第13話

「どうしたんだ、カトリー!」


「カトリーさん、どうしたんですか、それ!」


 エリオットとハワードが、医務室にやってきて、心配そうな顔つきで私の腕を見ていた。

 ちょうど治療も終わり、私の腕は、肘から指の先まで包帯でぐるぐる巻きになっていた。


「いやぁ、ちょっとマーシーさんに襲われそうになって、隠れる時にドジを踏んでしまいました」


「まあ、思ったより元気そうでよかったよ……。まったく、頭の次は、腕が包帯でぐるぐる巻きになるなんて。そのうち全身包帯でぐるぐる巻きになって、ミイラみたいになるんじゃないか?」


「なりませんよ。妙なフラグを建てないでください」


「しかし、利き腕を骨折というのは、痛手ですね。……いえ、洒落とかではなく、生活に支障をきたすので、大変そうだと言いたかったのです」


「そうなんですよねぇ。ご飯を食べるのも一苦労ですよ。ハワードさんが、あーんってしてくれたら、嬉しいのですけれど……」


「え……」


 ハワードは驚いている様子だった。

 しまった、いきなり攻めすぎたか?


「まあ、僕が変わりになってもいいけれどね」


「え、僕が君にあーんってするのかい? そんなの、何のメリットも意味もないじゃないか」


 いやいや、どうやったらそう勘違いするの?

 どう考えても、エリオットがハワードの代わりに、私にあーんってするっていう意味でしょう。

 あ、もしかして、照れているから、頑張って話を逸らそうとしているのかな?

 ということは、もう少しおせば、いけるのでは?


 というわけで、カトリー・ロンズデール、推して参る!


     *


 (※マーシー視点)


 絶対に医務室にいると思ったのに……。

 あの女、うまく逃げ切ったみたいね。

 でも、せいぜい喜んでいられるのも、今の内だけよ。

 ひ弱なくせに、意外と逃げ足だけは素早い女だわ。


 これまでも私の攻撃を、何度も躱してきている。

 このままでは、いつまで経っても彼女を傷つけることができない。

 恐怖で震えるほど傷つけないと、彼女はエリオット様とは別れないのに、すべて失敗してしまっている。


 こうなったら、やり方を変えるしかない。

 暴力に訴える今までのやり方では、カトリーを傷つけることができない。

 しかし、彼女を傷つける方法は、何も暴力だけではない。

 精神的に追い詰めればいいのだ。


 そして、やめてほしければエリオット様と別れろと脅せば完璧だ。

 さて、問題はその方法である。

 いったい、どうやって彼女を精神的に追い詰めよう。


 そうだ、まずは、大勢の前で陥れるという手があるか……。

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