第7話
毛皮の上に寝かされていた蓮はパチリと目を覚ました。
側で周りを警戒していたルーがに気付き、急に倒れて心配したと言われたが、蓮には全く覚えがない。
よくよく話を聞くと、ルーが巨大な蜘蛛を倒して振り向くと、地面な横たわって気絶していたそうだ。
安全を確保する為に竜の胴体部分へと蓮を運び、毛皮の上に寝かせて周りを警戒していたと言う。
続いて何があったのかと聞かれた蓮だか、蜘蛛が白い炎に包まれて息絶えた所までは覚えているが、その後のことは解らないと返答した。
「うーん……。全然思い出せないや……。でも、なんだか魔力がすごい増えたみたい。それに、ルーにもゆっくりだけど流れていってるね。」
「そのようですね……。何かあったのは確実なのでしょうが、取り敢えず悪いことは無さそうですね。」
蓮は自身の身に宿る魔力が増えたのを感じる。
タイミングから言ってあの蜘蛛を倒した影響だろう。
そして、ルーとの間に感じている繋がりを通り、ルーにも魔力が流れていっている。
ルー曰く特に害は無いようで、むしろ力が溢れてきて戦闘後に感じていた倦怠感も治ったらしい。
「あ!そう言えば、羽増えてたよね!?また無くなっちゃったの?」
「あぁ、それはですね——」
ルーの翼は魔力体であり、飛行における補助と共に魔力制御機関としての役割も持っている。
蓮から貰い受けた魔力を制御する為に一時的に増やしたが、魔力を使い切った今、翼を増やしたままにしておくのは現状のルーの魔力量では負担にしかならない様だ。
当然、今ある2枚の翼を消す事もできるが、魔法を扱うのが難しくなり、簡単な魔法しか使えなくなる。
現在蓮から徐々に流れ込む魔力は、一時的に貰い受けた魔力とは異なり、ルーの魔力と混ざり合い魔力容量自体が増えていっている。
このまま上昇を続ければ自身の魔力のみで先程の様な戦闘が可能となるだろう。
「——と言うわけでして、今は二翼が限界ですが、成長すれば増やせると思いますよ。」
「そうなんだ!じゃあ、あの蜘蛛みたいな強そうな奴をいっぱい倒さなきゃね!……でも、なんでルーが1人で倒したのに、僕の方がパワーアップしてるんだろう……?」
「そう…ですね…。私は蓮の能力によって生み出された存在です。つまり、蓮にとって武器の様な扱いになるのでは無いでしょうか?」
それを聞いた蓮は、「ルーは武器じゃ無いよ、家族だよ。」と悲しそうな表情で呟き、ルーの服にぎゅっとしがみついた。
「ふふっ。そうですね。私は蓮の家族です。」
優しい笑みでそう答え、しがみつく蓮の頭をそっと撫でた。
「さて、それでは目的の物を見にいきましょうか。」
「目的の物……?あっ!そう言えば、あの光ってたのを見に来たんだった!」
突如始まった蜘蛛との戦闘ですっかり忘れていたここに来た目的を思い出し、竜骨の頭頂部へと飛び上がった。
「うわぁ……。光ってたのってこれだよね?僕よりも大きいんじゃ無い?。」
「そうかもしれませんね。それにしても、なんだか神聖な気配を感じます。」
そこにあったのは、竜の額部分に突き刺さった白銀の刀身を持つ剣。
両刃の幅の広い刀身で、正確な長さは解らないが半分ほど突き刺さった状態でも蓮の胸あたりまでの高さがあり、かなりの大きさであろうと想像できる。
装飾のほとんどない無骨な大剣であるが、柄頭に付けられた透明の宝石が太陽の光を反射している。
蓮は柄を両手で掴み、グッと力を入れて抜こうとしてみるが、びくともしなかった。
「うぐぐぐぐっ……!だめだ!全然抜けない!」
「かなり深く刺さっているのでしょうか……。今は諦めるしか無さそうですね。」
蓮はその後も何度か引き抜こうと挑戦したが微動だにせず、結局ルーの説得により渋々と言った様子で諦めた。
竜骨の胴体内まで戻ってきた2人は今後のことについて考えることにした。
ここまで森の中を歩いていたが、人間の痕跡を見ることはなかった。
もしかしたら人の存在しない世界なのかとも思っていたが、竜の額に突き刺さる剣が、人間か、もしくはそれに近しい者が存在する可能性を示唆した。
「人里を探してみるのもいいのかもしれませんね……。どうなさいますか?」
「うーん……。聞きたい事もいっぱいあるし人に会って話してみたいんだけど、やっぱりあの剣かっこいいから欲しいなぁー……。」
「そう言えば、あの剣に蓮の能力は使えないのですか?」
その問い掛けに、蓮は首を横に振って答えた。
剣を引き抜こうと触れた時、蓮の能力である『
どういった制約なのかは解らないが、少なくとも今の実力では不可能である事は確かである。
なので、蓮としては人里を探すよりも、剣を抜く方法を探すか、自身の実力を上げて『配下創造』を使える様にしたいという想いの方が強い。
「でしたら、ひとまずここを拠点として人里を探しながら頑張って力を付けていきましょうか。」
2人は一先ずここを拠点として、森の中で生活する事にした。
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