第21話 勇者とタンクとニンジャの共同戦線
「キエエエエエッ!! 拙者は今! 解き放たれた!! 磨き抜き、必殺の域に達した我が技を見よ!!」
ジュウザがハッスルしてるな。
空から降りてきた女が、次々にモンスターを召喚してくるが、片っ端から首を撥ねていく。
首を撥ねられたモンスターは、その瞬間に絶命するらしくて消滅していく。
これはすごい光景だ。
「ひょえー!! すっごいですねえマイティ! なんでしょうあれ!」
「ニンジャのクリティカルヒットってやつだな。だけど、伝説のスキルだぜ? 使えるやつなんかこの大陸にはいなかったはずだ」
そもそも、ニンジャになるためには、シーフとして鍛え上げた後、アサシンにクラスチェンジし、さらに鍛え抜いた後にクラスチェンジする必要がある。
しかも、アサシンもニンジャも、生まれ持った才能がないとクラスチェンジできないそうじゃないか。
フェイクブレイバーズにいたローグは、残念ながらその才能はなかった。
だがあいつはシーフとして極限まで己を磨き上げ、Sランク冒険者になったのだ。
俺はちょっとあいつを尊敬している。
そんなローグが到達できなかった高みにいる男が、目の前に立っている。
ワイシャツにスラックス、革の靴を履き、頭にはニンジャらしい頭巾。
当然のように徒手空拳。
クリティカルヒットを得たニンジャは、一切の武器が不要になるという。
さらに、強力なニンジャほど鎧を必要としなくなるという。
目の前の男は、攻撃と防御、その両方において頂点に達した存在に違いない。
コイツは凄いなあ。
俺がイメトレで練習していた、致命的な一撃をガードするスキルを身に着けていなかったら危ないところだった。
「うわーっ、ボクも戦いたいです! こう! こう!」
「俺の後ろで拳をシュッシュッと振るのはやめよう。他の守ってる人に当たるから」
「そうでした! だけど、ボクだといっぺんにたくさんの敵を相手にできないですもんね」
「お前さんはなんというか、一対一特化みたいなところがあるからな。適材適所だ。というか、極まったニンジャがいればそれも一人で片付いちまうんじゃないか?」
俺がちょっと心配になったのはそこだ。
全部ジュウザが一人でやれるなら、それはそれで結構なのだが、エクセレンを育成していく意味で考えるとよろしくない。
「最後はお前でござる!!」
『は!? はぁ!? なんですの、なんですのお前は!! わたくしの邪魔をしますの!? 一体なんなんですのーっ!!』
「問答無用! キエエエエエッ!!」
跳び上がるジュウザ。
ありゃあ、人間の跳躍能力を超えてるな。これがニンジャか。
彼の手刀が唸りをあげ、翼の生えた女の首筋を凄まじい速度で薙ぐ。
だが、それはそこで止まってしまった。
クリティカルヒットが決まらない?
もしかしてあのモンスター、クリティカルヒット耐性を持っているのか?
「どうしたんでしょうマイティ」
「どうやらボスモンスターはクリティカルが効かないらしいな。こりゃあ、ニンジャでは相手が悪いぞ」
『子供だましですわね!』
「ば……馬鹿な!! オーンガワラ一族が継承してきた最強の技が通じない……!?」
『おどき!』
「ウグワーッ!!」
おっと、ジュウザがふっ飛ばされた。
全部あいつでいいんじゃないかな、なんて思ってた俺の怠慢である。
これは反省せねばな。
「ふんっ!!」
俺はジュウザの落下地点目掛けて走った。
盾を構えながらの突撃で、再びモンスター女が召喚した小型モンスターを跳ね飛ばしながら前進である。
「キャッチだ!」
「くうっ、か、かたじけない!! 恐ろしい相手でござる! クリティカルヒットが通じぬ……!!」
「世界は広い。そういうモンスターもいるだろう。だから、一人で何でもやるってのは無理なんだろうな」
「どうする、マイティ」
「なに、強力な個人モンスター相手なら、俺の相棒が大得意だ」
「はい! ボクの出番ですよ!!」
エクセレンがドレスの裾を持ち上げながらトテトテ走ってきたので、ジュウザは目を丸くした。
「しょ……正気か、お主」
「ボスモンスター退治の専門家だぞ、あの娘は。行け、エクセレン!」
「はーいっ!!」
エクセレンが眼下に飛び出してきたので、モンスター女も驚いたらしい。
『今度はなんですの!? 舞踏会でも続けるつもりですの!? 馬鹿な娘! ここで死になさい!』
モンスター女の指先から、黒い稲妻みたいなものが放たれた。
「ふんっ!! ガードだ!!」
こいつは俺のガードムーブで防ぐ。
「マイティ、ちょっと相手が高いところにいます! ボクだと届かせるの大変かも……」
「……本当にお主があの化け物を相手するのだな?」
「? ボクは勇者ですから! だから戦います!」
「勇者!? 千年前の魔将ヴォーパルバニーも、勇者なる者によって仕留められたと聞く。お主がその系譜を継ぐものなのか……!? ならば……!!」
ジュウザが飛び出す。
そして、エクセレンを抱きかかえた。
「ひゃっ」
「拙者がお主を飛ばす!! お主は己の一撃を届かせることだけを考えよ!」
「は、はいっ! いっくぞー!!」
跳躍するジュウザ。
その頂点で、エクセレンを高らかに投げ上げた。
モンスター女の視線と、エクセレンの目が同じ位置に来る。
『なんと無茶苦茶な……!! だが、身動きのできない空中で……』
「マジックミサーイル!!」
エクセレンの腕が、後方にマジックミサイルを放った。
その勢いで、彼女の体が急速に前進する。
「ドリルミサイル!!」
なんとドレスのスカートを破って、エクセレンの足から回転する魔法の矢が放たれた。
『馬鹿な!?』
これを咄嗟に弾き飛ばすモンスター女。
やつの両腕がふさがった。
その目の前に出現するのは、太ももに装備されていたガイストサーベルだ。
固定していた紐が千切れ、モンスター女目掛けて回転するサーベル。
それが、ピカピカと光り輝いている。
「シャーイニングッざぁぁぁぁぁんっ!!」
叫びながら、エクセレンがサーベルを蹴りつけた。
『な、なんだこれは……ウグワーッ!?』
輝く回転サーベルが、モンスター女を真っ向から両断する!
おお、棍棒の時と威力が段違いだな!
やっぱり特別な武器なら、効果が大きくなるんだな。
『ち、違う!! わたくしはこんなところで、いきなり終わるはずでは……! ここからわたくしの……わたくしが王国に復讐を遂げる物語が……!! それが、始まった瞬間に終わってしまうなんて……!! いや! こんなのいやあああああ! 三流詩人の書く物語よりひどいわああああああ!!』
「お姉さま……!!」
アンジェラがなんか言っている。
もしかして、アンジェラの姉ってあれが?
モンスターになってしまったんだなあ。
キャプテンガイストと同じだな。
最近、モンスターになる人が増えているのかねえ。
全身が霧のようになって消滅していくモンスター女を見ながら、俺は唸った。
「ただでさえ魔王で大変になりそうなのだから、人間同士で仲違いしている場合じゃないだろうが……っと!」
落ちてくるエクセレンを、俺は駆け寄って受け止めた。
「やりました!」
「やったな!」
「凄まじきものだ……!! 拙者はまだまだ修行が足りぬ……!!」
「ところでマイティ、この人だれですか?」
「うちの新しいメンバー、ジュウザだ。これで三人パーティーだから、Aランクまで上がれるぞ!」
「ええっ、ほんとですか!? すごい!! よろしくお願いしますジュウザ!」
「こちらこそよろしく頼むぞ、勇者殿!!」
パーティー名『エクセレントマイティ』
ランク:C+
構成員:三名
名前:エクセレン
職業:エクセレントファイター
Lv:19→24
HP:248
MP:161
技 :魔技ミサイルスピン クイックドロー バックスタブ パイルバンカーブロウ
エンタングルブロウ
魔法:マジックミサイル(中級):派生ドリルマジックミサイル(中級) ヒール(下級) ライト(下級)
覚醒:シャイニング棍棒 シャイニング斬
武器:鉄のナイフ 鉄のトマホーク トゲ付き棍棒(覚醒) ミノタウロスアックス
ガイストサーベル
防具:チェインメイルアーマー
名前:マイティ
職業:タンク
Lv:86
HP:1200
MP:0
技 :ガード強化(特級) カバーガード(特級) エリアガード(特級)
マジックガード(特級) マインドガード(特級) パリィ(特級)
ガードムーブ(特級) ヘイトコントロール(特級) マッチング(初級)
魔法:なし
覚醒:フェイタルガード
武器:なし
防具:熟練のプレートアーマー、熟練のビッグシールド
名前:ジュウザ・オーンガワラ
職業:ニンジャ(オーンガワラ流アークニンジャ)
Lv:83
HP:655
MP:520
技 :クリティカルヒット(特級) デックスアーマークラス(特級) ラビットムーブ(特級)
シュリケンスロー(特級) ハイド&シーク(特級)
魔法:カトン(特級) スイトン(特級) ドトン(特級)
覚醒:クリティカルヒット(極)
武器:なし
防具:なし
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