第9話
「マーシーを医務室まで運ぶ? まさか、カトリー、日ごろの恨みを暴力で……」
「ち・が・い・ま・す。あれは彼女の自業自得です。私は手を出していません」
私はエリオットに言い返した。
「それでは、さっそくその教室へ行ってみましょうか」
ハワードの言葉に従って、私たちはマーシーが倒れている教室へ向かった。
途中で寄り道をしてから、教室に着いた。
「まだ倒れていますね」
さっそく、彼女を医務室まで運ぶことになった。
さっき寄り道をして借りてきた担架にマーシーを乗せて、エリオットとハワードが担架を持ち上げた。
「これは、なかなか……」
「ああ、辛い道のりになりそうだな……」
「二人とも男子なんだから頑張ってください。それでは行きましょう」
というわけで、医務室を目指して私たちは歩き始めた。
道中、何度か休憩しながらも順調に進んでいた。
「そういえば、なんでハワードさんは私のことを手伝ってくれるんですか?」
私は手持無沙汰で暇なので、ハワードに尋ねた。
「ああ、そういえば、まだカトリーさんには言っていませんでしたね。実は、僕には妹がいるのです」
「へえ、ハワードさんの妹さんですか。さぞかしお美しい人なんでしょうね」
「まあ、兄の僕から見ても、彼女はとても可愛いですよ」
あらら、実の妹にその評価。
もしかしてハワードさん、シスコンなのかな。
「ハワードは妹に甘いんだ。シスコンだから」
私の心を読んでいたかのように、エリオットが答えた。
私はそんなエリオットじっと見た。
「何か、言いたそうな目だな……」
「いえ、何も……」
もはや突っ込む気にすらなれない。
もしかして、自覚がないのだろうか。
「それで、話を戻すけれど、僕の妹は、マーシーに虐められたんだ。理不尽な理由によってね。それ以来、妹は学校へ行くのが辛そうだった。だから僕は、妹のためにもマーシーを何とかしたいんだ」
「なるほど、そういう理由があったのですね。確かに彼女は、お世辞にも性格がいいとは言えませんし、人の話も聞かずに自分の都合を押し付けてきますからね。被害に遭う方の気持ちなんて、これっぽちも考えていませんよ……」
彼女を何とかしないと、ハワードさんの妹も私も、楽しい学校生活が送れない。
「おっと、階段だ。ハワード、先に降りてくれ」
「え、僕が下になるのかい? 君が先に降りればいいじゃないか」
「いや、下側の方が圧倒的に重いから、ここは力があるハワードの方が下に……」
「なんでこういう時だけ力がないって言うんだ? 普段は自分の方が力があるって言っているのに」
二人がどうでもいいことで言い合いを始めた。
私は呆れて大きくため息をついた。
「あのぉ、横向きに降りたらよろしいんじゃないでしょうか?」
私の言葉で彼らは、その手があったか、という顔をした。
とにかくこれで、医務室へ向かうことができる。
そしてついに、私に悲劇が訪れる……。
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