第23話 落ちた冒険者とのし上がる冒険者

 王都に帰還して来た。

 エクセレンはすっかりアンジェラと仲良くなっており、最後は握手してひしっと抱き合ったりしている。

 公爵がこれを見てうんうん頷いていたわけだな。


「あれは後々、この人間関係を利用する気であろうな。マイティ、ゆめゆめ、政治的な介入には気を配っているがいい。貴族どもは老獪ゆえな。あれらは政治という戦場に蠢くモンスターぞ」


「なんか恐ろしい陰謀があるかもってことだな。分かったぞ」


 ジュウザが現実的なアドバイスをしてくれるから助かるな。

 俺はガードすることしか能がないからなあ。


「戻った」


 冒険者ギルドに、報告のために立ち寄る。

 というのも、選王候の一角であるリューダー公爵家からの依頼ということで、ギルドが報告を求めてきたからだ。


「お帰りなさい! どうでした? あ、ランクですけど、公爵家からの口利きがあってですね。一人増えたんですか? それは良かった! 無理なくランクアップできますね!」


 ギルドの受付をしているハーフエルフのお嬢さんがまくしたてる。

 眼鏡の奥の目がキラキラしており、大変興奮しているのが分かる。


 なんだなんだ。


「ふむ、これが冒険者ギルドか」


 ジュウザがギルドの中を見回す。

 冒険者たちは俺たちに注目している。


 そいつらのうち、シーフ職や腕の立つファイターであろう連中が、一斉に目を見開いた。

 なんだなんだ?

 まるでジュウザを恐れているようだな。


「……マイティほどの男がいたとは思えぬレベルだな。明らかにレベルが違う」


 おう、凄いやつばかりだからなあ。

 俺はうんうん頷きながら、受付係に報告をする。


「あのですね! ボクがアンジェラと仲良くなってですね!」


「えっ、公爵令嬢と!? すごい!!」


 ハーフエルフのお嬢さんが鼻息を荒くした。

 報告は近くにいた速記係が書き留め、ギルドのお偉いさんの目に触れることになるそうだ。


 冒険者ギルドというのは、国家ごとに存在する組織だが、国家間を移動した冒険者が再登録することはかなり簡単だ。

 ジュウザはこっちで活動することになるから、きちんと登録しないとな。


「はい、ジュウザ・オーンガワラさん、ニンジャですね。ランクは……S!? えっ、S!? 超レアなクラスなのに、さらにランクまで最高位……」


 俺はタンクのAランクだ。

 タンクは評価基準があまりないらしく、俺のAというのも一応は破格の評価らしい。

 まあ、フェイクブレイバーズの面々に引っ張り上げてもらったようなもんだ。


 続いて、エクセレンがランク確認をした。


「エクセレンさんおめでとう! ランクはCになりましたよ!」


「ほんとですか!? うれしいー!!」


 飛び上がって喜ぶエクセレン。

 ついこの間までGランクだったとは思えない成長ぶりだな!


「良かったな! もう一流の冒険者だ!」


「はい! マイティとジュウザのおかげですー!!」


 四回の冒険でCランクになるなんて、まさに前代未聞だろう。

 受付係は最後に首をひねっていた。


「それにしても……エクセレントファイターってなんなんでしょう……? 今までにそんなクラスの人、一度も見たことがないし、記録にもないのに」


 今頃そんなことを言っているのか。

 まあ、Gランクで登録したわけだし、気にしなかったんだろうな。


 さて、晴れて俺たちエクセレントマイティは、Bランクのパーティーになった。

 あと一回Bランクの依頼をこなせば、ジュウザがいるためにB+ランクになるんだそうだ。

 これは嬉しい。


「ジュウザさまさまだな!」


「何を言う。この冒険者ギルドの目が腐っているのだ。お主とエクセレンの二人が、AランクとCランク? ありえぬ」


「タンクはAランクが頂点らしくてな」


「ありえぬ!!」


 ジュウザがめちゃくちゃ怒ってる。

 俺たちのために怒ってくれるとは、いいやつだなあ。


「まあまあ、ジュウザさん! いつものお店でご飯食べましょう! 美味しいんですよ!」


 エクセレンの笑顔を見たら、ジュウザの機嫌も直ったようだ。


「そうだな……。拙者も大人気おとなげなかった。ここからは、実力で見返せばよいのだ」


「おう、そうだそうだ。飲もう! 食おう!」


 そういうことになったので、俺たちはわいわいと去ろうとしたのだ。


「待て、マイティ!!」


 聞き覚えのある声が俺を呼び止めた。


「その声……フェイクか? 懐かしいな!」


 少し前に別れたばかりだというのに、もう随分会ってなかったような気がする。

 振り返ると、そこにはフェイクと懐かしき元仲間たちの姿があった。


 だが、みんなどうも不機嫌だな。


「……どういうことだ。どうしてお前が、そこまでのランクに到達しているんだ」


「何を言っているんだ? 俺はAランクのままだが」


「そういう話をしてるんじゃない! お前、どうやって依頼を達成して行っている……!? 遺跡警備、商船護衛、公爵家……そのどれもが、誰も見たことがない強大なモンスターが現れたと聞いているぞ!」


「えっ、そうなのか……!?」


 俺は驚いた。

 ごく普通の依頼だとばかり思っていた。

 もしかして、ちょっと難易度が高い依頼ばかりだったのか?


「俺を苛つかせるためにわざとやっているのか!? お前! ガードしかできないタンクのお前が、どうやってそんな化け物に勝ったんだ!!」


「どうやってって、エクセレンに攻撃をしてもらったんだ」


「はい! マイティに守ってもらって、ボクが攻撃しました!」


 フェイクがエクセレンをじろりと睨む。


「明らかに大した強さじゃない……。むしろお前の横にいる、そのチビの方がヤバいだろ。さっきからローグが真っ青だぜ」


 シーフのローグが、確かに青い顔をしている。

 チビ呼ばわりされたジュウザが、ふん、と鼻を鳴らした。


「そうか、全部このチビにやってもらったんだな!?」


「馬鹿者め。拙者など、マイティがいなければ冒険者をやめておったわ。それはこのエクセレンも同じ。あの化け物は、エクセレンがいなければ倒せなかっただろう。そしてマイティがいなければ、リューダー公爵家はもうこの世に存在していなかったわ」


 ジュウザの言葉に、ざわつく冒険者ギルド。

 俺は周囲を見回した。


 うーむ。

 空気が良くない!

 こう言う時は、立ち去るのが一番だ。


「俺たちはお呼びじゃないみたいだから、いなくなるぜ! これから祝勝会と、ジュウザの歓迎会なんだ! じゃあな、みんな! 達者でな!」


「待て、マイティ! 待てーっ!!」


 フェイクの声を聞き流しつつ、俺たちは立ち去るのである。

 このままだと喧嘩になりそうだし、それじゃあ今のおめでたい気分に水を差してしまうからな。


「食って飲んで、楽しくやろうぜ!」


「はい! 今日はシチューにお肉を多めに入れちゃおうかな!」


「ふむ……こちらの料理はちょっとしつこいものが多いのだが……。あっさり味のものはあるだろうか……」


 俺の思考は、この後に飲むエールのことでいっぱいになるのであった。


パーティー名『エクセレントマイティ』

ランク:B

構成員:三名


名前:エクセレン

職業:エクセレントファイター

Lv:24

HP:248

MP:161

技 :魔技ミサイルスピン クイックドロー バックスタブ パイルバンカーブロウ

エンタングルブロウ

魔法:マジックミサイル(中級):派生ドリルマジックミサイル(中級) ヒール(下級) ライト(下級)

覚醒:シャイニング棍棒 シャイニング斬

武器:鋼のショートソード 鋼のトマホーク 鋼の棍棒(覚醒) ハルバード

 ガイストサーベル

防具:チェインメイルアーマー(上質)



名前:マイティ

職業:タンク

Lv:86

HP:1200

MP:0

技 :ガード強化(特級) カバーガード(特級) エリアガード(特級)

   マジックガード(特級) マインドガード(特級) パリィ(特級)

   ガードムーブ(特級) ヘイトコントロール(特級) マッチング(初級)

魔法:なし

覚醒:フェイタルガード

武器:なし

防具:熟練のプレートアーマー、熟練のビッグシールド



名前:ジュウザ・オーンガワラ

職業:ニンジャ(オーンガワラ流アークニンジャ)

Lv:83

HP:655

MP:520

技 :クリティカルヒット(特級) デックスアーマークラス(特級) ラビットムーブ(特級)

   シュリケンスロー(特級) ハイド&シーク(特級)

魔法:カトン(特級) スイトン(特級) ドトン(特級)

覚醒:クリティカルヒット(極)

武器:投擲用ダガー

防具:なし

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