第8話
蓮がこの森に飛ばされ、竜骨を拠点として生活を始めてから早一年の月日が流れた。
ルーの魔法により簡易的な小屋を作り、生活環境を整えながら周囲の探索も進めていった。
またルーから魔力の扱いを学んだり、木を削って作った木刀を振り回してみたりもした。
そんな生活の中でいくつか分かった事がある。
まず、森の中の生物—魔物と呼ぶことにした。—を倒しても少しではあるが魔力容量の上昇はある様だ。
蓮は経験値によるレベルアップと言っているが正しいかどうかは定かでは無い。
それに、
それに当然ではあるが、魔力が多くなったからといって、その全てを十全に扱えるわけではなかった。
この一年で様々な魔物を倒し、中には
そんな魔物達よりも膨大な魔力を持つ蓮は、その魔力の制御に最も力を入れて取り組んだ。
そして次にこの森についてである。
実はこの一年で森の中のほとんどを制覇していた。
数箇所の古びたテントや荷物が放置された場所は発見したのだが、生きた人間に会う事は一度も無かった。
『生きた』とわざわざつけたのには理由がある。
簡単な事だが死体は見つけていたのだ。
魔物に食い荒らされ、骨だけであることがほとんどであったが、近くに残されていた武器や防具から人であった事は確認できた。
では何故人に会えていないのか。
それはこの森の立地が原因であった。
森に隣接する環境は三つ。
まず一つ目が、常に霧が立ち込め毒々しい沼が点在する毒沼の森。
ここに存在する魔物はほぼ全てが麻痺や毒といった状態異常を伴う攻撃をしてくる為、現状探索が難しい。
二つ目が、灼熱の支配する火山地帯で時々噴火により溶岩が溢れ出すのが森の中から見て取れた。
ここはその暑さも脅威だが、凶暴な魔物が多くその強さもかなりのものだ。
ルーがいくら強いとはいえ、何日も探索を続けるのは体力的にも精神的にもかなり辛かった。
そして最後が海である。
森を抜けた2人の前には見渡す限り広がる青い海が広がっており、近くに島も見えず、また遠くで巨大な魔物が空を飛ぶ魔物を丸呑みにするのも見えた。
船があってもかなり危険な旅になる事は想像に難くない。
海に出る事は早々に諦め拠点へと戻ったのだった。
次は2人の能力について。
ルーはやはり魔法を扱うのが上手く、大抵の魔法を扱える様だ。
また、森の中で見つけた放置されたテントや荷物の中から拝借した魔導書などにより、更に磨きがかかっている。
魔力量も増え、今では四翼の状態がデフォルトになる程のパワーアップを遂げていた。
そして、蓮なのだが……
「はぁはぁはぁ……。やっぱりだめだ。攻撃魔法が使えない。」
ルーから手解きを受け、この一年必死に修行してきたが攻撃魔法を扱う事はできていない。
しかし、蓮にも行使できる魔法は存在する。
それが回復魔法と強化魔法であった。
初めて使ったのは毒沼の森を訪れた時。
ルーが巨大な百足型の魔物の攻撃から蓮を庇って毒を受けた時、必死に治れと祈りながら魔力を込めたら偶然発動したのだ。
その後色々と試してみた結果、回復魔法と味方を強化する強化魔法には驚く程の適正がある事が判明した。
剣術に至っては完全に我流であり、また蓮自身今まで運動をしてこなかったせいか身体能力も特筆すべきところはなく、魔物相手に使える様な代物では無い。
結果、蓮自身の戦闘能力は皆無に等しい状態なのだ。
とは言っても森で過ごす分にはあまり困る事は無くなった。
向かってくる魔物を片っ端から狩っていると恭順を示す魔物が出始め、今や森の中で襲ってくる魔物はほとんどいなくなったのだ。
森の主として認められたのだろう。
最近ではルーと離れ、仲良くなった魔物と共に果物を取りに行ったりする事も増えてきた。
そうして魔物と友誼を深めていると、『
それが『
契約には両者の合意が必要で、眷族となった者は蓮の命令に絶対服従となる。
現在、契約を結んだ眷族は3体いる。
最初に恭順を示し、ほぼ毎日森の果実を持ってきてくれていた、白い毛に覆われた巨大な猿型の魔物—『怒り狂う
火山地帯で出会い、ルーに負けて恭順を示した、黒い毛並みに3つの頭部を持つ犬型の魔物—『地獄の
森の中で怪我をしていたのを蓮が回復魔法で癒し契約を結んだ、額に宝石の様な3つ目の瞳をもつ青い鱗の蛇型の魔物—『宝石眼の
能力により絶対服従ではあるが、命令するのは何か嫌だという理由で自由にしろと言っている。
蓮が森に行く時は必ず一体は共に行動するようにはしているが、概ねそれぞれ好きなように過ごしているようだ。
やる事が無い時は『
この『眷族の
『
蓮はどうしても次の供物には竜骨の額に突き刺さるあの大剣を使いたいと思っているが未だ成功には至っていない。
蓮の感覚では魔力が足りて無いそうだ。
実はルーの創造時も魔力は足りていなかったのだが、蓮と深い繋がりを持つぬいぐるみを供物とする事で、不完全な状態ではあるが創造が成功したのである。
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