第22話 公爵公認、勇者誕生!

 騒動が収まって、貴族や商人たちが恐る恐るという感じで顔を上げた。

 テーブルの下に隠れていたり、俺の後ろに集まったりしていたな。


 俺は極めて広範囲を一度にガードすることもできるので、彼らをまとめて守っていたのだ。

 お陰で、死者は一人もいない。

 怪我をしている者はいるが、ジュウザが素早くモンスターたちをぶっ飛ばしたので、大事には至っていないな。良いことだ。


「お姉さまが……モンスターに……」


 アンジェラが呆然としている。

 彼女の肩を、ボーハイム氏が抱いた。


「魔王と言っていた。千年前に現れたという魔王が再び現れるのだろう。彼女は魔王にそそのかされたんだ」


「あっ! 海でもガイスト船長っていう人が魔王から力をもらったって言ってましたよ!」


 エクセレンが元気に発言したので、周囲の注目が集まった。


「あのキャプテンガイストが……!?」


「そう言えば処刑台から消えたという話だったな!」


「幽霊船騒動はもしや、キャプテンガイストが……?」


「それよりこの子だ! あのモンスターみたいになったデモネア嬢を倒していたぞ!」


「それに横の男もすごかった!」


「この騎士殿は我々をずっと守ってくれていた!」


 おお、俺やジュウザも注目されているな。

 ここはきちんと自己紹介しておかねばなるまい。

 こういう地道な営業活動が、後に繋がるものだからな。


「俺たちはエクセレントマイティ。冒険者だ。だが、その目的は魔王を倒すことなのだ」


「おおーっ!!」


 俺の宣言に、会場がどよめいた。


「そしてあのモンスター女を倒したのがこのエクセレン。彼女は神から啓示みたいなのを受けて旅立った勇者なのだ」


「おおーっ!!」


 俺の解説に、会場がどよめいた。

 なんか感慨深いな。


「マイティ! 魔王とか勇者とか言っても誰も胡散臭そうな顔してないですよ! 感動です!!」


 エクセレンがうるうるしている。


「うむ、目の前で実物を見せたからな。これは信じないわけにいかないだろ」


「もしや……魔王によってモンスター化していたのか、キャプテンガイストも? それを倒したのが……」


「そう。エクセレンだ。俺はお手伝いした」


 ボーハイム氏の質問に答えたら、周囲が「おおーっ!!」とどよめいた。


「なるほど……。お主らはただの冒険者ではなかったのだな。この世界を襲う、強大な敵と戦う者たちだったのか。拙者をそこに加えても良かったのか?」


「何を言うんだジュウザ。お前さんは凄かったじゃないか。その凄さをエクセレントマイティで存分に発揮してくれ!」


「ありがたい……!! 拙者もクリティカルヒットの技を存分に振るえる! そしてまだ、拙者は未熟だということも分かった。あのモンスターの女に、拙者のクリティカルは通用しなかったからな。それ以外の技も磨き上げていく必要があるのだと理解した。徒手空拳ではいかん。拙者は凹んでいるようなムーブをして、その実、拙者の凄さは世界に理解されないが拙者は無敵なのだという傲慢をかましていたのだ……」


「謙虚だなあ」


「お主らを前にすれば謙虚にもなる。修行せねば」


「それは俺も同じだ。俺も頑張ってもっとガードできるようにならんとな!」


「ボクもがんばります!」


 俺たち三人がそう決意し合うと、会場からわーっと拍手が起こった。


「勇者一行!」


「勇者一行ばんざい!」


「わしは勇者一行を支援するぞ!」


 大事になってきた!

 そしてその場は、舞踏会から勇者を称える会みたいになった。

 公爵家から魔王の手下が出てしまった件については、うやむやである。


 そして朝になり、俺たちエクセレントマイティの三人は朝食に呼ばれた。

 公爵と公爵夫人とアンジェラとボーハイム氏がいる。


「リューダー公爵家は、君たちを全面的にサポートすることにした」


 公爵がそう告げる。


「魔王について、公爵家の情報網を使って調べておこう。君たちは冒険者として活動しながら、激化するモンスターの脅威から人々を守ってくれ」


「分かりました!!」


 何か色々やってくれるらしい。

 ありがたい。

 それはそれとして冒険者を続けてもいいというのもありがたい。


「我々は君たちのサポートだ。そういうことだ。よろしくな……。装備などはこちらで、紋章付きのものを差し上げよう。これを装備して戦ってくれると嬉しい」


 装備類が台車の乗せられて、ガラガラとやって来た。

 ほう、肩アーマーやら武器やら投擲用ダガーやらだ。

 どれにも丁寧に、リューダー家の紋章が刻まれている。


「頼むぞ」


 公爵が何か言いたげだ。

 だが、口に出してもらわなければ分からない。


 俺もエクセレンも、不思議そうな顔をしたのである。


「心得た」


 ここは空気を読んでジュウザが応じる。

 彼は商人の護衛の仕事を円満に終え、我がパーティに加わった。


「マイティ、これはな。彼らが我々の援護につくことで、家から魔王の手下が出たという事実を薄め、勇者のパートナーなのだとアピールし、さらには次の王選で優位に断つための三得を成す策なのだ。さすがは王国最高位の貴族。抜かりはないな」


 ジュウザの囁きで、俺は驚愕した。

 あー、うん、分かった。完全に理解した。


「よく分かった。じゃあ肩アーマーを装備して宣伝することにするぞ。次の王選で王が出るといいな!」


 公爵と公爵夫人の顔が引きつった。

 ボーハイム氏とアンジェラが苦笑する。


「表裏が無い方なのでしょう。あまり難しいことは気にされず、公爵家からの支援だと思って使って下さい」


「はいっ!! これでパワーアップですね!!」


 エクセレンは満面の笑み。

 既に武器の物色を始めているのだった。

 これでゴブリン装備から一気にランクアップだな!


パーティー名『エクセレントマイティ』

ランク:C+

構成員:三名


名前:エクセレン

職業:エクセレントファイター

Lv:24

HP:248

MP:161

技 :魔技ミサイルスピン クイックドロー バックスタブ パイルバンカーブロウ

エンタングルブロウ

魔法:マジックミサイル(中級):派生ドリルマジックミサイル(中級) ヒール(下級) ライト(下級)

覚醒:シャイニング棍棒 シャイニング斬

武器:鋼のショートソード 鋼のトマホーク 鋼の棍棒(覚醒) ハルバード

 ガイストサーベル

防具:チェインメイルアーマー(上質)



名前:マイティ

職業:タンク

Lv:86

HP:1200

MP:0

技 :ガード強化(特級) カバーガード(特級) エリアガード(特級)

   マジックガード(特級) マインドガード(特級) パリィ(特級)

   ガードムーブ(特級) ヘイトコントロール(特級) マッチング(初級)

魔法:なし

覚醒:フェイタルガード

武器:なし

防具:熟練のプレートアーマー、熟練のビッグシールド



名前:ジュウザ・オーンガワラ

職業:ニンジャ(オーンガワラ流アークニンジャ)

Lv:83

HP:655

MP:520

技 :クリティカルヒット(特級) デックスアーマークラス(特級) ラビットムーブ(特級)

   シュリケンスロー(特級) ハイド&シーク(特級)

魔法:カトン(特級) スイトン(特級) ドトン(特級)

覚醒:クリティカルヒット(極)

武器:投擲用ダガー

防具:なし

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