第42話 占星術師曰く、国を本当に思うならば

「そなたらが勇者の一行か」


 玉座にあるのは、厳かな感じの男だ。

 恰幅が良く、星の模様のマントがよく似合っている。


 ライトダーク王国の王、ベテルギウ七世だ。


「ええ、そうです」


 俺たちは礼儀として、片膝を突いている。

 あちこちで作法は違うもんだが、片膝はやっとけばどこでも間違いない……と聞いたことがある。


 周りの家臣連中は、「ほお、一応は礼儀ができている」「この間の勇者とはまた違うな」などと言っている。

 俺たちの前に来たという勇者は、随分評判が悪かったのではないか。


「では、まず」


 ベテルギウ王が口を開く。


「勇者たる証を見せよ」


 周囲の目線が、好奇一色に染まった気がした。

 なるほど、普通なら、これは難しい質問だよな。

 勇者の証なんて、それっぽい紋章だとか、それっぽい装備だとかそういうもので見せるしか無い。


 俺たちの前に来た勇者がペテン師だとか言われてたのは、こいつらを納得させられるだけのものを見せられなかったのかも知れないな。


「陛下、酷なお話ですよ。勇者の証など、そう簡単に見せられるものではありませんから」


 星のローブの男が、助け舟っぽいのを出してきた。


「だが、占星術師よ。こうして問わねば、勇者を名乗る者が本当の勇士なのか、それとも名を騙って一稼ぎしたいだけの山師なのかが分からぬであろう」


「御意」


 星のローブの男は、俺たちに視線を戻す。

 俺、ジュウザ、ディアボラ、そしてエクセレンを順に見たようだが、特に何も感じなかったようだな。


 謁見の間に入ってきた時、この男と目が合ってなんとなく妙な感覚になったんだが、あれは何だったんだろうな。

 一応気にしておくことにしよう。


「マイティ、マイティ」


「おう、なんだエクセレン」


「ボク、勇者の証持ってますけど出しちゃっていいんですか?」


「証? ああ、あれか! いいぞいいぞ。出しちまえ」


「よし、やりますよ!」


 エクセレンが突然立ち上がったで、ざわざわしていた家臣団が一瞬静まり返った。


「勇者の証は、ありまあす!」


 エクセレンが元気に発言したので、誰もが目を丸くしたのが分かる。

 ちょっとしてから、あちこちからクスクス笑いが漏れてきた。


「一体どんな証が出てくるやら」


「手製の紋章? それともできの悪い先祖伝来の剣?」


「また笑わせてもらうとしましょうや」


 最初から笑い飛ばす態勢である。

 だがなあ。

 エクセレンのあれは本物なのだ。


「よし、見せてみよ」


 ベテルギウ王はちょっと楽しげな目をしてエクセレンを見つめている。

 我らがパーティーの勇者は、にっこり笑って頷いた。


 腰に装備していた棍棒を取り出す。


「棍棒!?」


 家臣団がざわついた。

 まさか棍棒だとは思っていなかったのだろう。


 失笑が漏れる……のだが、一瞬でその笑いが静まり返った。


 棍棒から、神々しい輝きのトゲが高らかに上がっていたのである。

 輝くトゲ付き棍棒。

 

 白く眩い光を放つこれが、ただの魔法の輝きでないことは誰にでも分かるだろう。

 俺にだって分かるんだ。


「そ……それは……! その輝きは……!!」


 国王が玉座から身を乗り出した。


「真か! 真に、そなたは勇者なのか……!!」


「はい! 神様から任されました! あと、このトゲは一本目なんで、あと五本集めないといけないです」


「そうか、そうか! おい大神官! 大神官よ!」


「はっ、こちらに!」


 家臣団の中から、白髪白髯の老人が出てきた。


「検分せよ!」


「ははっ!」


 大神官の老人が近寄ってきて、エクセレンの棍棒をぺたぺた触る。

 トゲを突いて、「いてっ」とか声をあげた。


「こ……この光、わしですら容易には触れられぬほどの聖なる力を放っております……!!」


 おおーっとどよめく謁見の間。


「まさか本物とは……」


「本物の勇者は、年若い娘だったのか……」


「なんと凸凹な勇者パーティーなんだ」


「静まれ! 静まれい!」


 ざわつく家臣団を、国王の脇にいた騎士団長みたいな男が黙らせた。

 静かになったのを確認した後、ベテルギウ王が笑った。


「まさか本物が、こうも早く訪れるとはな! 星見の国、ライトダークはそなたらを歓迎しよう、勇者一行よ! 光を見極めることについては、我が国は随一。その神々しき光を見誤ることはない。そして勇者よ、そなたらはどこを目指し、旅をしているのか? 我が国に立ち寄った理由は?」


「あー、えーと」


 エクセレンがしどろもどろになった。

 こういうの苦手だもんな。


「そいつは俺が担当しましょう。俺らは王国で、空から落ちてきた赤い星をぶっ壊したんですが」


「なんと!!」


 星のローブの男、占星術師が驚きの声をあげた。


「ああ、いや、気にせず続けてくだされ」


「おう。その星を壊して国を守ったんだが、そうしたら星を落としたのが俺たちだって王国に疑われたんですよ。そんな事を言われて拘束されたら、魔王と戦えないでしょう。だから国を出たんです」


「なるほど、明快だ。隣の王国もバカなことをしたものだな」


 鼻を鳴らす国王。


「星見の国は、そなたらを快く迎えよう。ようこそ、勇者一行よ。幾つか仕事を頼むことになるとは思うが、そなたらが旅立つまでの間、我らは歓待を約束しよう」


 よこで頷く占星術師。


「いかにも。全てはこの国を思えばこそ。期待しておりますぞ、勇者御一行」


 彼の顔はとてもにこやかに見えたのだが。


「油断せぬことだマイティ。あの占星術師、殺気を感じる」


 ジュウザの一言に頷く俺なのだった。



パーティー名『エクセレントマイティ』

ランク:A

構成員:四名


名前:エクセレン

職業:エクセレントファイター

Lv:30

HP:300

MP:222

技 :魔技ミサイルスピン クイックドロー バックスタブ パイルバンカーブロウ

エンタングルブロウ

魔法:マジックミサイル(中級):派生ドリルマジックミサイル(中級) ヒール(中級) ライト(中級)

覚醒:シャイニング棍棒 シャイニング斬 シャイニングアロー

武器:聖なる棍棒(第一段階) 鋼のショートソード 鋼のトマホーク ハルバード

 ガイストサーベル 帝国の弓矢 魔王星の欠片

防具:チェインメイルアーマー(上質)



名前:マイティ

職業:タンク

Lv:86(レベルアップ間近)

HP:1200

MP:0

技 :ガード強化(特級) カバーガード(特級) エリアガード(特級)

   マジックガード(特級) マインドガード(特級) パリィ(特級)

   ガードムーブ(特級) ヘイトコントロール(特級) マッチング(中級)

魔法:なし

覚醒:フェイタルガード ディザスターガード

武器:なし

防具:熟練のプレートアーマー、??のビッグシールド



名前:ジュウザ・オーンガワラ

職業:ニンジャ(オーンガワラ流アークニンジャ)

Lv:83(レベルアップ間近)

HP:655

MP:520

技 :クリティカルヒット(特級) デックスアーマークラス(特級) ラビットムーブ(特級)

   シュリケンスロー(特級) ハイド&シーク(特級)

魔法:カトン(特級) スイトン(特級) ドトン(特級)

覚醒:クリティカルヒット(極)

武器:投擲用ダガー

防具:なし



名前:ディアボラ

職業:アークメイジ

Lv:154

HP:490

MP:2600

技 :テレポート

魔法:(一部のみ記載)ヒーリングサークル ウォーブレス ステイシスサークル

 メテオフォール ライジングメテオ ボルカニックゲイザー 

 ツイスター メイルシュトローム

覚醒:魔法儀式行使

武器:儀式用ダガー

防具:魔将のローブ(サイズSS)


 

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