二、
呆れた顔で僕を見る市村さんだが、自転車のスタンドを立て、僕から少し離れた場所に座る。
何を喋るわけでもなくしばらく二人でぼんやりと川の流れを眺める。
「普通……」
市村さんがボソッと声を発する。視線は川を見たままなので、僕も視線を川に戻す。
「普通は、なんでこの年で自転車の練習してるの? とか聞くものじゃないですか?あなたはなぜその疑問を飛ばして、私が自転車の練習することを手伝おうとしているんですか?」
「なぜ? え~、なぜかぁ~」
僕は腕を組必死で考える。市村さんの「なぜ」は僕が市村さんがなぜ練習しているのか詳しく理由を聞かないことであってるよね。
練習する理由?
「理由って、この前他の人が自転車に乗るのが楽しそうだからって聞いたけど。それとは違うの?」
「それは、きっかけです。私が聞いてるのは今、16歳の私が自転車の練習をなぜこの年でやっているのかということです」
んー、分かるような分からないような質問。つまりはなんで16歳になるまで自転車に乗っていなかったのに今更練習しているのか? ってことかな。
「別に、何歳から練習始めてもおかしくないと思うけど」
「なんですそのいくつになっても遅くない理論は。私から言わせてもらえれば、今やれることはできる限りやらないと後悔します!」
自分の意見を言っただけなのに怒られ少しムッとする。
そもそも怒られるようなことは言っていないはずだが。
どうにもこの子は怒りっぽい気がする。そもそも論点がずれていないか?
「じゃあ、市村さんはなんで自転車に乗る練習を今してるの? って聞いたら教えてくれる? そもそも、なんでそんなに怒ってるの?」
正直イラッとした僕だが、あくまでも紳士的に努めつつ態度に出さずに本心で尋ねる。
市村さんは目に戸惑いの色をほんのり宿しながらも否定する。
「怒ってないです。ただ……」
「ただ?」
僕は聞き返すが市村さんはそのまま黙ってしまう。市村さんが話してくれるのを待ちながら、先ほどの質問をもう一度考えてみる。
なぜ僕は市村さんが
でもその答えを言ったところで市村さんは納得しない気がする。
ふと市村さんの質問の続きを思い出される。
「──私が自転車の練習することを手伝おうとしているんですか?」
あ、こっちの方が答え見付けやすいかも。
……
……
……凄く単純で分かりやすい答えだけど、これ言っても大丈夫かな?
わりとあっさり答えにたどり着いた僕は、その答えを口に出していいものか悩みつつ、市村さんの横顔を見る。
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