第82話 個が物を言う戦場だぞ

 次々に共和国の指揮官を正気に戻していく。

 だが、一度勢いがついた軍隊というものは止まらない。


 ワーッと押し寄せて、連合が作ったバリケードと衝突している。

 わあわあと声が聞こえているが、あれは激しくやり合っているのだろう。


 やる気が無い連中でも、一度熱気みたいなものに炙られると、なんとなくその気になるものだ。

 こりゃあなかなか性質が悪いな。

 今回の作戦を指揮した魔将がいるとしたら、恐ろしく頭が切れるやつだぞ。今までのは大概おバカだったのに。


「いやはや、忙しい! とても被害は抑えきれぬぞ!」


「あたいの体は一つしかないから、戦場をくまなくなんて無理無理!!」


 カッサンドラがもう泣き言を口にしている。

 まあ気持ちは分からないでもない。


 広範囲攻撃系でもないと、この数の兵士は止まらないものな。

 それに、兵士たちを殺してしまってはこれはこれで問題になる。

 一人ひとりは仕事をサボりたい普通の人間だからだ。


 悪いのは魔将。

 だからそっちを叩くことに注力したいものである。


「わしの魔法陣じゃと、こやつらを全員正気に戻すのはちょっと難しいのじゃ! むしろそんな平和的な魔法はない」


 ディアボラもお手上げだ。

 こりゃあ困った。

 困った困ったとエクセレンを見る。


 横で、ウインドがポンと手を打った。


「秩序のトゲなのだろう? ならばそれを使ってみてはどうだろう。もしかすると、戦場に秩序をもたらしてくれるかも知れない」


「どうであろうな……」


 ジュウザが懐疑的だ。


「トゲだもんな」


 俺も頷く。


「トゲじゃからなあ」


 ディアボラが笑った。

 ウインドはわけが分からず、首を傾げている。


「まあいいじゃないかい! エクセレン、使っちまいな!」


「うん! 秩序のトゲ、いっきまーす!!」


 戦場の真っ只中、エクセレンが地面に向けて青いトゲを振り下ろした。

 すると……!


 戦場の四方八方を目掛けて、地面を走る亀裂。

 そこから溢れ出す青い光。


「な、なんだこれはー!!」


「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」「ウグワー!!」


 光を浴びた兵士たちが、のけぞりながら叫んだ。

 しばらく、戦場はウグワーに支配される。


 そしてすぐに後。

 みんなスンッと冷静な顔になっていた。


「よく考えたら俺は何をしているんだ」


「何か意味あるのかこれ?」


「冷静になってみると戦うなんてバカバカしい……」


 みんな武器をポイ捨てし、動くのをやめた。


「どういうことだ? みんな冷静になっちまったな。これがエクセレンの秩序のトゲの力なのか」


「みたいですねー。兵士の人たちの頭が冷えたみたいです」


 盛り上がっているところに冷水をぶっかけて正気に無理やり戻す。

 これが秩序のトゲの威力だったらしい。


 荒療治も良いところだと思うが、威力は絶大だ。

 なるほど、こりゃあ洗脳されてない人間を戦闘不能にするにはうってつけだな。


「あたいはこんなところで何をしていたんだい……。家に帰って寝よ……」


「いかん、カッサンドラまでスンッとなってしまっている」


「まだ神様がパーティー認定してなかったんですね! 神様ー!! カッサンドラはパーティーですよー!! 対象から外してー!!」


 エクセレンが空に向かって呼びかけると、すぐにカッサンドラがハッとした。


「あ、あたいは一体何を!? 今、頭の中がすごくクリアになって、同時に何もかもが無駄なので日常生活をきちんと丁寧にやって一生を過ごさなきゃって気持ちになったんだけど」


「とんだ秩序であるな」


「神もちょいちょい頭がおかしいのじゃ」


「君たちと行動するようになってから、神がどういう性格なのがよく分かってきた。かなりアバンギャルドな御仁なんだな」


 神の評判が下がっている。

 だが、特に神はそういうのを気にしていないらしい。


「神様は寛大ですからねー」


「うむ。世の中への解像度がちょっと曲がってる気がするが、寛大だというのは同感だな」


 すっかり静かになった戦場。

 あとはディアボラの狂気探知によって、ギャアギャアと暴れている隊長格を正気に戻していくだけとなった。


 一日がかりの仕事であったが、日暮れには兵士たちがぞろぞろと国に戻っていく光景を見ることができた。

 いや、いい仕事をした。


「ふいー! もう動けないよ! 戦場ってのは本来、あたいらみたいな個人でどうにかできるものじゃないんだ! なのにあんたらはなんなんだい。個人の力でどうにかしちまう!」


「俺はどうにかできないが」


「あんたはイケメンだから無罪だよ!」


 理不尽な理由でウインドが許された。

 確かに、ウインドを除くメンバーは、どれもが個人で戦場を支配したりできるな。


「大丈夫ですよ! カッサンドラもできるようになります!」


「いやいや、できるようになりたいって話じゃないからね!? っていうか、あたいもあんたらのメンバーにもう加えられてるのかい……?」


「はい。秩序のトゲの効果の範囲外になったんで、神様が認めたみたいです」


 神公認。

 これは強い。

 曲がりなりにも聖職者であるカッサンドラ。がっくりと肩を落とした。


「神様には逆らえないねえ……」


 こう見えても、敬虔な神の信者なのだった。


パーティー名『エクセレントマイティ』

ランク:A

構成員:六名


名前:エクセレン

職業:エクセレントファイター

Lv:39→41

HP:405→430

MP:300→321

技 :魔技ミサイルスピン クイックドロー バックスタブ パイルバンカーブロウ

エンタングルブロウ

魔法:マジックミサイル(中級):派生ドリルマジックミサイル(中級) ヒール(中級) ライト(中級)

覚醒:シャイニング棍棒4 グランド棍棒インパクト4 グレート棍棒スーンッ4 シャイニング斬 シャイニングアロー シャイニングボム シャイニングカノンナックル

武器:聖なる棍棒(第四段階) 星のショートソード 鋼のトマホーク

 ガイストサーベル 帝国の弓矢 魔王星の欠片 カノンナックル

 スタッフスリング+炸裂弾

防具:チェインメイルアーマー(上質) ドラゴニアンのウェポンラック



名前:マイティ

職業:タンク

Lv:87

HP:1250

MP:0

技 :ガード強化(特級) カバーガード(特級) エリアガード(特級)

   マジックガード(特級) マインドガード(特級) パリィ(特級)

   ガードムーブ(特級) ヘイトコントロール(特級) マッチング(中級)

   ベクトルガード(初級)

魔法:なし

覚醒:フェイタルガード ディザスターガード2

武器:なし

防具:熟練のプレートアーマー、??のビッグシールド、星のマント



名前:ジュウザ・オーンガワラ

職業:ニンジャ(オーンガワラ流アークニンジャ)

Lv:84(レベルアップ間近)

HP:680

MP:535

技 :クリティカルヒット(特級) デックスアーマークラス(特級) ラビットムーブ(特級) フェイタルヒット(中級)

   シュリケンスロー(特級) ハイド&シーク(特級)

魔法:カトン(特級) スイトン(特級) ドトン(特級)

覚醒:クリティカルヒット(極)

武器:投擲用ダガー、星のダガー

防具:なし



名前:ディアボラ

職業:アークメイジ

Lv:154

HP:490

MP:2600

技 :テレポート

魔法:(一部のみ記載)ヒーリングサークル ウォーブレス ステイシスサークル

 メテオフォール ライジングメテオ ボルカニックゲイザー 

 ツイスター メイルシュトローム ランドスライダー

 サンドプリズン コールクア

覚醒:魔法儀式行使

武器:儀式用ダガー

防具:魔将のローブ(サイズSS)、星の帽子



名前:ウインド

職業:アルケミスト・レンジャー

Lv:44→45

HP:269→278

MP:0

技 :調合

魔法:なし

覚醒:なし

武器:弓矢 ダガー 小型ハンマー くさび

防具:レザーアーマー

道具:採集道具 調合道具 ウインドの記録帳

 加工道具


名前:カッサンドラ

職業:エクソシスト

Lv:35

HP:195

MP:130

技 :ウィップスキル ホーリーアロー

魔法:ヒーリング ポイズンイレイザー リムーブカース

 ブレス ホーリーシャイン フォースナックル

覚醒:浄化

武器:聖なるウィップ 聖なるクロスボウ

防具:聖なる帽子 聖なるポンチョ

道具:聖印 聖書 女の七つ道具






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