第5話 依頼についての世の中の反応、そしてざまぁ
ゴブリン退治の報酬を受け取った。
どうやらこの仕事を完遂できたのは俺たち、エクセレントマイティだけだったらしい。
案外受注した冒険者が少なかったんだな。
「一仕事終えて、ご感想は?」
「なんっていうかですね。思ったよりもハードだったなーって。冒険者の皆さんって、あんな大変な仕事をやってるんですねえ。ボクも頑張らないと!」
ぐっと拳を握りしめるエクセレンなのだった。
「俺もな、かつての仲間たちと離れてみて、こんだけ仕事って大変なんだなあと思い知ったぜ。だが、今回はゴブリンだったからまだまだ楽だったな。お前さんも強くなっただろ」
「はい! ランクがですね、GからFに上がったんです!」
「やったなエクセレン!」
「はい! やりました!」
イエーイ、とハイタッチする俺たち。
冒険者パーティランクも、D+まで上がっている。
ただ、問題はパーティの人数が二人である限り、上限はBランクということだ。
コツコツやっていくしかあるまい。
だが、祝勝会くらいは開いてもいいだろう。
俺はエールを、エクセレンはミルクをジョッキで頼み、さらに骨付き肉などを焼いてもらって大いに盛り上がった。
「あいつら、Dランク程度の依頼をこなした程度で喜びやがってよ」
「ゴブリン退治だろ? だが、何組も依頼から戻ってこなかったらしいじゃねえか」
「最近の冒険者も質が下がったなあ」
最近の冒険者についての話か。
誰だって未熟なものだ。
そいつをどう育てるかが大切だろう。
最初から完成品を求めてどうする。
エクセレンなど、角うさぎに追い詰められるほど弱かったのが、今ではゴブリンシャーマンの頭を棍棒でかち割るほどに成長したのだ。
人は変わることができる!
彼女が言っている勇者とやらにも、遠からず辿り着けるだろう。
それがどんなものなのかはさっぱり分からないが。
そう言えば、完成された冒険者パーティであった、古巣のフェイクブレイバーズはどうしていることだろう。
きっと順風満帆だろうな。
「マイティ! このお肉凄いですよ! 筋に逆らって刃が入れられているので、簡単に噛み切れるんです!」
「ほんとか!! おほー! 美味いっ!!」
一方その頃。
フェイクブレイバーズは。
山岳地帯にて、巨人族が暴れ始めたという連絡を受け、巨人討伐を行っていた。
「オーガにトロル、ジャイアント……。あれだけ多種の巨人族が同時に行動しているとは……」
パーティリーダーのフェイクは、向かってくる巨人たちを見て唸った。
「種族も違う。当然、生活圏も異なり、性格も違う。そんな巨人族が同時に行動するのはおかしいぜ。だがっ!」
シーフのローグが駆け出す。
走りながらスキルによって姿を消し、どんな敵の背後も取ることができる。
それが彼の身につけた暗殺スキルだった。
「後ろががら空きだ!」
手近なオーガの後頭部にショートソードを走らせた。
その一撃は、今までに知るオーガであれば確実に死へと至らしめただろう。
しかし、ローグの手に伝わってきたのは、異様な感触だった。
「刃が通らねえ!?」
尋常ならざる分厚い皮膚で攻撃を凌いだオーガは、驚くほどの反応速度で振り返った。
「ウガアアアア!!」
吠えながら、手にした棍棒を振り回す。
「くっそ! こいつ!」
ローグは撤退する他ない。
「おいおいローグ、油断したんじゃないのか? そらっ、これでも喰らいな!!」
レンジャーのワイルドが、次々に矢を放つ。
連続射撃が巨人の群れに降り注いだ。
だが、矢が突き刺さろうとも、巨人たちの動きは鈍らない。
目ばかりを輝かせて、進撃してくるのみだ。
「止まらない……!? なんだ、あのタフネスは!」
「ああ、もう、みんな手を抜きすぎ! 速攻で仕留めるのがあたしらのやり方でしょ! そおら! かの地に起こせ、炎の嵐! フレイムバースト!!」
メイジのマジカが魔法を放った。
炎が巨大な螺旋を描いて巻き起こり、さしもの巨人たちもこれには怯む。
「今です! 神よ、裁きの雷槌を降らせ給え……ホーリーサンダー!!」
プリーストのプレイスが、空から雷を呼んだ。
降り注ぐ稲妻。
「では、俺が仕留めに行く!」
フェイクが駆け出した。
立て続けの魔法で浮足立った巨人たち。
それを、鍛え抜かれた剣の技で屠るためだ。
一撃がオーガの首を捉え、一瞬の抵抗の後、跳ね飛ばした。
「むっ、少々硬いな……。だが! こんなもの!」
トロルを、ジャイアントを、次々に切り刻んでいく。
「振り切ってしまえば大した問題はない! どうだ! 攻め続けていれば、守りなど必要ない! これが……フェイクブレイバーズの答えだあっ!!」
ストームスラッシュと言う、フェイクの剣技である。
巻き込まれた敵は、刃の嵐によってバラバラに切り裂かれる。
「これで……最後だ!!」
巨人たちの最後尾にいた、一際大きな影に、フェイクは斬りかかった。
フェイクは、あらゆる敵を、一刀で斬り伏せてきた剣士だ。
大陸最強であろうという自負もある。
だから、そこに驕りがあった。
様子が違う巨人たち。
攻撃されても、ひたすら前に進み続ける姿。
そこに疑問を感じることができなかったのである。
それは……追われていたのだ。
『ほう』
ストームスラッシュが、止まった。
「なっ……!?」
『魔王様が降臨なさる前に、先遣として来た甲斐が少しはあったか』
「なんだ……お前は……!」
フェイクが見上げる先に、その巨人の顔があった。
明るい黄土色の肌をして、八本の腕を生やしている。
『魔将、ティターンだ。以後、お見知りおきをな。この星の戦士よ』
ティターンと名乗った巨人は、歯を見せて笑った。
そして、無造作に腕を振りかぶる。
「しまっ」
次の瞬間、凄まじい勢いで放たれた拳がフェイクの胴を打った。
「ウグワーッ!?」
吹き飛ばされるフェイク。
『そら、そら、そらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそら!!』
浮かんだフェイクを追って、ティターンが大地を走る。
そして八本の腕が、嵐のような打撃を連続で放つ。
「ウグワー! ウグワー! ウグワー!?」
空中で何度も跳ね飛ばされ、ついにフェイクは意識を失った。
「ま、まずい! 神よ! あなたの御下に我らを導き給え!! ホーリーエスケープ!」
フェイクブレイバーズが、光りに包まれる。
彼らは奇跡の力で、戦場を離脱したのである。
これを見送りながら、ティターンはふん、と鼻を鳴らした。
『まだ武器も抜いていないというのにな。この星の戦士は、ひどく軟弱なようだ。どこかに俺の攻撃を受け止められる者がいないものかな。いるわけがないか! わっはっはっはっは!!』
笑うティターンを、巨人たちが恐ろしいものを見る目をして取り巻いている。
『魔王様! これであれば、御身が降臨される事を急ぐ必要もありますまい! あなたがいらっしゃる前に、このティターンが大陸まるごと平らげて見せましょうぞ!!』
天に向かって、ティターンが叫んだ。
「はっくしょん!!」
「わっ、お肉食べてる時にくしゃみしないでください、マイティ!」
「いや、なんかな。俺のニーズがあるような事を誰か呟いたのかな……」
「マイティならボクが必要としてるじゃないですか」
「わはは! そうだったな! 嬉しいこと言ってくれるぜ!」
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