二、
「どうかした?」
「あ、べ、別に……」
どうもお母さんに言われてから、咸峰さんと接するときに意識してしまいぎこちなくなる。
初めて会ったときと逆になっているような気がする。
「でね、これなんだけど」
土手の階段に並んで座っている私にスマホの画面を見せてくる。咸峰さんが手を伸ばし私が覗き込むから必然的に体が近づいてしまい、少しドキドキしている自分がいることに気がつく。
「自転車に乗れる方法を探していたら、義足で自転車に乗っている動画が沢山あったんだけど。この動画とか参考になるかと思ったんだけど、どうかな?」
「う、うん。それなら私も見たことあるんですけど、そもそも生まれてから自転車に乗ったことがないから……その……」
言葉に詰まる私に咸峰さんは目を丸くするが、すぐに頭を下げて謝ってくる。
「ごめんっ! そうだよね、それを全然考えてなかった。本当にごめん! まずは乗れる感覚からだよね」
大きなため息をついて落ち込むけど、すぐに首を横に振って顔を上げると私に、目を向ける。
今まで私を真っ直ぐ見てくる人はお医者さんか看護師さんくらいしかいなかったので、咸峰さんの真っ直ぐな目にどう反応していいかわからずドギマギしてしまう。
それと人の言葉を待つこと。これが意外にも緊張することを実感してしまう。
今までどれだけコミニケーション取ってこなかったんだと思いつつも、そう意識してしまうのは相手が咸峰さんだからではないかとも思ってしまう。
「色々と自転車に乗れる方法を検索してて、これならいけるって一人で舞い上がっちゃった。やっぱり地道にいかないといけないね。ごめんね」
本当に申し訳なさそうに謝る咸峰さんの言葉に嫌味は感じられず、私も素直に答えてしまう。
「ううん、私が自転車に乗れるように色々考えてくれてたんですよね」
日頃笑わないから上手く笑えているか分からない、おそらく凄くぎこちない笑みを浮かべている私。
「今まで何かやろうとしても、最初っから否定されることが多いですから、こうやって長い時間かけて応援してくれたのは咸峰さんが初めてです。だからその、はい……嬉しいです」
もう一度ぎこちない笑みを浮かべる私。そんな私を見て咸峰さんの顔が赤い気がするのは、私の思い上がりなはずだと言い聞かせる。
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