八、
「三度目の正直!」
と言いながら咸峰さんが放ったシュートは無情にも外れる。
「やばい才能ないかも」
ショックを受けいじける咸峰さんから落ちたボールは私の元に転がってくる。拾った私はじっとボールを見つめるとあることに気がつく。
「バスケットボールって意外と毛深いんですね。もっとツルツルかと思ってました」
「毛深い……皮でできているから劣化すると毛羽立ったりするんだよね。ここの体育館古いから、ボールもずっと買い換えてないんだろうね」
「へぇ~そうなんですね。はじめて知りました」
咸峰さんの答えに感心しながら杖を自分に立て掛けボールを持って、シュートの真似をしてみる。
「もしかして市村さんってバスケの才能あるんじゃない?」
「え?」
思ってもない言葉に思わず聞き返した私は、バスケットボールと咸峰さんを交互に見る。
「結構綺麗なフォームしてたから、そう思ったんだけど」
「う、う~ん。そんなこと考えたこともなかったけど」
「投げてみる?」
「私が?」
「うん」
学校生活において体育の授業は基本見学か、教室でレポートを書いたりして過ごしているから自分がボールを投げるなんてことは考えたこともなかった。もちろん、休み時間にクラスメイトから誘われるなんてこともないからボール遊びなんてしたこともない。
私はチラッと咸峰さんを見ると、純粋な目で見てくる。
「やってみます……」
投げてみたい気持ちに後押しされ私は言葉を続ける。
「投げ方が分からないので教えてください」
そう言うと「いいよ」と笑顔を見せる咸峰さんと、発言者の私はすぐに後悔することになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます