自己紹介
一、
学校が終わるといつもなら部活へ行くのだが、今日は大事をとって休めと言われている。
あの練習試合が終わってから数日、普段の生活では全く問題ないのだが、激しく動くと足首がピリッと痛む。
一応病院へ行って足首のレントゲンを撮ってもらったのだが骨に以上はなく、捻挫だと診断された。
その事を顧問の先生に伝えたらしばらく休むように言われたので「見学します」と言ったら、「お前は来たら練習したがるからダメだ」と断られた。
顧問の先生はよく僕を理解しているようである。
いつまでもここにいても仕方ないので家に帰ろうと荷物をまとめて、人がまばらになった教室を後にする。
小学生の頃からバスケットボールをずっとやってきた僕にとって、練習をしないで帰るというのは、不安で体が疼いてしまう。
一秒毎に下手になっていく気がして落ち着かないのだ。決して才能があるわけでない、下手の横好きと言ってもいい僕にとっては練習しないことは一大事なわけである。
気晴らしに商店街やコンビニなんかで買い食いを、なんてことも考えたが気が乗らず、なんとなく川の方へ足を向けてしまう。
あの女の子が自転車の練習をしているか、気になったからというそれだけの理由。
完全な興味本位であり、あの子が異性として気になっているとか他意はない。
女の子の少し汗ばんだ首筋を思い出しながら「それは違う」と自分に言い聞かせ歩みを進める。
炎天下のなか、僅かに冷気を含んだ風が頬をくすぐり始めると川が見え、例の河川敷が眼下に広がる。
そこには誰もおらず、なんとなく残念な気持ちになるのは、どこかで会えるかもと期待していたのかもしれない。
「誰かお探しですか?」
突然背中から声を掛けられた僕は、ただただ情けない声で
「うわっ!?」
と叫ぶのだった。
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