」


 左右からの強力な連続攻撃がティターンに炸裂した。

 おお、どんどん押されていくな。


『くそっ、くそっ! 俺が人間などに……!! こうなれば取っておきのこの技を……』


「あ、カノンナックル戻ってきます」


『行きがけの駄賃である!』


 後ろからカノンナックルが、握りしめた棍棒ごとティターンをぶん殴っていった。


『ウグワーッ!?』


 カチーンっとエクセレンの左手に戻るカノンナックル。

 大ダメージで完全に体勢を崩したティターン。

 その首が、ジュウザのチョップとフェイクの剣でサンドされ……。


「おおおおおおっ!!」


「ああああああっ!!」


『ウ、ウ、ウグワーッ!!』


 首が飛んだ!

 魔将ティターン、粉砕!


『あっ、ティターンまでやられた!!』


 魔王は流石にショックだったようで呆然としている。


『まさか追加メンバーが強いとか、反則じゃないか』


「存在そのものが反則みたいなお前が何を言ってるんじゃ」


 冷静に突っ込むディアボラ。

 次々に魔法陣を書いては投入しているが、これらは魔王が展開する青い世界に阻まれている。

 あれなんなんだろうな。


「よーし、だが残りは魔王一人だ。押し込むぞー!!」


 とりあえずあの世界ごと防いでしまえば問題ないだろう。

 俺は盾を構えたまま走った。

 ぐんぐん魔王に迫る。


『こっちに来るな! ええい、私はお前が嫌いだ! 大嫌いだ! お前一人であらゆるバランスが崩れるんだ! この世界のバグめ!』


「前々からお前さんの言うことはさっぱり分からん! だが一つだけ分かるのは、お前さんがこの世界にとって最悪の敵だということだ!」


「そうですよ! ここで仕留めます!!」


 俺の背中にくっついてきたエクセレンが、ヒョコッと顔を出した。

 青い世界と盾がぶつかり合い、一瞬だけ拮抗する。

 だが、俺のガードの方が強い!


 音を立てて青い世界が砕け散った。


『私の領域が破壊された!』


「破壊した! ちなみにこっちのダメージはゼロだ!」


 ついに魔王と対面だ。

 ここで終わらせてやるとしよう!


 

 


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