八、

「三度目の正直!」


 と言いながら咸峰さんが放ったシュートは無情にも外れる。


「やばい才能ないかも」


 ショックを受けいじける咸峰さんから落ちたボールは私の元に転がってくる。拾った私はじっとボールを見つめるとあることに気がつく。


「バスケットボールって意外と毛深いんですね。もっとツルツルかと思ってました」


「毛深い……皮でできているから劣化すると毛羽立ったりするんだよね。ここの体育館古いから、ボールもずっと買い換えてないんだろうね」


「へぇ~そうなんですね。はじめて知りました」


 咸峰さんの答えに感心しながら杖を自分に立て掛けボールを持って、シュートの真似をしてみる。


「もしかして市村さんってバスケの才能あるんじゃない?」


「え?」


 思ってもない言葉に思わず聞き返した私は、バスケットボールと咸峰さんを交互に見る。


「結構綺麗なフォームしてたから、そう思ったんだけど」


「う、う~ん。そんなこと考えたこともなかったけど」


「投げてみる?」


「私が?」


「うん」


 学校生活において体育の授業は基本見学か、教室でレポートを書いたりして過ごしているから自分がボールを投げるなんてことは考えたこともなかった。もちろん、休み時間にクラスメイトから誘われるなんてこともないからボール遊びなんてしたこともない。


 私はチラッと咸峰さんを見ると、純粋な目で見てくる。


「やってみます……」


 投げてみたい気持ちに後押しされ私は言葉を続ける。


「投げ方が分からないので教えてください」


 そう言うと「いいよ」と笑顔を見せる咸峰さんと、発言者の私はすぐに後悔することになる。

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