第6話 全体的にモンスターが強くなった説と、勇者装備更新
いつまでも革の服ではいかんだろうと言うことで、エクセレンの装備を更新に行った。
依頼の報酬は大したことが無かったが、接収したゴブリンの装備が思いの外売れたのだ。
「革の服にも愛着があるんですけど」
「それでは万一俺がガードしきれなかった時に、お前さんの命が危ないからな」
「万一ってあるんですか?」
「無いけどな」
「やっぱり!」
エクセレンが笑う。
だが待って欲しい。
一応鎧はちゃんとしたものを着ておいた方がいいだろう。
ということで、革の服の上から肩当てと胸当てを装着することになった。
合わせて革の鎧というわけだ。
「あー、これなら動きにくくないかもです! あと、武器はですね、手斧と棍棒とナイフで行きます!」
「勇者ってイメージの装備じゃないな」
「一番強力なんで!」
「確かにな」
装備更新はあっという間に終わってしまった。
武器は敵から取り上げるわけで、経済的だ。
まだまだ未熟なエクセレンは、いい武器を無理して装備するよりは、使いやすい武器を何本か持っておく方が良かろう。
酒場で、今後について話し合うことにする。
「少し休んだし、次の依頼に行こう」
「はい! いつ魔王がやって来るか分かりませんしね!」
俺たちの話を横で聞いていたらしい冒険者が、「魔王だってよ」「何言ってるんだあのガキ」「御伽話じゃねえの」などと言っている。
別に、魔王が現れるのが本当かウソかなどはどうでもいいのだ。
それがエクセレンが頑張るモチベーションなのだから、バカにするものではない。
「エクセレン、ああいう人の心が分からん連中の話は気にするな」
「はい!」
「なんだとお前、今オレらのことを、人の心が無いとか言ったな?」
おっと、聞こえたようだ。
立ち上がる向こうのパーティ。
俺も立ち上がった。
「酒場の中は迷惑が掛かる。外でやろうじゃないか」
「うるせえ!」
殴りかかってくる冒険者。
酒が入っているな。
それで無礼なことを言ったり、すぐに襲いかかってきたりしたのだ。
「ふんっ!」
俺はこのパンチを受け止める。
「こいつ!!」
蹴りが来た。
「ふんっ!」
俺はこの蹴りも受け止める。
「てめえ!」
受け止める。「このっ!」受け止める。「当たらねえ!!」受け止める。「畜生!」受け止める。
ついに相手は、息が上がり、フラフラになってしまった。
「くそっ! まとめて畳んじまえ!」
一斉に襲いかかってくる冒険者たち。
「よーし、ちょっとだけ本気だ! ほい、ガード!」
両手と胸板と腹筋で、全員の攻撃を一度に受け止めた。
「げえ……」
「なんて奴だ……! 攻撃が通じねえ……!」
「あ、こ、こいつ! フェイクブレイバーズのタンクだった男だ! 攻撃を受け止める技では大陸一って奴だぞ!」
「マジか!? くそっ、相手が悪い!」
「覚えてやがれ!」
冒険者たちはわらわらと、店を出ていった。
「畜生、最近モンスターが強くて、まともに依頼がこなせねえってのに面白くねえ!」
彼らを見送りつつ、俺は肩をすくめた。
「なんだ、八つ当たりじゃないか」
「さすがですねーマイティ」
「めちゃくちゃ手加減したけどな。あいつら、酔っ払ってたから狙いも甘くなってただろ?」
「でも彼ら、Bランクパーティーですよ?」
「そうなの?」
そのランクのパーティが、まともに依頼をこなせないってどういうことなんだろうな?
「ボク、分かっちゃいました」
「どうしたんだエクセレン、凄く得意げな顔をして」
「あのですね。他のパーティを見回して思ったんですけど。マイティみたいなタンクがいないんですよね」
「そうなのか? 攻撃されたらどうするんだ」
「ええとですね、みんな、敵にやられるまえにやる、みたいな考え方をしてるみたいです」
「あー、フェイクブレイバーズと一緒だ」
冒険者ギルドの長い歴史の中で、危険なモンスターたちは大部分が退治されてしまっている。
それに、攻撃のためのスキルも魔法も、強力なものが開発されていた。
なんというか、冒険者たちが攻撃偏重になって来ている感があるな。
でも、それで今までやって来れたんだから問題ないんじゃないか?
「冒険者の人って凄いんですね……。この間のゴブリンとか、それよりももっと強いモンスターを、防御しないで倒しちゃうんでしょ? ボクにはとても無理です」
「うむ。この間は上手くはまったもんな。俺が受け止めてエクセレンが殴る。素晴らしいコンビネーションだった」
「はい! ボクたち数が少ないですから。あと、マイティのタンクの力におんぶに抱っこみたいな状態で、ちょうっと申し訳ないです」
「気にするな。それが俺の仕事だ。それに、お前さんは戦闘経験を積んで強くなれるだろ? よし、そろそろ次の依頼を受けるか!」
「はい! 今度はDランクの依頼で、遺跡の入口の守備っていうのがあってですね。たまにモンスターが逃げ出してくるので、これを退治するんだそうです。色々なモンスターと戦えそうじゃないですか?」
「いいな。これで行こう!」
次なる俺たちの仕事は決定するのだった。
パーティー名『エクセレントマイティ』
ランク:D+
構成員:二名
名前:エクセレン
職業:エクセレントファイター
Lv:6
HP:59
MP:35
技 :二刀流スピン クイックドロー バックスタブ
魔法:マジックミサイル(下級) ヒール(下級) ライト(下級)
覚醒:未
武器:鉄のナイフ 鉄のトマホーク トゲ付き棍棒
防具:革の鎧
名前:マイティ
職業:タンク
Lv:85
HP:1200
MP:0
技 :ガード強化(特級) カバーガード(特級) エリアガード(特級)
マジックガード(特級) マインドガード(特級) パリィ(特級)
ガードムーブ(特級) ヘイトコントロール(特級)
魔法:なし
覚醒:なし
武器:なし
防具:熟練のプレートアーマー、熟練のビッグシールド
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